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第二十話 魔女の村へ帰郷

「かなり、状態が悪いね」


 話を切り出したのは、切った大きいトマトを頬張りながら次のトマトに箸を出す、風音だった。

 視線の先には野菜を持った皿に顔を突っ込んで、すやすや寝息を立てて眠っている歩美の姿。


「ドロテア、ありがと……すー」

「えっ」


 意外な寝言にドロては赤面しながらも、冷静を装ってコップについだ水を飲み干す。

 首を左右にブルブル振ってはもう一度スマートフォンを出して調べ物を始めた。


「こほん。とにかく状態が悪いのは確かだ。だがどこで診てもらえばいいんだ」

「この時代、魔法も超能力も分からないんだから病院じゃ無理でしょ」

「だよなー」


 まるで頭痛が痛いという二重表現が似合うような表情で、額に手を当てた。

 見かねた風音が仕方なく提案をする。


「魔女の村とかどうかな。歩美ちゃん本人が『ネクロズ魔法』と言ってるわけだし。ね」

「確かに。いきなり連れてってこいつが暴走しても困るし、明日に私が事情説明しに行く」

「うちは村のお尋ね者だからパス!」

「同感だ。だけど様子見るのは頼むよ」


 風音は頷いて承諾。やる気が徐々に戻ってきたのか、二人の食事ペースも若干速くなってきた。



————



 翌日の正午手前の時間帯、空模様は曇っていてどんよりした湿り気が森林の道をより暗くする。

 久しぶりに警官の制服ではなく魔女らしい帽子とグローブ、それらしい衣装に杖を持って数年ぶりに帰郷する様子だ。

 予め村長の魔女には事情を説明しているが、直接会った方が話が潤滑に進むだろうという判断で、ドロテア自ら出向くと本人が提案したもの。

 内心、緊張とやや清々しい気持ちで箒に腰掛けて自転車漕ぐより少し速く移動している。

 大都市からそれほどかからない山奥に、魔女の村に入れる門があった。見張りの男性魔導士二人が常に警備している様子だ。


「「お帰りなさいませドロテアさん! 久しぶりです!!!」

「おう! 土産話でもしたいが、時間がないので今度な」

「はい! どうぞお通りしてください。では」

「ああ」


 ここからは徒歩で、村長のいる寺院に向かう事とした。

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