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67.男子っておバカな事本気で楽しむよね

 最後に入っていたダンジョンで、すべての持ち物を無くしたアベルさん達だが、各々が腰ベルトに括り付けていた小袋は無事だったらしく。

 硬貨入れにしている小袋には、わずかだが硬貨が入っていると云っていた。

 

 2度目の入浴の後、上半身もきちんと着替えを済ませたアベルさんが、ふとその事に思い至ったようで。


「ミア? 着替えの代金はどこから……?」


 と、尋ねた。


 ミアちゃんは、腰に括り付けている小袋をポンポンと叩き示しているが、目が泳いでいる。


「ミ~ア?」


 おそらくミアちゃんの所持金を把握しているのだろう。

 アベルさんが、教師モードの時の微笑みに変わる。


 しょんぼりと、耳と尻尾を垂らして猫背になったミアちゃんが、「ヒビキさんが出してくれた……」と云った。


 すぐさま腰に括り付けていた3人分の、小袋の中の硬貨を確認し始めたアベルさん。

 アベルさんに見つめられたミアちゃんが首を振っている。


 手持ちの全ての硬貨を足しても、服の代金に届かなかったのだろう……。


「アベルさん、すみません。気にするかなと思って、俺がミアちゃんに内緒にするように伝えたんです」


「いえ、すぐに気が付くべきでした。ソラ、アイテム袋を渡して」


「は~い」


 ソラちゃんが小袋の反対側の腰に着けていた、少し大きめの袋をアベルさんに渡した。


 渡された袋の中から、エメラルドグリーンの宝石が付いた腕輪を取り出して。


「使える人を選ぶのですが……。『回復の腕輪』です。ヒビキさんかオカンが付けられれば、洋服の代金と相殺させて頂けませんか?」


 腕輪を渡されそうになったヒビキが、首を振って後ずさる。


「えっ。そんな、いらないです」


 固辞するヒビキに、無理やり握らせようとするアベルさん。

 手を取られまいとした、ヒビキの結界魔法が発動した。


 バチィ、という小気味よい音と共に、手を押さえるアベルさん。


「す、すみません!」


 謝るヒビキに、「隙アリ!」と早口で云ったアベルさんが、再び手を取ろうとした。


 バチィ!


 弾かれた腕を軽く振って、アベルさんが前傾姿勢を取る。


 つられるように前傾姿勢になったヒビキ。

 

 男子二人が、ケンカ四つのステップをとり始める。


 ヒビキに触れる寸前に、結界に阻まれるアベルさん。

 二人して、にやりにやりと笑っている。


 えっと。アベルさん、キャラ変わってない?


「「お兄ちゃん、楽しそう……」」


 猫耳娘たちが男子二人の攻防を見て、嬉しそうに呟いている。


 単純に捕まえようとするだけでは、結界に阻まれると悟ったアベルさんが、右手の――小指から人差し指までを順に――素早く握るような動作をする。


 もこっ


 突然もり上がった足元の土に、バランスを崩したヒビキが――


 ――転ぶことなく、空中に舞い上がった!


 すぐさまヒビキを追いかけてアベルさんも空を飛ぶ。


 えー……。

 もういいじゃーん。

 サクッと腕輪もらって、町に帰ろうよぅ。


 興が乗ったらしきアベルさんが、低威力の魔法を連発し始めた。


 小さい炎の球や、小さい水の球。それに、薄くうずまく風が絶妙なタイミングで飛んで行く。

 

 しかし、ヒビキの結界魔法が悉く阻止している。


 物理的な攻撃だけじゃなくて魔法も阻むって、何気にヒビキの結界ってすごいんじゃないのかなぁ?


「ヒビキさんすごい」

「お兄ちゃんの魔法、あンなに躱せる人初めてみた」


 胸元で握りこぶしを作った猫耳娘二人が、きゃいきゃいと応援し始めている。


 飛び回って回避しつつ、被弾の直前に結界を張って凌いでいたヒビキが、反撃にでる事にしたらしく。

 リボン状の風の魔法を放ち、アベルさんに向かって放物線を描いて向かわせた。

 

 大きく半円を描く様に飛んで躱そうとするアベルさんを、ヒビキの風魔法が追従するが。

 アベルさんが放った魔法に相殺されて消えてしまう。


 すると、すぐさま追加で風の帯を繰り出すヒビキ……と……見事に相殺するアベルさん。


 飽きたよぅ。

 帰ろうよぅ。

 公園から帰りたがらない幼いヒビキを、なだめていた時の気持ちを思い出した。


 この位置から、ピーちゃん達に伝言をお願いしても、聞こえないだろうしなぁ。

 あ、いい事考えた。


 掌球から出した水球を、細かくして……

 飛び回って攻防を繰り返すおバカ男子二人の上に配置する。


 うん。いい感じ。

 なんか、メキメキ上達している気がするな、私の水魔法。


 おバカ二人の上空に配置した、霧よりももっと細かい水の分子を暴れさせて……っと。

 よーし、電気球出来てきた。


 おーきく、おーきく、大きくなあれ。

 あんまり大きくして威力が強くなるのも怖いから……。

 野球ボールぐらいの大きさなら大丈夫かな?


 幸い、二人が放ちあっている魔力の方が強いので、私の電気球には気付かれていない様子。


 ヒビキの結界が解除された隙を狙ったアベルさんが、一気にヒビキに接近!


 よっしゃ、今だ!


 バリバチーン!!


「「うわっ!!」」


 同時に電撃を喰らった二人が、動きを止めて私を見てきた。


 ふふーん。

 近くで動くモノには反応できても、真上から落ちてきた電撃には気付くまいと思った。

 大成功ー!


いつまで遊んでるの(にゃうなうなー)もう帰ろうよ(にゃーにゃうにゃ)!」 


「オカンが、帰ろうって云ってるー!!」


 私の頭の上で、だらけて寝ころんでいたピーちゃんが即座に通訳してくれた。

 私と同じく、おバカ男子のお遊びに飽きていたらしい。

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