第十九話 私の霞む視界
最初「私のネクロズ魔法」を掲載したのは2018年頃でした。そこから約5年ぶりの新規更新となります。よろしくお願いします。
自分でもシナリオの記憶の欠落が多く、恥ずかしい気持ちを抑えながら読み返しましたが、こういう感じで小説を作っていたなと、懐かしい気持ちにもなった。
紆余曲折してイラスト描きがメインになってしまいましたが、小説も好きなので作っていきたいです。
いずれは未完の小説をほぼ全て完結させたいです。
大きな都市、第3区域の中のとある一つのマンションにドロテアは住んでいる。
本日も第3区域は秋晴れの晴天、やや涼しげな風が頬を撫でるようだが、また紫外線が肌を刺してくる。
歩美はドロテアと一緒に暮らす事になったが、お互いやや不慣れでぎこちない会話が続いている。 その硬い空気感に割って入る風音は、勝手にくつろいでちゃぶ台に突っ伏して午前中の居眠りをする。一応、風音がヴィランサイドでドロテアが警察官で、度々激突を繰り返した宿敵の仲のはずなのだが、最近はやたら平和だ。
それをチラチラ視線を向けながら渋々3人分の昼食を作るドロテアは、片手間にスマートフォンで調べ物をしていた。眼鏡の種類についてである。
「歩美、最近は目の調子悪いんだろ? 私の眼鏡かけて見えないなんて相当だ」
「うん。あの、眼科行こう」
「もちろんだ。どっかの大怪盗のせいで作るの時間かかっているが、もうちょっと待ってな」
「うん」
本日は手軽に夏バテ対策に生姜入りのそうめんと、ポン酢で和えた生野菜の数々がメニュー。野菜を切る音がやや空腹の歩美の食欲を立てた。
もうすぐ完成しそうなのを見て、風音の背中を軽く撫でる。今はネクロズ魔法の様子が落ち着いているので、誰かを触っても暴発する雰囲気ではない。
「んー……まだお昼じゃない」
見かねたドロテアが途中で料理の手を止め、風音の背中を思いっきり叩く。お母さんか。
「痛いなあ! 睡眠と食事の恨みは怖いんだよ〜」
「うるせえ勝手に上がり込んで! とにかく、食べたら用事あるし自分の別荘帰りな」
「そのつもり」
「全く。はぁ」
何度か疲れ気味で首を左右に振って、ちゃぶ台に作った料理を持ったお皿、箸などを並べる。
それぞれ思い通りに好きな食べ物から取る。
「いただきます」「いただくよ!」
「はーいちゃんと噛んで食べろよ」
やや盲目気味で箸を上手く使えない歩美を見た風音は、口に野菜を運んであげた。
うっすらと朦朧してきた意識の中、亡くなったお母さんの事を思い出した。子供の頃はこんな感じで食べさせてもらったな、と。
そんな懐かしい思い出を考えていたら、今度は歩美が食べながらやすからな笑顔で眠ってしまう。




