第二話 緑川親子と私
駅前の広場で、歩美はメロンソーダのジュースを吸っていた。
ちゃんと親に言われた通りにゴミはゴミ箱へ。今日寝泊りする場所を探しに、駅前を離れようと思い立った瞬間であった。
銀髪のロングヘアの、歩美の一個下の子が突然抱きついてきた。
突然の事に言葉が出ず、刹那と言わず30秒でも45秒でもそこで時が静止する。
「あの、君? どうして私に抱きついてきたのかな」
「えへへー。お姉さん可愛いから抱きついたー」
嬉しいのが半分、訳が分からなかった。
銀髪の子の胸が案外大きく、柔らかくてこのままでいたいとさえ思ってしまう。
遅れて来たのは深い緑色の髪をした、髭が特徴的な英国にでもいても違和感の無い風貌のした、初老ぐらいの男性であった。
「自分の娘がすまないね。この子、思った事はすぐやっちゃうから」
と言って、深々とお辞儀をする。
「いえいえ、そんな丁寧にしなくても。顔を上げてください」
しばらくして顔を上げる。バッグから名刺を取り出して、歩美に渡す。
「この子は緑川六。自分は今フリーで探偵をしてて、この国の各地を回っている」
大変だなあと思いながら、名刺を自分のバッグにしまう。
「私は有栖川歩美です。今はその、同じく旅をしてると言うか……お恥ずかしい話」
六に可愛さを覚えて、頭を撫でる。嬉しそうに歩美の体に顔を擦らせる。
「そう、ですか。覚えておこう。戸惑ってすぐこの子を距離と置きたがる人も多いのだが、慣れてくれて良かった」
そういや六ちゃんには能力が発動してない。もしかしたら、悪意でネクロズ魔法が発動するのだろうかと一瞬思ったが、それだと両親に発動した理由が分からない。
今、この子の前で考えるのはやめよう。そう考え頭を何度も軽くさする。
「ああ、会ったばかりで悪い。今自分らは、警察に依頼されてとある捜査を受けている。良ければ協力してくれないか」
「ええ、いいですよ」
「やったー! お姉ちゃんよろしくね!」
六が歩美から離れる。お礼のつもりなのか、飴玉を握らせてくれた。