第五話 光の魔女と私
緑川の親子達と別れを告げた歩美は、もしかしたらとまた橋の付近へと来ていた。
魚の大量死に男性一人の全身壊死。何もない訳がなく、警察とメディアでごった返していた。
夫婦の全身壊死の事件の絡みもあって捜査線上に歩美が上がり、すぐに黄色いテープ内へと警察に誘導される。
そこまでは何とも思わず流れに沿って誘導に従ったが、現場を指揮している人間を見て目を見開いてしまう。
全体的に服装が黄色く装飾も光り輝いてて、帽子と髪飾りに黄色い四葉のクローバーの髪飾りをしている、腰元にポーチやら試験管やらをぶら下げている。頭には黄色く明るい色合いの魔女の帽子をかぶっている人だった。
「あ、来た! 貴方を読んだのはわたし『ドロテア シャイン』です。よろしくね!」
「よろしくお願いします。それで、自分には何の用で……」
とりあえず知らないフリ。仮に言っても信じてもらえないだろうけど、とも思ったが。
ごちゃごちゃ考えている内にパイプ椅子が二つ用意され、丁寧な事に支給品ではあるが紙コップに水まで入れてくれた。
「あのね有栖川さん。貴方を疑ってるわけじゃないんだけど、」
偶然だろうか。どこかの旅をしている探偵と同じ事を言われたような感覚を覚える。
「もし良かったら、知ってる事話してくれるかな」
あの時別れ間際に言われた事は「信頼と不信が交錯するのだ」だ。
珈琲を手に持ってたりと、どことなく緑川の探偵と同じ雰囲気を思う。
「私は、何も知りません」
「嘘かな。だって君の目怯えてるもん」
警察だとしてそんな判断の仕方でいいのか。いや、もしかしたら経験から歩美自身の嘘を感づいてるのかもしれない。再び色々考えはじめる。
それにコスプレかどうかも判断はつかないが魔女。超常現象に詳しい可能性もあった。
だとしたら。
「警察が多くて怖いんです。ほら、物々しい事もありましたし……」
ちょっと可愛げを見せる為にも人差し指を頬に擦らせながら視線を明らかなまでに別の方向へ。
「なるほどね、ありがとう。もう帰っていいよ」
「はい、また何かあったらよろしくお願いします」
ドロテアの部下であろう警官に誘導され、テープの外へと出た。