第十一話 異世界からの刺客、世界の危機
ドロテアの失った光を求めて歩美と風音は一緒に「魔女の村」へと来た。
魔女の村と名付けられる通り魔法以外が発達しておわず、建築物も加工のしていない木と紐でくくりつけられた藁をかぶせている程度だった。
歩美は内心「こんな場所この国にあったんだ」と思いながら、観光客気分で視線をあちこにに向ける。
誰も外には出ていない。もう廃れたのか? いや違う、風音を恐れて人々は必死に身を隠している。何故ならば怪盗である事を知っているからだ。
彼女に関しては「隠れる」という行為に意味は無いが。
村の奥地、丘になっている場所に大きな寺院のような建物がある。
丁寧な事に石で階段が作られているのでそれを使ってのぼる。
普段運動してこなかった歩美はすぐに息を切らし、頂上に来た頃には疲れ果てていた。
ドロテアが風音の方を向いて睨む。腰に手を当てる。
「お前、村に何かしたのか?」
「うん。色々盗んじゃった!」
その発言を聞いて額に手を当てて首を横に振る。
「ああそうか。今更咎める気は無い。……長老様ー、ドロテア シャインが帰ってきましたよーっと」
どたどた、と走ってくる音が聞こえる。大きな寺院の扉が豪快に開かれるとドロテアに長老とやらの老婆が詰め寄った。
「大変なのじゃ! 別の世界から来た。とんでもない悪意を持った人間が!」
3人何を言われているのか分からずぼーっとする。
寺院で修行している魔女達がのこのこと出てきて「ドロテア様だ!」「もう世界は安泰ね!」など勝手な妄想を能力の失った魔女に投げつけた。
ドロテアに駆け寄る修行僧のような魔女達を、吹き飛ばすように天空から一人落ちてきて着地した。
頭は普通の茶髪の男性なのだが問題はここから。全体的に相当な筋肉を持っていて膨張しすぎて各所むき出しに、頭上にはひし形の鏡が四つ浮遊していて眩しい光を放つ。
体の周りにはひらひらとした薄い繊維みたいな細長い布が浮いている。力強さと神々しさを合わせたようなデザインだった。
「俺はこの世界を消しに来た。俺の力を示す為に、な」
一人称を言う時だけ俺とワタクシが重なって聞こえる。二つの意思を持っているようにさえ感じる。
「お前は、聞いた事がある。この村の昔話では有名だ」
ドロテアがバッグから一つの童話の絵本を取り出した。




