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第6回 覆面お題小説  作者: 読メオフ会 小説班
3/26

狂女屋敷への侵入

JOJO氏のエラリーシリーズの設定を勝手に使用しています。

ご容赦ください。


↓特にこちらの作品の設定を使っております。

『九女王戦争』

https://ncode.syosetu.com/n1345ga/10/


設定を拝借していますが、作品としては独立しています。


--------------------------------------------

主要人物

九院偉理衣:くいんえらりぃ。エラリーと呼ばれている。文学サロンには子供のときから通っている。大学生。


愛内利理衣:あいうちりりぃ。リリーと呼ばれている。エラリーのことを「お姉さま」と呼び愛しすぎている。高校生。


J会長:文学サロンの管理人。エラリーが子供の頃から青年であり、今でも青年である。


AさんBさんCさんDさん:文学サロンメンバー


「お姉さま! ここにいたんですね!」

 リリーが息を切らしながらやってくる。

「リリー! 良かった。他には誰か会った?」

 エラリーがリリーに問う。

「いえ、わたしは最初からもう逃げるのに精一杯で。でもJ会長らしき人をさっき一瞬だけ見たような気がしました」

「J会長はまだ生きているのね! ……AさんとBさんとCさんとDさんの死亡は確認したわ」

 エラリーは声を震わせて言う。

「わたしとお姉さまとJ会長以外はもう全員死んでしまったんですね……お姉さま、本当に会えて良かったです~」

 リリーは泣きながらエラリーに抱きつく。

「よしよしリリー」

 エラリーはリリーの頭をナデナデしている。

「エラリー! リリー!」

 二人だけの世界に入っていると、J会長の声が聞こえ、慌ててエラリーはリリーを離した。リリーはふてくされた顔をする。

「J会長! ご無事だったんですね。AさんとBさんとCさんとDさんはもう死んでいます。残りは我々だけです」

「そうか。狂女は見かけたか?」


 狂女。

 そう、エラリー、リリー、J会長たちは今、狂女から逃げているのである。

 ここは【狂女屋敷】と呼ばれている広大な屋敷である。

 どこまでも和室と廊下が広がっており、とても迷いやすい。

 狂女は髪の長い女で腰が曲がっており、歩くスピードは遅い。だが、気づいたらすぐそばにいる。狂女に捕まると目を押し潰されて殺される。

 狂女の正体はわからない。だが狂女という怪異はここに確実に存在し、これまで狂女屋敷に入ってきた人間を多数殺してきたことだけは事実である。

 今回、J会長率いる文学サロンのメンバーで狂女屋敷に入った。そしてAさん、Bさん、Cさん、Dさんは死亡し、残るはエラリー、リリー、J会長の三人となった。


「狂女屋敷に入った直後、わたしは狂女と遭遇しました。そしてそのまま逃げ出してずっと走り回って、さっきようやくお姉さまに会ったんです!」

 リリーは恐ろしい狂女と遭遇したことを思い出し泣きそうになる。


 狂女屋敷にはルールがある。

――狂女屋敷に侵入する者は全員が違う入り口から入らないといけない。ルールを破るとどうなるかはわからない。


「屋敷に入った直後にリリーの叫び声が聞こえたけど、狂女と出会ったからだったのね。わたしも一度だけ狂女に背後に立たれました。音もなくいきなり気配を感じて、反射的に攻撃をしてしまいそうになりましたが、ルールを思い出し、わたしも逃げました」


