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87.猫耳娘たちが可愛すぎるんです

 ゴボゴボゴボ!


 背中を掴まれた体勢で、湯船に浸けられたものだから、頭のてっぺんまでお湯の中。

 ルフェさんの岩のような手は、身じろぎした程度ではびくともしない。


 こんな時の結界発動!

 おりゃ!


 ……2秒しか持たない結界では、一瞬息継ぎが出来た程度しか効果は無く。


 上からヒビキとアベルさんの声が聞こえてくるけど、水中に居る為くぐもってよく聞こえない。


 何も知らずに女湯でリラックスしている娘っ子達を、巻き添えにしちゃうので大変申し訳ないんだけれど。

 ちょっと本気で溺れそうなのだ。


 あとで謝るから許しておくれ。


 バリバリバリっ!!


 水中で発生させた電撃は、私を中心に放射状に広がる。


 背を掴む力が緩んだので、ガバゴボと大量のお湯を飲みながらも、必死にもがいて水面を目指す。


 私をすくい上げてくれたヒビキの腕の中で、むせながらルフェさんを見ると。


 湯面に、ぷかりと大の字になって浮かんでいた。



「ちょっと! 何今の!!」


 飛んできたピーちゃんに、アベルさんが事情を話してくれた。


「酔っ払いって最低ね! オカン大丈夫?」


私は大丈夫(にゃう)猫娘達は大丈夫(にゃにゃ~にゃ)?」  

「のぼせそうになってきたって、ちょうど上がった所だったから、二人とも大丈夫よ」


 娘っ子達に被害が無くて良かった。

 と、安堵した矢先。


「ビ……ビリビリするぅ~」


 あ、ごめんカイ君。

 君も、下半身お湯の中だったね……。



 電撃ビリビリショックから目覚めたルフェさんが。

 腰布一枚巻いただけの状態で、小さく背中を丸めて正座している。


「すまない……。久しぶりの火酒だったんで、つい……」


 つい……ぐびぐびといっちゃった訳ね。


 臭いだけで酒酔い起こしかけるような強いお酒を、お風呂に浸かりながらロックで飲んだら、そりゃ悪酔いもするよ。


 むしろ、もう酒気が抜けてる事の方がびっくりだわ。

 この人、やっぱりドワーフなのかなぁ。


 ……ちょっと頼みたい事があったのだけど、面倒くさがりな人なので、どうやって話そうかと考えていた。

 ちょうど良いから乗っからせてもらおう。


(ピーちゃん、娘っ子達用に、軽くて丈夫な装備作ってくれるなら、許すって伝えてくれる?)

「お。それ良いわね。了解っ」


 通訳が必要だろうと、私のそばに居てくれるピーちゃんに小声でお願いする。


「そんな事で良いのなら、いくらでも!」


 ピーちゃんの伝言を受けたルフェさんが、それまで下げていた頭をガバッと上げて返事してくれた。


 おや。意外にも快諾してくれた。

 お風呂などの日常生活のアレコレは面倒だが、武器防具作るのは苦にならない、って事かな?

 ますますワーカホリック体質な、ドワーフっぽいなぁ。


「「やったぁ!!」」


 後ろの方で娘達の喜ぶ声が聞こえてくる。


 出会った時に、彼女たちが装備してた革の胸当てや籠手が、相当ボロボロだったので気になっていたのだ。

 アベルさんの『勇者の鎧』と違って、この子達のには自動修復機能なんて付いてないだろうし……。


 めぼしいものもないキプロスの町には冒険者はまず来ない。

 需要がないので、当然武器防具の専門店も無いのだ。

 町の外から来るのは行商人程度だと、タローさんが教えてくれたけど。


 領主様のお館に居た騎士様達は、鎧や武器を装備していたので、仕入れ先はともかく修繕などはおそらくルフェさんだと思う。

 領主様ともかなり懇意みたいだしね。 

 

 


「オカン、良いのですか?」


「にゃう」


 アベルさんの問いにゆっくりと頷くと、「「オカ~ン!! 大好き~!!」」と、大はしゃぎする娘っ子達に抱き上げられ、両サイドから頬っぺたをすりすりされる。


 ……ぐわ。可愛ええ……。

 可愛ええけど、ちょっと苦しいよ。つーぶーれーるー!!


「二人とも、嬉しいのはわかるけど、オカンが潰れそうだよ」


 ヒビキのおかげですりすりから解放され、今度はナデナデ攻撃が始まる。


 実は母ちゃん娘も欲しかったのよねー。

 はあああ。可愛ええ。

 十数日みっちり一緒に生活していたせいか、すっかり情が移ってしまったわ……。


「ヒビキ」


 着替え終わったルフェさんが、ヒビキに声を掛けてくる。


「はい?」

「あの、女神様の指輪な。娘達に石を渡すと穴があくだろう?」


「そうですね」

「その後、誰が持つんだ?」


「俺が持ちます」

「そうか……。それなら、リング部分も作り直してやろうか?」


「え! 良いんですか?!」

「ああ。そのまま違う石を入れても良いが……女物は、恥ずかしいんじゃないか?」


 ニカッと笑ってくれるルフェさんに、「実は少し……」と相槌を打つヒビキ。


「金に派手な飾り彫りの女物の……赤くてでかい宝石が付いている指輪は、なにかと目立つだろうしな」

「そういえば、こういう指輪って、どの指に嵌めるのが良いんでしょう?」


「親指だな。隠したい時は指を握ればいい。他の指だとそうはいかん」


 親指を巻き込むようにして、握ったり開いたりしながら「なるほどぉ」と感心しているヒビキ。


「娘達は何にするか決まったのか?」


「「ピアス!!」」


「判った。じゃあ、俺は一足先に戻って炉に火を入れてくるから、ヒビキ送ってってくれるか?」

「はい」


「装備も作るとなると、大量に薪がいるな。カイ。……カイ?」


 そういえば、一番元気でじっとしてないカイ君が、ずっと喋ってなかったな……と思って男湯を覗きに行くと。


 びりびりする~と云ってた体勢のまま、熟睡していた。

 ……ご、ごめんよ忘れてたわ。





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― 新着の感想 ―
[良い点] その状態で寝てしまう、 カイ君の、大物っぷりが笑えますね。 [一言] 石像事件も無事(?)解決して、 さあ次への旅立ちという感じですが、 この女神様、現状では、 邪神としか思えませんね(笑…
2020/08/23 07:46 退会済み
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