第二十一話 ネクロズ魔法の謎
魔女の村の大通り、土と草花が混じった地べたの上を箒にまたがって通るドロテア。
風を切るように、また風を起こして寺院のある方へ直線で飛んで大きな大きな門をくぐって寺院の建物前へ。これは村の暗黙のルールであり寺院へ踏み入る際は飛んでいても門から出入りしなければならない。くぐらない者は侵入者か事情が知らない存在と分かるように、そうしている。主に、そうなってしまったのは風音のせいだが。
そろそろドロテアが来る頃だろうと、細身で丸眼鏡をしたおばちゃんの魔女、村の長が寺院建物の入り口前で待ち侘びていて、着くなり硬い握手を交わし軽く談笑やお土産話をしながら寺院の中へ。最も奥の部屋、長の間には怪しげな壺や宝石が沢山あり、部屋の真ん中にある接客用のガラスのテーブルと、ふかふかの長いソファーが2つ、それぞれにドロテアと長が座る。すぐ後に修行中の若い女の子の魔女が紅茶をドロテアに出した。
ハンドサインでお礼をしてから、本題に入る。
歩美の言ってた通り、ネクロズ魔法(仮称)について尋ねる。最初は対象を意図的に壊死させる魔法だと思われていたが、ドロテアが観察と調査を重ねてきたところ、そもそもが本人の意思で発動している物ではなく殆どが暴発した物であり、更には歩美は明るくて元気な印象だったと、知人や親戚は口を揃えて言う。歩美の両親が全身壊死状態で発見される数ヶ月前から急に大人しくなったと証言が幾つかある。最初は時期的なものかと皆考えていたが、ドロテアはネクロズ魔法によって何かしら侵食されていると長に伝えた。
「……聞いた事ない魔法じゃな。だが、一つだけ気になる事がある」
「なんですか?」
「既に知っているとは思うがー、この世界の魔法に関しては我々が管理している。しかし、異世界から魔力やら超能力やら流れ込んで来てるじゃろ。と、推測する。じゃなければ、我々の内部に裏切り者がいるか、じゃ」
「異世界の魔法に関しては、わたしの職場である程度の監視はしている。が、異世界ホールのエネルギー反応でもなければ、歩美は異世界の人間でもない。謎です」
「うーむむむ」
「とりあえず彼女が魔法と呼んでいるので仮でネクロズ魔法と名付けておきますが、ここでも分からないですか。ありがとうございました」
「久々に会って力になれなくてすまんの」
「いえいえ! また帰ってきます。忙しいのでこれで、失礼します」
「お気をつけて」
「はい!」
長の間を出てから箒にまたがって飛んで寺院の外へ、また門を通って敷地を出てから村の外へ。適当な木陰を見つけてスマートフォンを使って風音に電話を入れる。




