表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しろくまハイボール!  作者: 水菜月
3/9

3 しろくま事務所


 ここは、疲れたしろくまさんたち(おじさん世代)の溜り場、しろくまBar『ヒヤシンス』です。


 ヒヤシンスから100メートル離れた先に、そのおじさんたちが勤める「しろくま事務所」があります。

 そこでどんな仕事をしているのかと言いますと、ありとあらゆる北極のことを一手に引き受けているよろず事務所なのです。


 税務手続き(北極には北極税があるのですよ、もちろん魚や貝で払ってもいいんですけどね。)からインフラ整備まで。


 引っ越してきたら生活課で住民登録ができます。ここで「1からわかる北極暮らし」という冊子を配っています。


 教育課では、学校のカリキュラムから図書館の本の選定まで。狩りに出かける時にはお子さんのお預かりもできます。学習に困ったしろくまっ子には家庭教師の派遣もあり、子育て支援が充実しています。


 また、交通課では犬ぞりの管理もしています。犬さんたちのローテーションを組んで、不平不満が出ないようにシフト表を作っているんですね。


 環境課では、お家のデザインもできるらしいですよ。エスキモーさんの住む氷のドームのような家が人気だそうです。


 ある時は、まちづくり委員会が「北極ほのぼのマップ」を作っていました。もちろんヒヤシンスも載っています。


 事務所の隣には教会もありまして、人生相談(主に懺悔)はいつも長蛇の列になっています。(中のしろくまさんは曜日で交代制らしく、金曜の担当が人気らしいとか。)



 事務員さんたちには名前がありますが、それとは別に呼び名があります。からだの特徴とか、趣味嗜好とか、身に付けているものからついています。

 つまり、「ひげ」「プラモデル」「帽子」「もなか」「ブーツ?」などです。さしずめムーミンママなら「ハンドバッグ」ですね。


 推定10しろくまほどが働いているはずですが、毎日出勤していない非正規雇用のしろくまさんも含めると、ざっと30くらい登録しているでしょうか。


 中には宮沢賢治の「猫の事務所」をきどって「俺のことは『かまくま』って呼んで」なんていうしろくまさんもいます。

 かま猫というのは、夜かまどの中で寝るので真っ黒なのですが、このしろくまさんも暖炉のすすを鼻と耳に塗って、妙な風貌にしている変わり者です。けれど、実は博識らしいです。


 よくお世話になっている観光課のしろくまさん(呼び名ハサミ)は最近ふえた案件にてんてこ舞いです。

 ドローンがね、空中で凍ったまま静止しちゃってるんですよ。はしご車を出動させて、それに登って高枝切りバサミで氷をチョキチョキしてから取るんですって。命がけだ!


 僕となかよしなのは、事務所で唯一パソコン担当のしろくまさん(呼び名ピーシー)。街の設計図を作っているのかな、すごい!と思ってよくよく見たら、単にシムシティ(なつかしの仮想都市ゲーム)で遊んでいただけでした。

 あ、僕はね、スマホ持ってるんですよー。(北極にはまだないから珍しがられます。)だから当然「スマホ」と呼ばれています。


 ちなみにバーのマスターは「マフラー」です。マフラー巻いてない時、あるんだろうか。僕もスマホ忘れたらどう呼ばれるんだろう。

 しろくまさん同士で持ち物交換とかしたら、どう見分けるのかな。



 さあ、今日も終業のチャイムがなった10秒後。もうしろくま事務員さんたちは、ヒヤシンスの一角に到着していました。

 なんとしろくまさんたちは100メートルを10秒で走れるのか! それともスライディングか、あるいはフライングか?


 しろくまさんたちは、「ヒヤシンス」であまり目立たぬように端っこのテーブルに集まります。とはいえ、しろくまが4とか8頭いれば、ぎゅうぎゅうでもこもこです。


 1しろくまさんが代表してマスターにオーダーを伝えに来ます。

「瑠璃ハイボールと、さけるチーズのセットを4つお願い」


 今、日本から輸入された、さけるチーズが事務員さんたちの密かなブームです。

 今日の出来事を話しながら、手でチーズを縦にさきさきするのです。いい感じにさけた時、とても自慢げな顔をします。


 手先に集中してるので、多分お互いの話はロクに聞いていません。だって会話がかみ合ってないですもの。

「そういえば、かまくまがさー」

「お昼休み、所長が食べてたおべんとう、誰が作ったんだろう」

「今日、ラッコ君が来たね。超可愛かった」


 なんて具合です。一日中みんなの相談に乗ってるから、ここでは心を開放しているんですね! まあ、ストレスを発散して、また明日の業務をお願い致します!


 そうそう余談ですが「ヒヤシンス」の店名をつけたのは、事務員の「もなか」さんだそうです。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