 狂女屋敷のルール

――狂女に危害を加えてはいけない。ルールを破るとどうなるかはわからない。


「僕はAさんが狂女に襲われているのを見た。目を潰されて悲惨な死に方だったよ……」

 文学サロンの仲間であるAさんが殺される様子を見たJ会長はショックを受けたようである。

「そして、Bさんの死体も発見した。しかし、Bさんは目を潰されていなかった」

 J会長はエラリーとリリーを厳しい目つきで見る。

「Bさんは血だらけとなって死んでいた。詳しく調べたわけじゃないけど、Bさんは多分刺殺された」

「つまり、それって――」

 リリーが驚いた表情をする。

「Bさんは狂女ではなく、我々文学サロンメンバーによって殺されたってことですね」

 エラリーがよどみなく答える。

「正直、僕はそう疑っている。エラリー、君はさっきBさんの死体も発見したと言ったね。その時に違和感はなかったのか?」

 J会長はエラリーを疑うように見る。

「今思うと確かにBさんの死体は血だらけだったと思います。ちょうど狂女に襲われそうになったので気が動転してしっかりと認識はしていませんでした」

 エラリーは申し訳無さそうに答える。

「お姉さまを疑っているんですか!? お姉さまがそんなことするはずがありません!」

 リリーはJ会長に抗議する。

「狂女屋敷に入ったのは我々七人だけだ。それ以外の人物は絶対にいない。そして生き残っているのは、僕、エラリー、リリーだけ。そして僕はやっていないと僕自身がわかっている。もうエラリーかリリーを疑うしかないんだ」

 J会長は少し距離を取り、いつでも格闘できる体勢でいる。

「それでは武器を持っているかどうか身体検査でもしますか?」

 リリーも自分はやっていないぞと言わんばかりに言う。

「待ってリリー。もしかしたらAさんかCさんかDさんがやった可能性もあるわ。Bさんを殺したあとに狂女に襲われたのかも」

 エラリーが他の可能性を述べる。

「確かにそれはありそうだね。さすがエラリー。それでは遺体の捜査をしに行こうか」

 三人はAさんCさんDさんの遺体を探しに行った。

 だがどこまでも和室と廊下が続く狂女屋敷は場所がとにかくわかりにくい。

 そして狂女が音もなく現れるかもしれない恐怖もある。

「お姉さま怖いですー! あそこの和室の日本人形、今動きませんでしたか?」

 リリーは怯えながらエラリーに抱きついて歩いている。

「この日本人形の部屋、見覚えがあります。このあたりにCさんとDさんの遺体はあるはずです」

 エラリーがそう言うと

「そうか。それじゃあこの辺を重点的に捜査だ」

 J会長はメガネをクイっとあげて言う。

「いたぞ」

 J会長が指さした方にCさんの遺体が転がっている。

「ひぃ~! 完全に目を潰されていますね」

 リリーが悲鳴をあげる。

 J会長がCさんの遺体を調べると

「シロだ。Cさんは違う」

「ここにCさんがいるとするとDさんはこっちです」

 エラリーが廊下を数回曲がった先の和室にDさんがいた

「……Dさんもシロだ。ちなみにAさんの遺体はすでに調べている。そしてAさんも何も持っていない」

 J会長はエラリーとリリーを見ると

「次は我々の番だ」

 と厳しい顔で言った。

「待ってください。犯人はBさんを刺してすぐに武器を捨てた可能性もあります」

 エラリーが反論する。

「確かに。だがまだ持っている可能性もある。調べても損はないだろ?」

 J会長がそう言って、身体検査が始まった。

 リリーがエラリーの身体を検査する。――このような状況であるのに、下卑た顔をしながら。

「お姉さまは何も持っていません!」

 リリーが胸を張って言う。

「じゃあエラリー、リリーを調べてくれ」

「無駄ですよ。何も持っていませんから」

 リリーは鼻高々に言う。

 エラリーがリリーの身体を調べると

「あっ」

 リリーのポケットからナイフが発見された。

「嘘。わたしやってません」

 リリーは心の底から驚いた表情をしている。

「君だったか、リリー。――【探偵】の能力を発揮する。【犯人はリリー】だ」


 狂女屋敷のルール

――狂女屋敷への侵入者は一名【探偵】に任命される。探偵は【犯人】を指摘することができる。犯人を当てることができると探偵の勝利である。【犯人】も侵入者の一名が任命される。犯人は武器を所持しており侵入者を殺害することができる。探偵は犯人の指摘を間違えると狂女に襲われる。


