5.★最初の仲間
FAを頂きました~~!
文中に差しこんでいます
「……本当に来ちゃったんだなぁ。母さん心配してるだろな」
竜が飛び去った方向をぼんやりと見つめながら、ぼそりとつぶやく息子。
突然異世界に飛ばされた自身より、残された(と息子は思っている)私を気遣う言葉を発する息子に、うるりと視界がにじんだ。 うん、親ばかです。
「さて。ここからどうしようかな。……神様まずどこへ行けとか言ってなかったからなぁ……」
私の胴を両手で握りしめながら、その場に腰を下ろした息子が話かけてくる。
「にゃー……」(そうだね……)
伝わらないのは解っているけれど、相槌をうつ。
「お前、俺の言うことがわかるの?」
「にゃー」
「すごい。神様が言ってた最初の仲間ってお前なのかな」
「にゃー?」
それはないと思う。
神様にとって、私は完全に予定外の存在だもの。
疑問形で返事を返す私に、なおも話かけてくる息子。
「名前! 名前つけなきゃな! ずっと一緒にいる仲間なのに、お前呼ばわりはよくないよね」
「真っ白な毛並みだから……シロ? いやいやそれじゃ安直すぎか……」
ブツブツとつぶやきながら、私を膝の上におろして背中のもふもふをなでてくる。
「もふもふ……。念願の……もふもふ……」
動物アレルギー持ちの息子は、毛のある生き物と触れ合う事ができなかった。
元いた世界でのジレンマを取り戻すかのように、私の毛皮を堪能している。
アニマルセラピーという言葉もあるぐらいだもの。私の毛皮で和めるのなら、心行くまで堪能するがよい。
息子に撫でまわされるという、ある意味羞恥プレイに耐えながら、されるがままになっていると、私の名前候補を告げてくる。
「タマなんてどう?」
センスの欠片もない名づけに、半眼になりながら首を振る。
「……だめかぁ。んじゃ、コテツ」
「んにゃ!」
息子のみぞおちに、渾身の猫パンチをお見舞いする。
「……嫌なのか。んじゃ、みぃちゃん?」
「んにゃ!」
2発目の猫パンチ。
「ぶふ! 今のは、いいところにはいったぞ。地味にダメージ来るな。……お前、母さんと同じ攻撃してくるのな」
元居た世界を思い出したのか、寂しそうにへにゃりと笑った。
シックスパックの腹筋にあこがれて、毎日朝晩自主トレをしていた息子に。
お手伝いと称して、家の中ですれ違う時には、「腹筋!」の掛け声を合図に母ちゃんパンチをお見舞いしていた。
スキンシップを嫌がるお年頃の息子に、ささやかな親子の触れ合いとして編み出した、今思えば我ながらサブイボもののお遊びに、苦笑いで付き合ってくれていた。
「次、いつ呼べるかわかんないしな。お前の名前は『母さん』……はさすがに恥ずかしすぎるな。母……母上様……カカ……も何か違う。うーん。ママ……はない。それはない」
幼い頃は『ママ』と呼んでくれていた。
小学校に上がった頃、同じクラスのやんちゃ男子にからかわれるからと言って、『お母さん』になった。
高校生になってからはいつの間にか『お』が取れて、『母さん』と呼ばれるように。
男の子にとって、親の呼び方というものは、年齢とともに変わってゆくものらしい。
「……『オカン』にしていい?お前の名前」
元いた世界との繋がりを求めるのか、さびしそうな目をして問いかけてくる息子に、こくりとうなずいた途端、私の体が光りだした。
優しい笑顔のヒビキと、オカン猫を描いて下さったのは
汐の音様です【https://mypage.syosetu.com/1476257/】
汐の音様、素敵なヒビキとオカンをありがとうございました!!