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第十二話 魔女はそれを死神と言う

 昔の話。神と魔女が争った。

 怒り狂った神は世界を滅ぼそうとした。

 勇敢に立ち向かった一人の魔女は、世界を救った。

 神は違う世界へ飛ばされ消息を絶たれ、この世界ではいつしか能力を持つ者は少なくなった、と言う。

 その脅威は神々しい姿である事から『神』と名付けられた。


「この話によると憎しみみたいだが?」

 ドロテアが不思議そうな表情をしながら絵本の結末を眺める。

「……それもあったな。まあ、今はどうでもいいのだ」

 唇を震わせてる辺り明らかに強がっている。風音が言うに「トラウマを掘り起こされて嫌なんだね」と、笑顔で神の傷をえぐった。

「あの時の魔女は時を操れた。時の魔女と呼ばれてたそうだな。だが、今は寿命が尽きていないだろう。俺を葬れる魔女などいない!」

 力強く拳を握りしめ歯を噛み締める。浮遊している鏡の尖った先端をドロテアの方へ向ける。指を差して一歩左足を大地に叩きつけた。

「お前は時の魔女を彷彿とさせて憎い。この世界を潰す前にお前を木端微塵にする!」

 嘘だろ、とドロテアが小声で漏らす。光の魔法を使えない彼女には恐怖でしかなかった。

 鏡の一つがドロテアに向かって突進を始める。最初はわざと外し頬だけをかすらせた。

 頬から流れ落ちる赤い液体。神は低空浮遊でドロテアに急接近して、その赤い液体を舐め取った。

 悪魔のような笑みを浮かべながら左手を首の位置に持っていき、徐々に締め上げる。

「やめて! 何だかんだでいい人なんだから!」

 風音が叫ぶ。褒めてるのか貶してるのか分からないが、少なくとも心配はしている様子だ。

「歩美ちゃんも助けないの? このままじゃ世界滅んじゃうよ!」

「別に滅んでもいい、かな。こんなどうしようもない私に救いなんて無いし、いっそ自分ごと滅ぼして欲しい」

 神がさらに手首に力を込める。牙むき出しで「という事だァ!」と声を荒げた。

「六ちゃんも滅んじゃう!」

「それはやだ」

 左腕を上げて人差し指を神に向けた。そのまま手を広げて動きが止まる。

 神は自分の手に力が入らなくなっている事に気づいた。二の腕から腐敗が始まっていた。

 肘まで壊死が進んだ所でようやく自身の体が腐り始めてる事に気づく。

 その頃には背中と首の部分まで広がっていた。とっくに筋肉はしぼみ切って浮遊していた鏡も地に落ちる。ひらひらの薄い布も風でどこかへ飛ぶ。

「やめろ! 今すぐこの壊死を止めてくれ! ああ、どうしていつも!」

 ドロテアは傷の負った頬を抑えながら距離を置き、風音の隣へ。

 完全に全身が腐り果て神だった肉体は形すら保つ事は無かった。

「歩美、お前は立派な死神だよ……」

 とドロテアが怯えた目で歩美の背中を見ていた。

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