「あ、あ、J会長、うしろ」

 リリーがガクガクと震えてJ会長の後ろを見る。

 J会長の背後には、髪が長くて腰の曲がった狂女が立っていた。

「う、うわー!」

 J会長は狂女に襲われ、目を潰されて死亡した。

 エラリーとリリーはその場から全力で逃げ出した。

「リリー大丈夫?」

 エラリーはリリーの様子を伺う。

「はぁ、はぁ、大丈夫です。お姉さま、わたし本当にやっていませんよ」

 リリーはエラリーのことを懇願するように見る。

「わかってるわ。リリーはそんなことするはずない」

 エラリーにわかってもらい、リリーは安心する。

「それにしても、さっきのJ会長、探偵の能力がなんとか言ってましたけど、何なんでしょうね?」

 リリーは首をかしげる。

「【犯人】を必死に探しているから、J会長が【探偵】だと思っていたけど、思った通り間違えてくれてよかった」

 エラリーは笑っている。

「お姉さま、どういう意味です? 探偵とか、犯人とか、意味がわかりませんよ?」

 リリーは大好きなお姉さまが言っていることが理解できずにいる。

「【犯人】はわたしだったのリリー。最初リリーと会ったとき、リリーがわたしに抱きついて頭をナデナデしてあげたでしょ? あの時にナイフをリリーのポケットに入れておいたのよ」

 リリーはもう泣き出してしまっている。

「リリー、ナイフを返して?」

 思考停止に陥ったリリーはナイフをエラリーに返してしまった。

「これで【犯人】の勝利!」

 エラリーはリリーにナイフを突き刺した。


 狂女屋敷のルール

――狂女屋敷への侵入者は一名【犯人】に任命される。犯人にはナイフが装備品として与えられる。犯人は侵入者を二名殺害しなければならない。また犯人の天敵として、侵入者の一名が【探偵】に任命される。侵入者二名の殺害の失敗、または探偵に犯人として指摘されると、狂女に襲われる。


 狂女屋敷のルール

――狂女屋敷への侵入者は一名【探偵】に任命される。狂女屋敷への侵入者は一名【犯人】に任命される。それ以外の侵入者はただの侵入者である。ただの侵入者は【探偵】と【犯人】がいることを知らない。


 狂女屋敷のルール

――現実へ帰還したら、【探偵】と【犯人】が存在することをネタバレしてはいけない。ネタバレしようとした者は現実で狂女に襲われる。


 パンパカパーン♪

 VRゲーム【狂女屋敷への侵入】は【犯人】である、九院偉理衣さんが勝利条件を達成し、九院偉理衣さんの勝利となります! おめでとうございます!


 エラリーがVRゴーグルを外すと、いつもの文学サロンの光景が広がっていた。

「もうー! お姉さまひどいです! わたしを刺すなんて!」

 隣でVRゴーグルを外したリリーが怒っている。

「しょうがないじゃない。二名の殺害、それがわたしの勝利条件だったんだから」

「だったらJ会長を刺せばよかったじゃないですか!」

 探偵に誤推理をさせ、最後にリリーを残して、絶望を味あわせて、その時の顔を見たかったなんて言ったらリリーはもっと怒るだろう。

「まぁまぁ、ゲームなんだから」

 J会長もVRゴーグルを外し、一息つく。

 AさんとBさんとCさんとDさんも同じく、現実へと帰還し感想を述べ合っている。

「探偵とか犯人とかそんな設定あったのも知らないですし、欠陥ゲームですよ、これ」

 リリーは大好きなお姉さまに殺された上、裏ルールがあったことを知らなかったのでご立腹のようだ。

「裏ルールについては僕も全く知らなかった。ゲームにログインしたら、いきなり【探偵】に任命されてしまって自分が探偵であることを知った」

 見事に誤推理で狂女に襲われたJ会長が言う。

「わたしも【犯人】に任命されて驚きました。でも任命されたからには絶対に犯人で勝利しようと思いました。最後に表示されたルールで、ネタバレしようとしたら現実で狂女に襲われるってありましたから、プレイした人は黙っているのかもしれませんね。……またはネタバレしようとして本当に狂女に襲われてネタバレする前に殺されたか」

 【狂女屋敷への侵入】はあくまでもゲームだ。しかしゲームといえど狂女の恐ろしい姿を見たり、ましては殺されたプレイヤーは口外などしたくないだろう。

 

 VRゲーム【狂女屋敷への侵入】は今、ネットで話題になっているゲームだ。

 個人が制作したゲームで詳細はわからない。ひたすら和室と廊下が広がっている日本屋敷が舞台で、狂女に襲われる。どうすればゲームクリアなのか未だに不明というのがプレイヤーたちの関心を引いている。また【狂女屋敷への侵入】は一プレイヤー、一回しかプレイすることができない。

