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第6回 覆面お題小説  作者: 読メオフ会 小説班
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朋来堂から届いた暗号・マスターの謎解き編

「さて――」


マスターの謎解きも、最初はこのひとことから始まる。

2人ともがかつて夢中になった、とある名探偵の鉄則だ。


「暗号を解くには、この『2022年6月』と『2021年10月』が何を示すかが分かればいいよね。実は、そのヒントは今朝出ていたんだよ」

「……今朝?」

「そう。今朝開店する前、作業用としてYouTubeを流してたよね。それは何だった?」

「えーっと……。あっ、この前公開された『ともらじ』を流していました」

「そう。灯里ちゃんがウォンテッド本に投稿した、って話をしたよね」

「はい。でもそれがどうしたんですか?」

「あれは『2022年6月』分のともらじだよね。一度荷物を持ってあげるから、スマホで確認してみな」

「あっ、はい。じゃあお願いします」

灯里は持っていた荷物をマスターに渡し、スマホを操作する。

「確かに6月ですね。でも、それが関係あるんですか?」

「もちろん。注目すべきは、そのともらじの()()だよ」

「回数、ですか?今月のともらじは『第22回』ですね」

「じゃあ、もう1つ。『2021年10月』のともらじは第何回かな?」

「……えっと、『第14回』でした」

「そうだね。これを暗号に当てはめると、第22回、第14回、第22回。ということは?」

「ということは?」

「……オウム返しじゃなくて、ちょっとは考えてみてよ」

マスターに言われ、灯里は考え込む。

「22、14、22……。マスター、何かヒントをくださいよー」

「じゃあ、大ヒント。この前の差し入れの暗号を思い出してみて」

「差し入れの、暗号……。あっ、もしかして」

灯里がスマホで何かを入力し始めた。

「これでよし、っと……って、ええっ!?」

灯里はあまりの驚きに、思わず素っ頓狂な声をあげた。

「真相にたどり着いたようだね」

「読メのユーザーID『221422』を調べたんですけど、これって()()()()()()……()()()()のことじゃないですか!」

「その通り。前の暗号もこの暗号も、作ったのは僕だったんだ」

「……じゃあ、この前の暗号は、答えを知ってて私に解かせたんですか?」

「そういうことになるね」

「マスター、ひどーい」

口ぶりこそ不満げな灯里だが、その表情は明るかった。

「ごめんごめん。でも、朋来堂のイベントに初めて参加するわけだし、その前から楽しんでもらえたら嬉しいかなって思って、会長のJOJOさんに頼んで送ってもらったんだ」

「確かに、謎を解くのは楽しかったです。最近あまりミステリーを読んでいなかったので、久しぶりに読みたくなってきました」

「そうだね。せっかくなら、今日の読書会でみんなのおすすめのミステリーを聞けばいいんじゃない?」

「はい、そうします!」

「よし。あ、そろそろ荷物は持ってね。早く朋来堂に行かなきゃ」

「私を騙したんですから、罰として朋来堂まで私の荷物も持ってくださいよ。……嘘です、持ちます」

マスターの表情が少し険しくなったのを見て、慌てて付け足す灯里だった。



























「マスター、もう1つだけ聞いてもいいですか?」

「ん?」

「2つ目の暗号、『暗号の作者は誰か?』だけでいいはずなのに、最後に『この作品の作者は誰か?』って書いてありましたよね。『この作品』ってどういうことですか?」

「……ああ、そこに気づいちゃったか」

「えっ?」

「どこかのパラレルワールドだと、僕はブックカフェのマスターではなく、会社員として働いているらしい」

「パラレルワールド?……マスター、急にどうしちゃったんですか」

「その世界だと、今日朋来堂で開催されるのは『酒宴&読書会』ではなく、『覆面お題小説の作者当て』なるイベントみたいなんだ」

「覆面、お題小説?作者?……どういうことですか?」

「覆面お題小説は、あるお題に沿って各自が作者名を隠して小説を書く。今日のイベントは、どの作品の作者が誰なのかの正解発表をする場らしい」

「はぁ。で、それがどう関係してくるんですか」

「どこかの世界の僕は、ブックカフェのマスターをしているこの世界の僕のことを小説に書いた。だからあの暗号は、この世界の私が作った暗号であると同時に、どこかの世界の僕が小説の中で書いた暗号でもあるんだ。その結果として、『この作品の作者』というフレーズがあの暗号に入ってしまった、ということらしい」

「……急にSFっぽくなりましたね。よく分からなくなってきました」

「うん。僕も言っていて意味が分からなくなってきたよ。まあ、世の中には解けない謎の方がいっぱいだからね」

「……そういうことにしておきます。でも、その覆面お題小説っていうのは面白そうですね。作者を当てるって、謎解きみたい」

「僕もそれは思ったよ。どこかの世界の僕が書けるなら、この世界の僕でも書けそうな気がしてきたよ」

「私も機会があったら書いてみようかなって思いました」

「いいね。灯里ちゃんの書いた小説も読んでみたいな」




どこかに存在するかもしれない、パラレルワールド。

その世界にいる自分も、もしかしたら。

こんなきっかけで、覆面お題小説を書いているかもしれない。



《Fin.》


覆面お題小説の「作者当て」の部分自体をミステリーの謎に組み込めたら面白いな、という発想から生まれた物語です。

今月のともらじが第22回だということと、自分の読書メーターIDに「22」が含まれていることに気づき、「まさしく6月のミステリーだ!」ということで、作者当ての暗号を作りました。


「ともらじ」の伏線作りのために、灯里ちゃんにともくるネーム「あかり」でともらじへ投稿してもらいました。

1つ目の差し入れの暗号は、「読メのユーザーID」の伏線のために作りました。朋来堂の主要メンバー、かつ今回の覆面お題小説に参加していない人の名前を使って上手い暗号を作ろうとしたのですが、なかなか苦戦しました…

最後のパラレルワールドのくだりはこじつけです。あまり気にしないでください(笑)


文章からも当てられる要素はいくつかあったと思いますが、暗号を解いて作者を当てたという方はいたでしょうか?


舞台となったブックカフェは、元々覆面小説で使おうと思って温めていたものです。本当はもっと入れたい物語やフレーズがあったのですが、それはまたの機会に。

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