第三話 私の事件と捜査
「それ、事件なんですか?」
本人からしたら事件だろう、という案件だった。
確かにどこの女子高校生とも知らない人を、殺人事件に巻き込みなんてもっての他だが。
「期待してしまったかな? まあ、というわけでよろしく頼むよ。自分の連絡先と六の連絡先、書いてるからね」
ノコノコと探し物の続きをする親子達を見送り、溜息をつく。
「後で断り入れようかな。……猫捜し」
と、言いつつも時折入れられる目星をメールで送られるのを見て、真面目に探してるんだなと思い、断りづらくなる。
特徴は三毛猫で、それだけじゃ判別しづらいという事で写真も送られてきた。額に茶色のハートマークがある。
まずはよく猫のたまり場となっている、公園の茂みを覗く。
色とりどりの猫はいても、流石に額がハートの個体はいない。
諦めて次の目星をつけられたポイントへ。どこかも分からない廃墟のビルで、誰が所有してるかは分からないが、全開放してるので若者や不良が時折肝試しで使われる場所でもある。
真昼間、その廃墟ビルに大きなピンクのリボンをつけた、小さな女の子も来ていた。
「あ! おねえさんもねこ! さがしてくれてるの?」
「うん。どこかの知らない探偵さんに頼まれてね」
笑顔になると、少女は両手で歩美の手を握ってくれた。察するにこの子が事件? の依頼主だと考える。
「こっちによく猫がいるんだよ!」
手を引っ張って案内してくれる。猫のフードや煮干しなどが置かれてるが、今日は一匹もいないようだ。
「いないね」
「私は他の場所捜してみるから、君はあんまり動き回るんじゃないよ」
「分かった!」
そう言って別れを告げ、廃墟ビルを出る。
六から貰った飴玉を舐め舌で転がしつつ、あの橋を渡った少しの距離であった。
誰も見向きはしないが止まるには少々不自然な位置で柄の悪そうなお兄さんが、地べたの方を見ている。
「よりによってオレの車で引かれやがって、猫さんよお」
唾を吐き散らす。
最悪のパターンがを考えてしまう。あの依頼された猫が車に弾かれたのではないのか、と。
目を凝らして地べたの方に視線を向ける。
間違い無かった。あの額にハートマークのある猫が、ピクリとも動かない状態でうずくまっている。
怒りと悲しみが大きく膨れ上がり、何も考えず手を差し伸べようとする。
「あん?」
視線に気づいたお兄さんが見た頃には、指先から腐敗が始まっていた。
少ししてようやく体の違和感に気づいた、がもう手遅れ。両方の二の腕まで腐りきっていて、あっちこっちに転げまわるも、猫のように動かなくなってしまった。