第十八話 私の光り輝く希望
注:ここまでが2018年頃製作となります。続きは2023年頃の更新再開分をお楽しみください。
しっかりドロテアは身だしなみを整え、朝早く緑川探偵事務所を訪ねる。
インターホンを押す。建物内でドタドタと中を走り回るような物音がした後、扉が壊れそうな勢いで玄関は開かれた。
六と同じ白い髪をしていて女性であるにも関わらずTシャツ一枚とパンツのみという、まるで休日をだらけていたような風貌であった。
「どいつもこいつもデカイな……」
小声でささやいた。視線は出てきた女性の顔よりもやや下の方に向く。何を見ているとは言わない。
「あの、何か言いまして?」
「何でもない。有栖川歩美という女子高校生の子を捜してて、ここにいると聞いた」
手を合わせて晴れやかな笑顔になって再び走って建物内へ。
何やら喧嘩したような喋り声が聞こえて、半ば強引に歩美は玄関へ引っ張り出された。
歩美の髪はボサボサでしばらく手入れしていないのかツヤが無い。
「なんだよ。物好きな奴」
面倒臭そうにアメリカンドッグを頬張る。
「何でって友人が死ぬって聞いたのに黙っていられるかよ!」
「友人になったつもりはない。関係があったとしても『おもちゃ』だよ」
何でもいい! と言い返しドロテアも強引に事務所内へ押し入る。
座れ! と指示を出しTシャツの女性と歩美をリビング兼応接室のテーブル付近にある椅子に座らせた。
「朝からうるせぇ……」
「わたくし、こういうお方大好きですの! あ、自己紹介が遅れました。自分は『ツクモ』と申します。以後お見知りおきを」
立ち上がって深々とお辞儀をした。
「これは丁寧に。わたしはドロテア シャインと言います」
名刺を渡す。警察で働いているという事を知り更に瞳を輝かせた。
バタバタとまた辺りを駆け回り急いで歩美の分とドロテアの分、珈琲を用意する。
「丁度紅茶切らしてまして、勝手にここの主人の珈琲を使ってますがお許しくださいませ!」
一点ツッコみたい所はあるが珈琲を出された二人何も言わない。そもそも恰好を直さない時点で色々言いたい事はあるが。
ツクモは立ったまま手を前に置く。
テーブルに肘をついてだらしなく珈琲に砂糖を入れる歩美は「さっさと帰ってくれ」と追い返そうとする。
「お前が死ぬのをやめない限り帰らない。何かわたし達と共存出来る方法はあるはずだ」
かき混ぜるのをやめて半分開いたような目でドロテアを見た。
「あのなぁ。……言っても無駄か、分かったよ。死ぬのをやめる」
立ち上がって両手をテーブルに思いっきり叩きつけ珈琲がこぼれる。
「本当か!」
ぐるりとテーブルを回って歩美に抱きつく。頬を摺り寄せる。
抱きつかれた本人は苦笑いをしていたが、内心ほんのちょっぴり嬉しかった。