 リリーがどうしてもやりたいと言い出し、文学サロンメンバーでプレイすることになった。言い出しっぺのリリーは屋敷の雰囲気や狂女の恐ろしさにすっかりしょげてしまったようだが。

 しかし実際にプレイしてみて【探偵】と【犯人】という役割があることがわかり、今回エラリーが【犯人】として勝利条件を満たした。


 ピロッピロ~♪

 エラリーのVRゴーグルから音が鳴り、エラリーが装着すると

 

 ゲーム画面

――九院偉理衣さんが【犯人】として勝利しましたので、次のステージの【狂女屋敷の惨劇】をプレイすることができます!

 

「次のステージ【狂女屋敷の惨劇】をプレイできると出ています!」

 エラリーがそう言うと、文学サロンメンバーたちに驚きの声が上がった。

「なるほど。きっと【探偵】か【犯人】で勝利すると次へ進めるみたいだ。【探偵】で勝利した場合と【犯人】で勝利した場合、同じステージに行けるのか、違うステージに行けるのか気になるところだけど」

 J会長が分析をする。

「惨劇ってもう怖いこと確実じゃないですか~! わたしはやりたくありませんよ!」

 リリーは完全に怖がってしまっているようである。


 ゲーム画面

――【狂女屋敷の惨劇】は【犯人】であった九院偉理衣さんの参加は必須です。また【探偵】であったJ会長さんも任意で参加できます。ただの侵入者は参加資格はありません。


「参加できるのはわたしだけみたいです。……探偵であったJ会長も任意で参加できるみたいですけど」

「……僕も参加資格あるのか。どうしようかな」

 狂女に襲われ目を潰され殺された恐怖からJ会長は迷っている。


 ゲーム画面

――【狂女屋敷の惨劇】は六月中までプレイできます。【狂女屋敷への侵入】の続編である【狂女屋敷の惨劇】が存在することをネタバレしようとした場合、狂女に襲われます。


「六月中までプレイできるとあるのでまた今度にします。……続編があることをネタバレしようとしたら狂女に襲われるとあるので皆さん注意してください」

 エラリーはVRゴーグルを外し、物思いにふける。


 狂女。

 そう、狂女という存在はエラリーにとって心当たりがある(JOJO氏作『九女王戦争』より)。

 

 『九女王戦争』のあらすじ

――はるか昔、九人の女王が戦っていた。女王たちは使役と呼ばれる存在を使い、女王が一人になるまで戦いを繰り広げていた。最後に残った二人、一番目の女王【ファースト】は狂女という使役を使い、九番目の女王【ナイン】は魔法という使役を使っていた。ナインは戦いに破れ世界を漂っていると、九院家に拾われた。このナインがエラリーの先祖とされている。

 エラリーはこのおとぎ話を子供のころよく祖母に聞かされていた。


 そして九女王戦争に勝利したファーストが使っていた使役が狂女であり、VRゲーム【狂女屋敷への侵入】に登場する狂女はまさに、九女王戦争で描写されている狂女とそっくりなのである。


「【狂女屋敷の惨劇】をプレイする前に一度、祖母の家に行ってネタバレしない範囲で聞いてみたいと思います。祖母ならもしかするとこのゲームについて知っているかもしれません」

 エラリーは神妙な顔つきで言う。

「エラリーのおばあちゃんって言うと、九院家当主の九院芽愛理衣(めありぃ)さんだよね? あらゆる武道・格闘技の世界チャンピオンを制覇している」

 J会長が言った通り、九院芽愛理衣はその道ではとても有名な人物である。

「お姉さまのお祖母さまってそんなすごい方なんですね! わたしもご挨拶してみたいです~!」

 リリーはキャッキャとはしゃいでいる。

「リリーとJ会長には一度、九院家本邸へご案内してみたかったので、三人で行ってみましょうか」

 残念ながら、AさんとBさんとCさんとDさんは誘われなかったようだ。


 果たしてこのVRゲームの正体は何なのか。

 【狂女屋敷への侵入】に登場する狂女は、あの九女王戦争の狂女なのか。


 謎を解明するために歴代九院家でも【最強】と謳われる、九院家当主・九院芽愛理衣の元へ!

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