第十七話 珈琲片手に探偵も来る
欠けた月の昇る夜、警視庁の屋上にドロテアは一人風に髪を揺らす。
部下達は最近現れた化け物達の対策や市民の誘導する方法の策に追われ忙しく、ドロテア自身もそれに追われているが、今は休憩中である。
「……まだ仕事残ってるけど、今日は帰ろうかな」
頭の中は歩美の事でいっぱい。それでも探す暇も無く胸の中がもやもやで渦巻く。
自分のデスクに戻って荷物をまとめる。上司に携帯でメールだけ入れて部下達に挨拶をして警視庁の建物を出た。
よく歩美が居座っていたあの橋を通りかかる。もしかしたらと思って河川敷に繋がる階段をおりて橋の下を覗く。
「あ」
思わず何とも言えない声を出す。
いたのは歩美ではなくたまたま居合わせた六の父親で、珈琲入った水筒片手に顔を合わせる。
「どうして貴方がここに?」
「何となく」
流石に嘘をついている事ぐらい分かった。
でも追求する勇気も湧かず「そうです、か」と流してしまう。
一つ考えた事は六の父親も歩美の事を気にしていて、いるのではないかと思って同じ行動をしたのではないか、という予測だった。
「風音君から聞いたが、こないだ彼女の元を訪ねたそうだね。何をしたかは聞いてないが、宿敵に協力を仰ぐのはどうなのだろうか?」
「うっ、でも。どうしても会いたい人が」
珈琲を一口。妙に今日の香りは濃い気がした。
「分かってるさ。自分も君も同じ事を考えてここに来たのだろう。……自分だって腐っても探偵、どこに歩美君がいるかぐらい目星はついている」
「本当か!」
食いつくように姿勢を前に乗り出す。力を込めすぎて薄く光の魔法を放つ。
「風音君と違って自分はドロテア君の味方でもある。居場所を教えよう」
「ありがとう!」
歩美の居場所は六の父親が住んでいる場所『緑川探偵事務所』と告げられた。