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8.君の名は

 襟元に隠れていたピクシーが、モソモソと出てきて飛び上がり、ヒビキの顔の真ん前で停止する。

 大きく息を吸い込むと、あきらかにわざと出したと思われる大声で、叫んだ。


「名前ッ!!!」

「え? ヒビキだけど……。こっちの白い猫が『オカン』」


 突然の主語のない問いかけに、しどろもどろになりながら答えるヒビキ。


「そうじゃなくて! ワタシに名前を付けてみて!」

「え? 名前、俺がつけていいの?」

「いいから言ってるんでしょ! ほら、早く!」


 ピクシーさんや……ヒビキの名づけセンスの無さを侮るなかれ……

 どんな残念名前が飛び出してくるのかと、少しわくわくしながら見守る。


「早く! 早く!」


 獲物を狙う肉食獣のような、ギラギラした瞳で急かすピクシーの勢いに、慌てまくったヒビキが口を開く。


「ピーちゃん!」


「はあぁぁぁぁ?! 何その安直な名前っ!」


 真っ赤になってジタバタしながら、怒り狂うピーちゃんの姿が光り始めた。


「ちょっ! やだ! こんな安直な名前は嫌だぁぁぁぁ! やり直しを要求するぅぅぅ!」


 完全に手遅れな望みを叫んでいる間にも、ピーちゃんから出てくる光は、どんどんと強さを増してゆき、3人そろって目を閉じた。


 光が収まった事を確認して、そろりと目を開ける。

 そこには、15センチぐらいの身長に成長したピーちゃんが浮かんでいた。


「すっごい。本当に成長してる!! 魔力も倍以上になってるじゃない! まさか本当に『生き物使い』が存在するなんて!」


 一人興奮して捲し立てているいるピーちゃんを、ヒビキと二人で首をかしげながら見つめる。


「まさか、アンタ達何にも知らないの?」


 半眼になって睨んでくるピーちゃんに、ヒビキと二人、こくこくと頭を縦に動かした。



 この世界の人間は、15歳になると神様から『職業』が与えられるらしい。


 数ある職業のなかには『魔物使い』『死霊使い』『動物使い』という職業があり、持っている職業に該当する生き物は、使役する事ができるそうだ。


 使役する方法は、戦闘してある程度弱らせた後に、使役魔法を発動するだけなのだが、成功率は、魔力や使役魔法の熟練度によってかわるらしい。


 対して、『生き物使い』は()()()()()()()()名前を付ける事だけで使役できる、いわゆる『使役系で最上位の職業』だという。


 さらに『生き物使い』は、使役した生き物に、使役者自身の持つ魔力の量によって、種そのものの進化や、まったく別の新たな力を与える事もあるらしく、一部の名を持たない生き物たちからは、絶大な人気を持つそうな。


 ただし、最上位の職業とはいえ、()()()()()()()()()()()には使役できないとか、()()()()()()()()でないと成功しないなどの制約はあるらしい。



「え? 使役って、ピーちゃんが俺に従属されたって事?」


 オロオロと問いかけるヒビキに、ピーちゃんはニヤリと答える。


「あ、それは大丈夫。名づけによる使役の時には、頭の中で制約事項を思い浮かべながらでないと、完全に従属させる事はないのよ。さっき、ヒビキってば慌てまくってたから、名前の事しか考えてなかったでしょ?」


 そのための急かし攻撃だったのか!


 つまりこのピーちゃんは、何の束縛もない状態で、パワーアップだけ手に入れた事になる。


 ……なんという知恵のまわる俺様……


「まぁ、『名づけしてもらった人には攻撃できない』って制約だけ、最初からあるから安心してね。」


 よほど成長した事がうれしいのか、高速で飛び回りながらはしゃぐピーちゃん。


「従えたい訳じゃないから、それで良いんだけど……。なんか釈然としない……」


 遠い目をしながらヒビキが呟いた。



初めてコメントを頂けて、狂喜乱舞しながら、本日3度目の投稿です。


手さぐりで綴っておりますので、お気軽に感想や改善点・誤字などお知らせ頂けると、うれしいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] ぴ、ピーちゃん……やりおるわ(゜Д゜;)
[良い点] ここまで一気読みしました。 母の愛強しですね。 熱したフライパン攻撃とか、ヒビキくんの、 ネーミングセンスとか、面白かったです。 [一言] 白猫のオカンの活躍に期待大です。
2020/06/27 18:16 退会済み
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