表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/167

49.タローさんとお買いもの

 1区画は商業地区になるからか、町の人からの”うちの子相談”で呼び止められる事も無く、程なくしてタローさんの(商品を置かせて貰っている)お店に到着した。

 

 こぢんまりした2階建てのお店は、1階が店舗になっていて、2階は住まいになっているらしい。


「ドーラおばさんは、母さんのお姉さんで、母さん達が死んじゃってから、色々と世話焼いてくれる人なんだ」


 タローさんが軽く説明してくれながら、お店のドアを開けると、カランとドアベルが鳴る。

 カウンターで居眠りしていた中年の女性が、ドアベルの音で起きたようだ。


「ドーラおばさん! また寝てたの?!」

「なんだ、タローか。 客が来たらちゃんと起きるんだから、いーじゃないか」

「俺が店番してる時に寝てたら、拳骨してくる癖にー」

「当たり前だろ。アタシャ店主だよ!」


 肝っ玉っぽい女店主は、言葉尻はキツイけど優しい目をしていて、タローさんもかなり懐いている様子。


「タロー、お客様の紹介はしてくれないのかい?」

「あ、そーだった。聞いて驚けぇ! この方は――」

「『動物使い』様だろ?」

「――気付いてたんかーい!」


 タローさんとドーラおばさんの、ノリ突っ込みが延々続きそうなので、ヒビキが自己紹介を始めた。


「……ヒビキです。初めまして」

「ドーラだよ。よろしく。(ハナコ)の悩み事を聞いてくれたんだってね。感謝するよ」


 どんなけ噂出回るの早いの? この町!


 ドーラおばさんと世間話を始めようとしたヒビキを、お店の一角に引っ張っていくタローさん。


「ヒビキ、ここら辺が、俺が木で作った食器! 丈夫で長持ちって評判いいんだぜー」

「すごいね」

「沢山買ってくれよなっ」


 シシシと笑うタローさんに、笑いながら頷いたヒビキは、次々と選んではカウンターに並べて行く。


 まな板替わりになりそうなカッティングプレート 1枚

 カレーライスが似合いそうなちょっと深めのラウンドプレート 2枚

 マグカップ型のコップ 2個

 ボウル型の大皿 1枚

 ボウル型の小皿 2枚

 木べら 1個

 スプーン 2本

 二股の木のフォーク 2本

 木のおたま 1個


「あとは……。タロー、オカン用にもう一つコップを買いたいんだけど、持たせて試してもいいかな?」

「あー……。そっか。肉球だもんなぁ。触るのは良いんだけど、俺作ろうか?」

「えっ。いいの?」

「うん。いいぜー。側面は出来るだけ真っ直ぐで、手を突っ込めるように、大きめの持ち手が両側に付いてるのが良いんじゃないか?」

「ありがとう! 形はタローに任せるよ」


 ……赤ちゃんの、マグみたいな形かな?

 確かに、それだと私の手でも持ちやすそう!

 どんどん普通の猫から遠ざかって行ってる気が……しないでもないけど。


「あと、料理用のナイフはあるかな?」


 ヒビキの肩で、だらんとぶら下がっている私の手を、握ったり離したりしながら、サイズを確かめてくれているタローさん。


「あー……。鉄製の物は置いてないんだ。町を出て、南東にちょっと行ったところに、工房があって、そこで武器とか鉄製のモンなんかは買えるんだ」

「町の中にはないの?」

「ちょっと前まではあったんだけどなー。なんか、トンカントンカン煩いとか、煙がうざいとか苦情が来たらしくて、おっちゃん怒って町を出ちゃったんだよ」


「……それは……。どちらも気の毒だね……」

「ま、もともとおっちゃんは、キムズカシイ? って言われてたからさ。町を出て、イキイキしてるらしいよ」

「そっかぁ。まだ日数あるし、その内行ってみるよ」


 私の肉球をムニッと押しては、爪を出したり入れたりしだしたタローさん。

 それ、サイズ確認に必要? 完全に遊んでるよね?

 そろそろ、猫パンチしてもいいかな?


