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第十話 失った光

 六の父親が帰った後の歩美と風音の二人で、今後の予定を話していた。

 どういう悪になるのかとか、六ちゃんは受け入れてくれるのかなど。ともかく一番の課題は歩美が有名なお尋ね者になってしまった事だ。

 ドロテアが発言を撤回してくれない限り、捜査も止まらないだろうし世間の目も悪いまま。

 風音が棒つきの飴を口に咥えた所で、丁度噂していたドロテアが来た。

 のだが、変わり果てた姿をしていて目の光を失い髪は黒くくすんでいる。敢えて例えるならば光を失った魔女という感じか。

「どうしたの? ドロテアさん。ターゲットは目の前にいるでしょ」

「……分からない。光の魔法は出ないし髪は薄く黒くなるし、まるで光を求めて彷徨う幽霊みたいだわ」

 声に力が無かった。風邪を引いてもここまで弱くはならない。

 お光様と風音が呟く。ドロテアの通り名であり実際魔法を見た人達からそう呼ばれている。

 どっちかと言うと今は真っ黒様だが。

 仮に腹を殴られても痛くないんじゃないかと思うぐらい、弱り果ててると歩美は思った。

 斜めに俯いたままゆっくりと歩美を差す。

「お前のせいだ。お前がわたしの光の魔法を腐らせたんだ。返せ」

「残念ながら、生命を奪う能力を持っていても命を生み出す力はありません」

 再び腕を下す。

「そう、か。悪かったな。歩美君を狙った自分の自業自得、というやつだ。わたしの能力チカラにうぬぼれていただけ、だった」

 体の向きを変えてとぼとぼと帰ろうとした矢先、歩美が止める。

「待ってください。その、謝る気はないですけどチカラを取り戻す方法、一緒に探してもいいですよ」

 大きく息を吸って大きくため息を吐く。視線だけを歩美の方に向ける。

「何を言う。わたしは敵でお前にとっても敵だ。そんな事して何になる」

「分かりません。何となく、という所かな」

 口元を抑えて笑う風音。指の間から棒つき飴の棒が見える。

「昨日の敵は今日の友って言うし、ドロテアさんとしても悪い提案じゃないでしょ!」

「……ああ、分かった。心外だが犯罪者に協力をしてもらうとしよう」

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