表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/167

35★行ってきます

やっと1章最終話まできました!


お話の途中に、頂いたFAがあります!!

 つた草で編まれた長テーブルが燃えやしないかと、ハラハラして見守っていたけれど、どうやら大丈夫らしい。

 

「姐さ~ん!」


 ピーちゃんが、フェニックスの首に抱き付いた。


「おぉ。久しぶりだねぇ。バカ娘。100歳になった途端、飛び出して行ったって聞いたよ。あんまり女王に心配かけるんじゃないよ」

「はぁ~い」


 おぉ。ピーちゃんがしおらしくしてる所なんて珍しいな。

 なんだかんだ、女王様や王様にも気安い感じで話してるしなぁ。

 ……ってか、ピーちゃん熱くないのかな?


「四六時中ボーボー燃えてるワケじゃ無いさ」


 ……え? 考えてることがわかるの?


「これでも聖獣の一端だからね。そこいらの魔物と一緒にしないでおくれな」


 エスパーなフェニックス姐さんの言葉に、コクコクと頷く。


 やばい、私の脳内NGワードが多いから気を付けないと……

 特に母お……げふんげふん……やばい、考えたらダメだと思うと、そっち方向に意識が向いちゃう! 

 は……はダメ。考えちゃだめ、やばい――! 他の事ッ。ほかの――寿限無(じゅげむ)寿限無五劫(ごこう)の擦り切れ海砂利すいぎょのアトナンダッケ――!


「急に思考にブロックかけてくるなんて、なかなかヤル猫だね」


 ……へ? そんな事してないよ?


「してないってのかい?」


 再びコクコク頷く。もしかしてアレかな、赤い星がブロックしてくれてるのかな。


「聞こえたり聞こえなかったり、不思議な猫だねぇ」


 フェニックス姐さんが、じーっと見つめてくる。


 やーめーてぇぇぇ。嘘がつけない性分なんです。

 じっと見られたらそっちしか考えられなくなるんですー!


「あんた……。ややこしい呪いを掛けられてるみたいだね」


 わかるの?


「これでも四聖獣の――……ってそれはいいか。あんたみたいなヤヤコシイ生き物は好きだよ」

「あら。それじゃあ、分けて頂けるのね?」


 女王様が祈りのポーズのまま片目を開けて嬉しそうに声を掛けてくれる。


「ふん。最初からそのつもりで呼び出しておいて、白々しいったらないよ」


 フェニックス姐さんがふわりと飛んで、私の前に着地した。


 ……あ、ほんとだ。近づいても熱くないわ。焼き猫は美味しくないもんね。きっと。

 あれ? でも私鳥の羽生えてるから、もしかして胴の部分は鶏肉になってたりするのかな?


「……ブッ。あはははは! ほんっと可笑しな猫だね。ほら、餞別だよ。持って行きな」


 目の前に、フェニックス姐さんの飾り羽が一本落ちてきた。


挿絵(By みてみん)


 えっ。フェニックスの尾って、こんなにすんなり頂いていいの?

 ヒビキにじゃなくて、ただの猫の私が?


「あっちの、いかにも神の祝福を受けてます~みたいな存在は、わたしみたいな捻くれモノには、背中がかゆくなるのさ。ほら早くしまっときな」


 ありがとう!


 フェニックス姐さんに心の中でお礼を云って、大切に空間収納に入れる。


「軽い状態異常なら、王サマの角の粉と妖精のキノコで充分だけどね。全身が完全に石化しちまったような重度の異常とか……怪我なんかでおっ()んじまった時には、わたしの尾が効くのさ。1回しか使えないからね。大事に使っとくれ」


 こくこく頷く私のおでこを、嘴でツンツンと突きながら説明してくれた姐さんが、ふぃと顔をあげて女王様に向きなおった。


「さて。女王サマ、そろそろ辛いんじゃないのかい?」

「あら。バレてましたか」

「何年付き合ってると思ってるのさ。ほら、早く祈りを解除しな。どーせ、あと数年もすればまた会うんだから」

「……また、宜しくお願いしますね」


 フェニックス姐さんと女王様が見つめあう。

 女王様が祈りのポーズを解除すると、フェニックス姐さんの姿がおぼろげになり……空気に溶け込むようにして……消えた。


「さて。ヒビキにはもう予想がついているのでないかしら?」


 まるで宿題の答え合わせをしようと云うかのように、問いかける女王様。


「……竜王が『勇者』に屠龍(とりょう)された後、フェニックス姐さんに生まれ変わらせて貰ってたって事ですか?」

「正解です」


 フェニックスの尾による蘇生では、魔素の取り込みすぎによる体の腐敗は癒せないらしい。

 その為、()()()()()()転生の炎に焼いてもらって、蘇生するのだと云う。

 転生の炎は、フェニックス自身の蘇りの時にしか使えない為、姐さん自身も毎回二人と一緒に転生しているのだと。

 本来なら自分にのみ使う炎なのに、王様と女王様も一緒に燃やす為に、フェニックス姐さんの負担は相当大きくなるらしく、転生した後数年間も眠りにつく事になるらしい。


「ヒビキ……?」


 何かを考え込んでいたのだろう。下唇から血がにじんでいた。

 ヒビキの下唇を優しく親指で拭って、微笑みかける。


「貴方が気に病む事は何もないのです。ただ、私達の事は心配しないで欲しかっただけ」

「でもっ」

「優しい子……。大丈夫。貴方は貴方の思うように生きなさい」


「ドワーフのお爺ちゃん達にはお酒でしょう? 私には……そうね。美味しいワインをお願いするわ。小さい子達には、珍しい食べ物をお願いね」

「……王様には?」


 聖母のような微笑みが、一瞬で般若に変わる。

 ……ほんと、なにやらかしたんだ王様。


「あの人には鉄の処女(アイアン・メイデン)で良いんじゃないかしら」


 うふふと笑う女王様。目が笑ってない。怖いです。


「さぁ、ヒビキ、オカン。そろそろ出発しないと」

「はい」


 非常に締まりのない、しんみりとする事もない別れだけれど、こういうのも良いかもしれない。

 

 ……勇者が竜王を倒すまでの間、弱っている生き物を助けつつ、各地の”美味いモン巡り旅”希望に一票を入れたいけれど。

 ヒビキのあの顔……絶対『世界樹復活』を目標にしてるよなぁ。

 できるだけ、”苦難さん”や”試練さま”とはお会いしない事を祈りつつ。


 さぁ! 出発だー!



ここまでお付き合い頂きありがとうございます。


皆様からのアクセスやコメント、ブックマークを頂いたり評価を付けて頂く度に、すごく励まされてここまで来られました。


次話からは、新しい章に突入します。

今後も、ほっこり、のんびり珍道中を目指して綴ってまいりますので、ご愛読頂けると幸いです。


文中の、すばらしいフェニックス姐さんを描いて下さったのは

猫屋敷たまる 様です。

https://mypage.syosetu.com/1751619/



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ちなみにジャック兄さんは、帰ってきたウルトラマンです(ォィ [一言] どうせ生きるならば、世界を変える気で生きなければ。 ヒビキ、やったれ! そして感謝されたら「鍛えてますから!」と…
[一言] ほんわかいいお話ですね (*´▽`*) のんびりよんでます~♪
[良い点] さぁここから物語は始まる!って感じの、第一章の締めとして最高に良い流れですね! 途中にあった、ヒビキのオカン語りにホロリとさせられました。 ヒビキ、ちゃんとオカンの事見てるやん。 異世界…
2020/07/20 21:26 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