「んじゃ、とりあえず今日の所はこのぐらいかな。オカンのコップ代は出来てからの方が良いかな?」

「オカンのは俺からプレゼントでいいよ。ヒビキいっぱい買ってくれたし」

「えっ。それは――」

「こーら! タロー、それはやっちゃダメだって教えてきただろ!」


 ヒビキが固辞しようとするよりも早く、ヤリ手婆なドーラおばさんがまったを掛けてくれた。

 職人なんだからね。ちゃんと対価は貰わなきゃだよね。


「……地獄耳ー」

 

 ぼそっと呟いたタローさんの脳天に、ドーラおばさんの鉄拳が落ちた。

 頭を抱えてのたうってるタローさんを無視して、ドーラおばさんがヒビキをカウンターへ誘導する。


「あのバカに任せてたら、とんでもないどんぶり勘定になるからね。かわりに計算しといたよ。特注のコップ代は、出来上がってからにしておくれ」

「はい。お会計お願いします」

「銀貨1枚と、小銀貨2枚、銅貨8枚だよ」


 ……全部で1万3千円くらいかな。

 木の器だし、妥当な金額っていうより、ちょっとオマケしてくれてる感じがする。 


「え! そんなに?! 俺、銀貨1枚いかないと思ってた! やったあ!」

 

 タローさんは、もうちょっと計算の練習しようね。

 ほーら、ドーラおばさんが、拳骨に息吐き掛けてスタンバッてるぞ。

 危険察知能力だけは高いらしいタローさんは、ヒビキがお釣りを受け取ったのを確認するや否や。


「んじゃ、おばさん! 俺今日はヒビキの案内係りだからさ! またね!」


 と、半ばヒビキを引きずるようにして、お店を出た。


「ちょ、ちょっと、タロー、俺まだ商品受け取ってない」

「ぐあ! まじか! オカンのコップできた時に、一緒に持っていくよ」


「……今から戻ったら、絶対拳骨一発じゃすまないし」

「そ……そうだね。お願いするよ」


 すっごい音してたもんなぁ。ドーラおばさんの拳骨。


「他に必要なものあるか?」

「んー、そうだなぁ。あとは水筒と、毛布が欲しいな」

「水筒なら、ドニおじさんの所かな。毛布も売ってるよ。んじゃ次はドニおじさんの所へ行こうか」

「頼むよ」


 てくてくと1区画を歩きながら、「でもさ~」とタローさんが言う。


「ん?」

「オカンがいるから、水筒要らないんじゃないの?」


 ちょーっとまてい。タローさん。

 私を水筒呼ばわりは酷いんでないかい?


「水出して貰うのも、魔力使ってる筈だしね。この先何が起きるかわからないし、オカンがしんどい時に、無理に魔力で水だしてもらうのは、可哀想でしょ」

「あー。なるほどぉ」

「タローも、カイに負けず劣らずのおバカよね」


 黙って聞いていたピーちゃんが参戦しだして、精神年齢が近い3人組が、わいわい言いながら、ドニおじさんのお店に着いた。


 ドニおじさんのお店は、皮と布の洋服をメインに置いてる店らしく、水筒と毛布は1種類しか置いてなかったので、さくっと買って出てきた。


「他に買いたいものとか行きたい所はあるかー?」

「んー。今日はもういいかな。荷物(もうふ)持ってるし。タローも、(ハナコ)のお乳でチーズ作りしなきゃでしょ?」

「うっわ。お見通しかよ」

「うん。タローん家で、食べさせてもらったチーズ美味しかったから、買いたいんだ」

「おぉ。そんなん言われたら、張り切って作るしかないじゃんかー」


 にこにこ笑うヒビキの脇腹を、肘でうりうりと押して照れてるタローさん。

 褒められて伸びる子だな。


「んじゃ、戻ろうか」

「いや、今日からは、ちゃんと宿屋に泊るよ。ハナコさんとも約束した? っていうか、されられた? し」

「あー。ハナコさん喜ぶよ」


 ハナコさんの宿屋は、ドーラおばさんの食器屋の3件隣にあるらしく、またワイワイと騒ぎながら来た道を戻る。

 宿屋は、ハナコさんのご両親が経営しているらしく、看板娘なハナコさんは、ちょっとしたアイドルらしい。

 1階は食事時は食堂で、夜は酒場になっていて、客室が2階にあるらしい。

 あまり旅人が来ないキプロスの町なので、2階が使われる事は少ないらしく、”おもてなし”は覚悟しとけよー、とタローさんが云う。


 やめろー。フラグを立てるのは、やめろー。





ドニおじさん「え? ワシの出番もう終わり?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] オカン用のコップ~♪ 肉球でももてるんですね (*´▽`*) かわいい☆彡
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