35★行ってきます
やっと1章最終話まできました!
お話の途中に、頂いたFAがあります!!
つた草で編まれた長テーブルが燃えやしないかと、ハラハラして見守っていたけれど、どうやら大丈夫らしい。
「姐さ~ん!」
ピーちゃんが、フェニックスの首に抱き付いた。
「おぉ。久しぶりだねぇ。バカ娘。100歳になった途端、飛び出して行ったって聞いたよ。あんまり女王に心配かけるんじゃないよ」
「はぁ~い」
おぉ。ピーちゃんがしおらしくしてる所なんて珍しいな。
なんだかんだ、女王様や王様にも気安い感じで話してるしなぁ。
……ってか、ピーちゃん熱くないのかな?
「四六時中ボーボー燃えてるワケじゃ無いさ」
……え? 考えてることがわかるの?
「これでも聖獣の一端だからね。そこいらの魔物と一緒にしないでおくれな」
エスパーなフェニックス姐さんの言葉に、コクコクと頷く。
やばい、私の脳内NGワードが多いから気を付けないと……
特に母お……げふんげふん……やばい、考えたらダメだと思うと、そっち方向に意識が向いちゃう!
は……はダメ。考えちゃだめ、やばい――! 他の事ッ。ほかの――寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利すいぎょのアトナンダッケ――!
「急に思考にブロックかけてくるなんて、なかなかヤル猫だね」
……へ? そんな事してないよ?
「してないってのかい?」
再びコクコク頷く。もしかしてアレかな、赤い星がブロックしてくれてるのかな。
「聞こえたり聞こえなかったり、不思議な猫だねぇ」
フェニックス姐さんが、じーっと見つめてくる。
やーめーてぇぇぇ。嘘がつけない性分なんです。
じっと見られたらそっちしか考えられなくなるんですー!
「あんた……。ややこしい呪いを掛けられてるみたいだね」
わかるの?
「これでも四聖獣の――……ってそれはいいか。あんたみたいなヤヤコシイ生き物は好きだよ」
「あら。それじゃあ、分けて頂けるのね?」
女王様が祈りのポーズのまま片目を開けて嬉しそうに声を掛けてくれる。
「ふん。最初からそのつもりで呼び出しておいて、白々しいったらないよ」
フェニックス姐さんがふわりと飛んで、私の前に着地した。
……あ、ほんとだ。近づいても熱くないわ。焼き猫は美味しくないもんね。きっと。
あれ? でも私鳥の羽生えてるから、もしかして胴の部分は鶏肉になってたりするのかな?
「……ブッ。あはははは! ほんっと可笑しな猫だね。ほら、餞別だよ。持って行きな」
目の前に、フェニックス姐さんの飾り羽が一本落ちてきた。
えっ。フェニックスの尾って、こんなにすんなり頂いていいの?
ヒビキにじゃなくて、ただの猫の私が?
「あっちの、いかにも神の祝福を受けてます~みたいな存在は、わたしみたいな捻くれモノには、背中がかゆくなるのさ。ほら早くしまっときな」
ありがとう!
フェニックス姐さんに心の中でお礼を云って、大切に空間収納に入れる。
「軽い状態異常なら、王サマの角の粉と妖精のキノコで充分だけどね。全身が完全に石化しちまったような重度の異常とか……怪我なんかでおっ死んじまった時には、わたしの尾が効くのさ。1回しか使えないからね。大事に使っとくれ」
こくこく頷く私のおでこを、嘴でツンツンと突きながら説明してくれた姐さんが、ふぃと顔をあげて女王様に向きなおった。
「さて。女王サマ、そろそろ辛いんじゃないのかい?」
「あら。バレてましたか」
「何年付き合ってると思ってるのさ。ほら、早く祈りを解除しな。どーせ、あと数年もすればまた会うんだから」
「……また、宜しくお願いしますね」
フェニックス姐さんと女王様が見つめあう。
女王様が祈りのポーズを解除すると、フェニックス姐さんの姿がおぼろげになり……空気に溶け込むようにして……消えた。
「さて。ヒビキにはもう予想がついているのでないかしら?」
まるで宿題の答え合わせをしようと云うかのように、問いかける女王様。
「……竜王が『勇者』に屠龍された後、フェニックス姐さんに生まれ変わらせて貰ってたって事ですか?」
「正解です」
フェニックスの尾による蘇生では、魔素の取り込みすぎによる体の腐敗は癒せないらしい。
その為、腐った肉ごと転生の炎に焼いてもらって、蘇生するのだと云う。
転生の炎は、フェニックス自身の蘇りの時にしか使えない為、姐さん自身も毎回二人と一緒に転生しているのだと。
本来なら自分にのみ使う炎なのに、王様と女王様も一緒に燃やす為に、フェニックス姐さんの負担は相当大きくなるらしく、転生した後数年間も眠りにつく事になるらしい。
「ヒビキ……?」
何かを考え込んでいたのだろう。下唇から血がにじんでいた。
ヒビキの下唇を優しく親指で拭って、微笑みかける。
「貴方が気に病む事は何もないのです。ただ、私達の事は心配しないで欲しかっただけ」
「でもっ」
「優しい子……。大丈夫。貴方は貴方の思うように生きなさい」
「ドワーフのお爺ちゃん達にはお酒でしょう? 私には……そうね。美味しいワインをお願いするわ。小さい子達には、珍しい食べ物をお願いね」
「……王様には?」
聖母のような微笑みが、一瞬で般若に変わる。
……ほんと、なにやらかしたんだ王様。
「あの人には鉄の処女で良いんじゃないかしら」
うふふと笑う女王様。目が笑ってない。怖いです。
「さぁ、ヒビキ、オカン。そろそろ出発しないと」
「はい」
非常に締まりのない、しんみりとする事もない別れだけれど、こういうのも良いかもしれない。
……勇者が竜王を倒すまでの間、弱っている生き物を助けつつ、各地の”美味いモン巡り旅”希望に一票を入れたいけれど。
ヒビキのあの顔……絶対『世界樹復活』を目標にしてるよなぁ。
できるだけ、”苦難さん”や”試練さま”とはお会いしない事を祈りつつ。
さぁ! 出発だー!
ここまでお付き合い頂きありがとうございます。
皆様からのアクセスやコメント、ブックマークを頂いたり評価を付けて頂く度に、すごく励まされてここまで来られました。
次話からは、新しい章に突入します。
今後も、ほっこり、のんびり珍道中を目指して綴ってまいりますので、ご愛読頂けると幸いです。
文中の、すばらしいフェニックス姐さんを描いて下さったのは
猫屋敷たまる 様です。
https://mypage.syosetu.com/1751619/




