第十三話 何気ない今日
神は滅んだ。
歩美は魔女の村の英雄となり長老の指示でドロテアに、歩美を罪から解放しろと言う。
ドロテアは不満に思いつつも恐怖心で解放しないと自分が危ないと感じた。今日は魔女の村に居座ると考え、歩美と風音はすぐにいつもの都市へととんぼ返りする。
翌日の昼間。雲一つ無い空で小鳥がさえずっている。
歩美は初めて緑川探偵事務所を訪ねる。六の実家でもある建物だ。
すぐに玄関を潜り抜けリビング兼接客室の椅子に座る。
「お姉ちゃんだー!」
六は歩美を見つけるなりすぐに駆けつけて抱きつく。抱きつかれた本人も嬉しそうに頭を撫でた。
遅れてカップに入れた珈琲を揺らしてゆっくりと六の父親も来る。
「風音君から連絡は来た。詳しい事は言わないが神を滅ぼしたとか言ってたな」
「ええ、まあそうですね。六ちゃんまで滅ぶって思ったら許せなくて」
風音が六の父親に耳打ち。目を瞑って頷くと珈琲を一口すすった。
「そうだ六。買い物行ってくれないか? 珈琲を丁度切らしてしまってな」
「分かったー! 歩美お姉ちゃんもいこー?」
「いいよ。行こう」
軽く準備を済ませて探偵事務所を出た。六の提案で手を繋いで買い物へ行く事に。
最初に忘れないようにインスタント珈琲を買って、すぐさま洋服店へ。
今の時期少し暑くなってきたので薄手の物を多く置いていて、六が歩美の髪の色に合わせたピンク色のフリル付きシャツにふりふりのついた何段にも重なっている短いスカートをチョイス。
頭の髪飾りに統一されたピンク色の見た事も無いような花の飾り。白いニーハイと白いラインが入ったピンク色のシューズ。
あまりにも少女っぽい恰好に、戸惑いを隠せず頬を染めた。
六にお洒落な恰好を推されまくって買ってしまった。が、後悔は無い。
会計を済ませて洋服店を出てから数分の事、帰りの道中で相変わらず目の光を失ったドロテアが薄手のワンピースを着て、レモンジュースの入ったペットボトルを持って誰かを待っていた。
「あー! ドロテアさんだー!」
なりふり構わずドロテアにも抱きつく。歩美はちょっとしっとしたのか頬を膨らませた。
「お、六か。元気だな! ……お前も一緒かよ」
「お前も一緒だね。ドロテアさんは何でここに?」
「彼氏待ってるんだよ。いつも時間守るのに今日は遅くて」
興味なさそうに適当に「へー」と返す。ドロテアの携帯にメールが入る。
「仕事入っちまったのか。つまんねぇな、帰るか」
「やだー! ドロテアお姉さんも一緒に遊ぼー?」
仕方ないなと言わんばかりに何一つ言葉を発しなかった。




