1-36 ピカトルの特訓
俺達はいま、魔力の層に属性を加える特訓をしていた。魔力の層に属性を加えることが自分以外もできるのか確認したかったこともあるが、実際ピカトルは治療などの魔法しか使えない、接近戦になったらいい的になるだろう。なのでピカトル自身が自分を守れるようにならなければいつまでもひとり立ちはできないだろう。
俺は軽く魔力をためピカトルへ向け放った。
ピカトルの魔力の層はまだ未完成で敵意のある魔力を受け流す事ができなかった。
俺の魔力を直に受け、後方へ吹き飛んだ。ピカトルは頭の中で試行錯誤を何度も繰り返しているようだが、一向にうまくいかない。幾度と繰り返す特訓で試合では汚れることのなかった服に土が被っていた。
ピカトルは服についた土を払った。そして額から流れる汗を拭く。
「ねぇ、ちょっと休憩させてくれないかな?この炎天下の中、ぶっ通しは流石に死んじゃうよ」
ピカトルの顔は笑っているように見えたがどこか疲れが出ているようなそんな気がした。
「倒れられても困るからな。小休止を挟むか。軽く水分補給しておけよ」
俺はピカトルへそう言うと差出で本を取り出した。
この間から気になっていた選ばれしものとはどういう意味なんだ。ガイルからもらった本を片っ端から読んではいるが、なかなかそれに類する物が見つからない。もしかしたら、洞窟の奥にあった城の中に選ばれし者について載っている本があったかもしれないな。大蛇との戦闘の後だったため、頭がうまく回らなかったようだ。さて、これからどうしたものか。
「どうしたんだい?いつも以上に眉間にシワを寄せているけど、困り事かい?」
休憩していたピカトルが俺の表情に気づき声をかけてきた。
ピカトルに選ばれし者の話などしても笑われるだけだろうな。変なことは言わないでおこう。
「ああ、何故ピカトルが魔力の層を創ることができないのかわからなくてな。魔力制御もうまくいっているはずなのに創ることができない。おかしな話だ」
俺は心配そうに見てくるピカトルに笑いかけた。
「僕も何故できないのか、何度か考えてはみたんだけど結論は魔力の層はカイくんの独自の魔法なんじゃないかな?」
「独自の魔法なんて、魔法陣から魔法を形成している術式を読み取れれば他人であろうと使えるだろう」
「そこなんだよ。カイくんの魔力の層には魔法陣が無いんだよ」
俺は両目を見開いた。
「本当か?魔力の層は幼少の頃から無意識に使えていたからな。全く気づかなかった」
俺の言葉に驚きを隠せない様子のピカトルは口を大きく開けていた。
「幼少の頃から……やっぱりカイくんは普通の魔族とはどこか違うんじゃないかな」
ピカトルは冗談混じりの口調でそう言った。
まあ、確かに俺は選ばれし者らしいからな普通の魔族とはどこか違うのは確かだろうな。
「そろそろ、休憩もいいだろう。特訓を再開するぞ」
「無理だと思うよ?」
ピカトルは面倒くさいと言わんばかりの口調で言ってきた。
「確かに無理そうだ魔力の層は諦めよう。しかし、ピカトルが自分で自分を守れるぐらいにはなってもらわねば、こっちが困るからな。今から実践形式の特訓だ。死ぬ気でかかってこい」
ピカトルは一瞬呆気に取られたが、すぐいつも通りの爽やかな顔になる。
「ええっと?僕がカイくんと実践?」
「そうだ」
「五体満足で帰れる気がしないんだけどな……」
ピカトルは様子を伺うようにこちらに目を向けてきた。そんなピカトルに笑顔を向けるとピカトルも口角を上げる。
「死なない程度に手加減するから大丈夫だろう……多分」
「えっ!?今多分って言わなかった!!最後の方にちょっと聞こえてきたんだけど!!」
ピカトルはいつになく大きな声で叫ぶ。
「そんなこと言ってない。いいから早くかかってこい!!」
ピカトルは納得いかない顔を浮かべて、投げやりに「いくよ!!」というと身体強化を使い戦闘態勢に入った。
俺とピカトルの組手が始まった。
「いいぞ、その調子だ。もっと体をうまく使え。そんなものでは簡単にやられるぞ」
そう言うとピカトルの両手をはじき、ピカトルの喉に爪を押しやった。
「こんな感じにな?」
ピカトルは降参とはじかれた両手を上げた。
「カイくんは体術もすごいんだな。見たところ身体強化使っていないでしょ?」
ピカトルの目が濃い光を放った。
「よく気づいたな。確かに使っていないぞ」
「正直、本気の君と戦ってみたいな」
ピカトルは笑顔で言った。
「俺と本気でだと?死ぬかもしれないが、それでもいいのか?」
ピカトルを脅してみたが彼は臆することなく笑顔を貫いた。
「カイくんがそんなヘマはしないと思っているからね」
「ほう?なら俺も本気を出すとするか」
俺は、体全身に出し惜しみなく魔力を流し込む。
最大限に魔力を発するのは初めてだな。自分でもどこまでいけるのか皆目検討もつかない。しかし、なんだ。この高揚感は?まぁいいだろう。
俺はピカトルへ最後の忠告をする。
「死んでも知らんぞ?」




