暗ー1/こんにちは、ラティナだよっ~!
「――お疲れまでした~。一〇時になっちゃいましたからラティナはこれにて退勤しちゃいますね~」
ラティナの勤務時間は厳しく決められているの。二四時間営業の組合だから、何時でも都合の良い時間に働けるのがいいところなのですけれど、ラティナにはしっかりと時間が決まっている理由があるのです。
組合の建物を抜け、住宅街へと足を向けていきます。しかし、実はラティナのおうちはこちらの方向にはないのです。では、なぜラティナがここにいるのでしょうか。
正解は、これから更にお仕事があるからなのです!
そう、ラティナはこの街一番の働き者を自負しているの。たっくさん働いて荒稼ぎしてやる! なんて野望を抱いているのを知っているのはそう多くないのです。
「ふくろう」
青い扉の変哲もないおうちの前までくると、そうつぶやきます。すると、扉には魔術陣が浮かび上がり、ラティナの体から「色」を奪っていきます。
これは身を隠すための魔術をかけているのです。そう隠密行動をする上で欠かせない不可視の存在となったラティナは、扉に背を向けてまた街の中へと踏み込んでいくのです。このおうちは姿を隠す以外にラティナの用事はありません。
普段は組合の仕事であったとしても、絶対に踏み入れることのない闇の領域。
ラティナはそこへと向かっているのです。
では、またまた問題です。
なぜラティナはそんな『闇』へと向かっているのでしょうか――ちくたく、ちくたく、正解は、ラティナが『闇』に生きる暗部の一人だからなのです。
「月も笑っているし~、ラティナも笑う~、すると世界はもっと楽しくなっちゃうね~」
鼻歌もついついこぼれてしまいます。
今日は待ちに待った待望の一日だったのです。
暗部のお得意様――大総督さまからの依頼をようやく果たすことができたかと思うと、ラティナは幸せな気持ちになっちゃうの~本当に今日のラティナはおりこうさんだなって誉められちゃうかもしれないな。
貧民街の人間でも踏み込むのを躊躇うような荒れ狂う風が噴く道を歩く。
ラティナの姿は誰にも見えていないので、そこらへんのゴロツキに襲われるなんて悲劇は怒らないのです。そもそもラティナがただのゴロツキ程度に負ける訳もありませんかけど!
廃屋にしか見えない建物がラティナの目的地なので~す。うんう~ん、ラティナ的にはこのカモフラージュはナンセンスだなって思うんですけど、ラティナ以外の子たちは結構気に入っているんですよね。
ラティナ的にはもっと派手派手がいいと思うのだけれど~
廃屋の中へ入っていくと、面識のある三人が思い思いに座っているのです。ラティナの好きな席には先客がいます。姿を表すために三人から最も見えやすいバルコニーに移動していると、お腹の辺りに風がやってきて、
「帰ってきたらただいまって一言ぐらい言ったらどうなのぉ?」
陰湿な言葉。
ラティナの大っ嫌いなそいつの口からはラティナからしたら有り得ないじめじめしたかび臭い空気が漂ってきます。ラティナは暗いのが嫌いなので~そいつのことは~本当に嫌いなのです~。まあきっと、そいつは明るくてもラティナは嫌いでしょうけどね。うんうん。
「それで、お尋ねしたいんだけど~、なんでラティナのお腹に剣を刺そうとしているのかちら?」




