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第十一話「たった一つの命の大切さ」

 Side 城咲 春歌

 

 相手――問坂 ユウギが炎の槍を振るう。

 戦い方は我流感が強いがそれでもパワーとスピード、そして並大抵の攻撃では怯まない防御力と隙がない。


「攻撃その物は着弾しているのに――」


「相手が馬鹿みたいに頑丈なんでしょうね。どう言う性能の変身スーツかは知らないけどレベルMAXと言うのもホラじゃなささそうね」


 舞がそう考察する。

 その考察を後押しするように大道寺 リュウガ司令から連絡が入った。


『今、調べてみたがデーターバンクにあった。アレは元々はジェネシスで保管されていて行方不明だった変身アイテムの一つだ』


 大道寺司令は『それと』と言って話を続けた。


『問坂 ユウギらしき少年があの変身アイテムを使用していた姿も何件か目撃されている。学園側も王渡 志輝ともども捕らえるために何度か動いていたが失敗に終わり、ここ最近は姿を消していたが――状況から見てDrジャスティスの一派の仲間になったと考えるのが妥当だろう』


 との事だった。

 これでも簡潔に話を纏めたのだろう。

 どうやら深い事情がありそうだ。


「それはそうと私達二人がかりであのスーツに大丈夫なの? 本部の防衛は?」


 当然のことを揚羽 舞は尋ねた。


『そこは心配いらん。これぐらいなんともないさ。いざと言う時は俺も出る。それに復帰した者も防衛に回ってくれている』


 との事だった。


 どうやら心配しなくても良さそうだ。


「どうする? 幾ら私達の戦力が半減してるって言っても時間を掛ければ不利になるのはそっちだと思うけど?」


 と、舞は相手に早速揺さぶりをかけた。

 

 しかし返ってきた返事は――


『それがどうしたって言うんだ? 最初から難易度は低いとは思っていない』


「はあ?」


 と言う感じだった。

 相手は槍を構えて止まり、『そもそも』と話を続ける。


『僕は王渡 志輝に負けたから従っているだけだ。奴に勝つためにも――レヴァイザーを、天野 猛を倒すのが僕の目的だ』


「そんな理由でこんな事を?」


『僕にとって人生はゲームと同じだ。違いがあるとすればコンテニューができないだけ。王渡 志輝に最初に負けた時の時点で死のうと思った。だけど奴のルールで許されてしまった。だから奴から解放されるためには奴に勝つしか方法がない』 


「ちょっと待ってください!? 負けたから死ぬとか、あなたは一体何時の時代の人間ですか!?」


 王渡 志輝もおかしいがこの子もおかしい。

 思わず春歌は声を挙げてしまう。


『自分のルール一つ守れない最低な奴になりたくないだけだ』


「なにが最低なんですか!? 死ぬってどう言うことかアナタに分かるんですか!? 世の中には生きたくても生きられない人達が――明日の予定を楽しみにして理不尽に死んでしまった人が何人もいると思ってるんですか!?」


 春歌は思い出す。

  

 猛が助けられず、死の真相と経緯すら知らなかった加島 直人のこと。


 ブラックスカルでの戦いで命を落としたアーカディアの前司令、若葉 佐恵のこと。


 そしてブレンの唐突な襲来で亡くなった大勢の命。

 日本各地を回っただけでもそれはとても悲惨だった。


 王渡 志輝もそうだったが、この少年はそれ以上に大切な命を蔑ろにしている。

 それはとても許せないことだった。


 舞も同じ事を考えたのか「アナタは命を軽く考えすぎているわ。悪いことは言わない。せめてこんな事はやめなさい」


 と、諭すように言ったが――


『それがどうした?』


 と言う冷淡な物だった。


『そんなの今時流行らないよ。それにこの国を運営している大人達を見てみなよ。あいつらは他人の命なんかどうでもいい連中だったろう?』


「だからどうしたんですか!? アナタが蔑ろにしていい理由になんかなりません!!」


 と春歌は言い返した。


『イライラするね。どうしてそんなに熱くなるのさ? まあヒーローなんて名乗って活動している奴も僕からすれば変人だけどね。やっぱり金とか沢山もらえるの?』


「・・・・・・アナタは、やはり間違えています」


 静かに春歌は返した。


「アナタはヒーローだけじゃない! この世の中でも一生懸命に生きたいと願う人の気持ちを侮辱してます! 皆が皆、金だけで人助けしている人ばかりじゃありません! ブレンの襲来の時に何を学んだんですか!?」


 と、普段の彼女とは想像もつかない様相で、顔を真っ赤にして、涙まで流して、例えみっともなくてもその気持ちを真正面からぶつけた。


「だからアナタを止めます!」


『一々暑苦しいよ。まあこっちとしても好都合だよ。正直イライラするし』


 それを聞いて今度は舞が言った。


「アナタさっきの言葉を聞いて何も思わないの!?」


『思わないね。思いたくもないね。自分の生き方は自分で決めた。今の自分だってただそうなったって言うだけさ』


 舞は悲しそうな表情を浮かべ、そして決意したように


「春歌、ここは私が――」

 

 と言ったが、


「いえ、先輩。ここは私がケリをつけます」


「春歌――いいわ。任せるわよ」


 春歌は左腕のブレスレットからサクラブレードを抜刀する。

 舞は下がり、一対一の構図になった。


『大丈夫なのか城咲君』


「大丈夫です、司令。この子には負ける気がしませんから」


『そうか。言っても無駄だとは思うが無茶はするなよ』


 と、司令の通信に返す。


『僕と一対一で戦うんだ。二人がかりでも倒せなかったのに』


「大丈夫です。あなたは――私だけではありません。誰にも勝てませんから」


『やってみなよ!!』


 そして両者は激突した。

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