37.★乳牛のハナコちゃん。
FAを頂きました~~!!
文中に差し込んでいます★
のどかな草原を、牛が駆けてくる。
【助けてー!】と、悲痛な叫びをあげながら。
牛の体にある黒い斑の模様に、一瞬ヒヤリとしたけれど、ごくごく普通の牛のようだ。
叫んでさえいなければ。
「蟻とか昆虫とか魚みたいな、1日前の記憶も忘れるような子達までは無理だけど、牛ぐらいの知能がある生き物なら、ヒビキに『名付け』して貰った恩恵で、私達にも分かるようになるのよ」
右肩にとまっていたピーちゃんが、素早く左肩に回ってきて、そっと耳打ちしてくれた。
優秀なガイドさんだ。ありがたやー。
牛の後ろから、いかにも村人Aといった雰囲気の男の人が駆けてくる。
茫然と立ち尽くす私達の所に、先に辿り着いた牛は、すぐさま【助けて!】と言って、ヒビキの後ろに隠れながら、矢継早に捲し立ててきた。
【こんな所で会えるなんて! あなたデキルでしょ? 私を従属させて! 助けて!】
ものすごく困っているのは判るが、あきらかに”人に飼われている牛”を従属させるのは、面倒事の匂いしかしないしねぇ。
「そこのお人ー! ハナコを捕まえてくれー!」
ハナコってこの牛の名前かな?
だったら、ヒビキの『名付け』は発動させられないので、どちらにしても駄目だ。
村人Aさんが叫びながら走ってくるが、すでに牛は立ち止まっている。
っていうか、走ってくる牛を捕まえられる人っているの?
やっと追いついた村人Aさんは、ぜいぜいと息を吐きながら、牛の首輪に縄を繋いだ。
「ありがとな。ったく、いつも大人しかったから、綱をつけてなかったのが災いしたよ」
「何があったのですか? 牛さん、【助けて】って言ってますけど」
「驚いた! アンタ、『動物使い』なのか?」
「えぇ、まぁ」
いきなり動物の言葉が判る事がバレて慌てたが、ヒビキが上手に言葉尻に乗っかった。
そっか。使役系って色々あるって言ってたもんね。
すべての生き物の言葉が判る、とさえバレなかったら大丈夫って事かぁ。
「ハナコな、ここひと月ほど乳が出なくなったんだよ。乳牛は、乳が出ないと餌を食うだけになるだろ……だから……な」
あぁ、食べるのかぁ……。
乳を出さなくなった牛の行き先は一つ。
そこに”可哀想”が入り込む余地はない。
非常だけど、そんな事を考え始めたら、人は何も食べられなくなってしまう。
【そりゃ、小屋にあんな物を置かれたら、お乳も出なくなるわよ!】
ん? あんな物?
「牛さん、【小屋に置かれてる物がストレスで、お乳が出なくなった】、って言ってますよ」
「え? 本当に?」
「はい」
「どけたらまた出るのか?」
【出るに決まってるじゃない! あと5年は余裕で出るわよ!】
「どけてくれたら、あと5年は余裕だそうです」
「そうか……。せっかくの領主様からの贈り物なのになぁ。……どかすしかないか」
独りごちていた村人Aさんが、困惑気味に見つめる私達に気付いて、慌てて話し始めた。
「俺、タローって言うんだ。ハナコを捕まえてくれたお礼がしたいから、一緒に来てくれよ」
◆
「ようこそ! キプロスの町へ!」
タローさんが、期待通りの村人Aのセリフを云ってくれた。
ヒビキの口元もニヤケているので、某RPGゲームのお決まりのセリフを思い出しているのだろう。
町の入口には、逃げ出した牛を心配していた村人が集まっていた。
「みんな、お騒がせしてすまんかった。逃げた原因が判ったぞー。この方は『動物使い』だそうだ」
おぉー!!
わっと歓声があがる。
え、なになに。『動物使い』ってそんな人気なの?
「今夜は俺の家に泊って頂くから、聞いて欲しい事がある奴は、明日頼みにくると良いぜ」
タローさんの呼びかけに、村人達が次々とヒビキの所にやってきては「明日よろしくね」と声を掛けたり、頭を下げたりして去って行った。
あまりの歓迎っぷりに、ポカンとしていると、「とりあえず俺ん家に案内するな」とタローさんが先導してくれる。
門番をしているマッチョなおじ様に会釈してから、5メートルほどの高さの、赤い煉瓦の壁に囲まれた町の中に入る。
「しっかし、さすが『動物使い』様だよなー。羽が生えた変わった猫に、妖精までお供にしているなんて。すごいよなー」
「そ、そんな事は……」
タローさんの絶賛に、言葉を濁すヒビキ。
言われてみれば……羽の生えた白猫に、黙っていれば超絶可愛いピーちゃんを連れている時点で、”目立たず旅をする”ってだいぶ無理なのかも知れない。
うわぁ。嫌だー。厄介事まみれの旅は嫌だー。
町の中は、白壁に木窓が嵌り、赤い切妻屋根で統一された家々が、整然と立ち並んでいる。
各家にはこぢんまりとした庭があり、家庭菜園や色とりどりの花が植えられていて、とても可愛らしい。
ただ一点を除いては、”おもちゃの町”という表現がぴったりな、どこか遊園地のお弁当を食べるゾーンのような町並みが続いている。
ただ一点を除いては。
「なんか……気持ち悪いわね……」
「うん。町の人たち、平気なのかな……」
整然と整理された石畳のそこここに、同じポーズで同じデザインの、等身大と思われる女性の石像が、雑然と並んでいた。
描いて下さったのは、『八割れネコ』様【https://mypage.syosetu.com/1811075/】です。
ハナコの、ちょっとおとぼけな感じがすごく出ていて、見ていてほっこりしました。
ハチワレ猫様、ありがとうございました~((o(´∀`)o))




