7.★妖精って大抵第一印象最悪だよね
文中に挿絵を追加しています
挿絵がお嫌いな方は、さら~っと見なかった事にして頂けると幸いです。
なろうの機能で画像を非表示にする方法もあるそうです。
画面右上の『表示調整』のボタンを押してから『挿絵表示中』の文字を切り替える事で、表示/非表示を選択きるそうですので、お手数をお掛けして申し訳ないのですが、宜しくお願い致します
声が聞こえた方を見ると、10センチほどの人型の生き物が、ふよふよと浮いていた。
腰のあたりまである、ゆるくカールした赤い髪に、ぱっちり二重の緑の瞳。小さい鼻はツンと上を向き、桜色の唇。
瞳と同じ緑のワンピースをまとったその背には、透明の羽が二枚ついていた。
か、かわいい!!
あまりにも可愛らしい姿に、これが萌えというものかと納得する。
「あんた、そんなに強い魔力を持ってるのに、火魔法も出せないなんて! ぐ、ぐふふ、あははは!」
先ほどの不発ファイヤーがよほどツボにはまったのか、笑いすぎてむせている。
「君はだれ? 妖精?」
耳まで真っ赤にしたヒビキが尋ねる。
ゲッホゴッホとむせていた生き物が、呼吸を整えて、コホンと一つ咳払いをしてから、エラそうに胸をはった。
「人間は私たちを見ると、たいてい妖精ってひとくくりにして言うけどね。妖精にもいろいろあるのよ! 私は引きこもりがちの妖精一族のような、軟弱な妖精じゃないんだからね!」
「…もしかして、ピクシー?」
「大正解!!」
たしか、森を好んでひっそりと生息する一般的な妖精と違い、気まぐれに人里に下りてきてはちょっとしたイタズラをしかけて喜ぶ妖精だったはず。
……ちなみに、私が読んでいた妖精や魔法が出てくる物語は、すべてヒビキも知っている。
「ごめん、俺、水もミルクも持ってないんだ」
あちらの世界で読んだ内容では、『ピクシーは水やミルクを好み、分けてくれた人間には、お礼に銀貨を1枚与えてくれる』と書いていた。
ただし、『一度でも与えてしまうと、出会う度に求められるようになり、次回出会った時にうっかり用意を忘れていたら、ちょっとした呪いをかけられてしまう』そうな。
なんという俺様思考…。
ピクシーが、そのかわいらしい唇の端を持ち上げて、ニヤリと笑う。
「まーたまたぁ。持ってるの知ってるよ! 水やミルクよりも、もっとすごいものを持ってるでしょ!」
「は?」
あからさまに混乱しているヒビキの頭の上に、腹ばいに乗ったピクシーが、ツンツンと頭をつつきながら、なおも追い討ちをかけてきた。
「見せてみ? 全部よこせとは言わないからさ。ちょこーっと、このかわいい私に見せてごらん? んでもって、ちょこーっとだけ分けてくれたらうーれしーなー!!」
手のひらサイズのピクシーにカツアゲされて、なさけなく思考停止しているヒビキを見かねて、威嚇してみる。
「きしゃー!!」(カツアゲ、よくない!)
「きゃああああ!」
突然吠えた私の威嚇にびっくりしたらしく、素早くヒビキの襟元にもぐりこむピクシー。
「居るの忘れてた! そーいえば、アンタ何者なのよ!」
「にゃー!」(猫ですが何か!)
「ふざけんじゃないわよ。猫にそんな羽が生えてる訳ないでしょーが!」
ヒビキの襟元から、顔だけ出したピクシーが喧嘩腰に話かけてくる。
「にゃー!」(私だってなんで生えてきたのか知らないのよ!)
「は? 急に生えてきたって訳?!」
「にゃー!」(光って消えたら生えてたの!)
「ピクシー、オカンがしゃべってる事がわかるの?いいなぁ!!」
突然始まった猫とピクシーの喧嘩に、ついてこれていなかったヒビキが、斜め上の感想を述べてくる。
突っ込むところそこ?!
先ほどまで勢いよくまくし立てていたピクシーは、「…そんな、まさか…」と呟きながら、何か思案し始めた。