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24.竜王と『勇者』

きりの良い所までと思い、次話が短かったのもあって、いっそ2話をまとめて縮めようとしてみたのですが、力及ばず初の3400字超えになりましたorz

後半、少しだけお腐れ表現が入ります。苦手な方はご注意くださいね。

 隣と向かいに座る、お子様二人は爆笑し。

 左側のお誕生日席にすわる女王様は、両の指を絡ませた手の甲に顎を乗せ、しっかりと口角を上げて微笑んでいる。

 右側のお誕生日席にすわる王様は、目と鼻と口だけ白馬であとは人間。

 小さい妖精達の歌うBGMが、乱舞する光と共にエンドレスで流れ。


 カオスすぎる。……胃に穴が開きそう。


 目だけを動かして、女王様を見、王様を見、隣で過呼吸起こしそうなほど爆笑してるヒビキを見。

 どーすんのこの空気と思いながら、目を閉じる。


 たっぷり三秒かぞえてから目を開けると、女王様と目があった。

 

「私ったら……。気が付かなくて、ごめんなさいね」

 天女のような微笑みに変わった女王様が、絡ませていた指の内、右手の一人差し指だけをツイ、と上げる。


「あばにゃばにゃにゃにゃ!」

 座っていた椅子の足が急に伸び始めたので、変な声がでたっ。

 ずもももも、と伸びる椅子の足は、座面がテーブルと同じ高さになると、ぴたりと止まる。


 向かいに座っていたピーちゃんの椅子も、同じ成長をしたらしく、座面に四つんばいになって拳でダンダン叩きながら、ひーひー笑っている姿が。


 ぺこりと女王様にお辞儀すると、ウインクで返された。

 別嬪さんのウインク。殺傷力高すぎぃ。


「ぬおぉぉヲ! 愛しのタイターニアよ、我にもウインクして欲しイ!」

 

 未だに”顔だけ馬”な王様がガタンと立ち上がって興奮しだしたので、ついていた肘をおろし、姿勢を正した女王様がひと睨み。

 またやらかした事を悟った王様が、しょんぼり座りなおしたのを見て、やっと笑いが引っ込んだヒビキとピーちゃんも、お行儀よく座りなおした。


 王様……燃料投下するの、頼むからやめておくれ……。


「さ。ヒビキ、オカン、召し上がれ。ピーちゃん、長旅ありがとうね。召し上がれ。」


 それぞれに割り当てられた飾り皿(ショープレート)の上には、池のそばで食べさせてもらった『思い浮かべた食べ物の味がする、マッシュルームのような見た目のキノコ』が、いつの間にか乗っている。

 これまたいつの間にか置かれていた、真珠色の葉っぱで作られたゴブレットには、菩提樹の朝露がなみなみと注がれていた。

 そして、大皿の上にも山盛りの妖精キノコが。


 これがホントのキノコづくし。

 しょうもない”おばさんギャグ”を脳内で展開しつつ、「いただきます」とヒビキと二人で手を合わせた。


「ごハン~」

「ゴハ~ん!」

「わーイ」


 小さい妖精達が飛んできて、一人一つずつ、大皿の上の妖精キノコを抱き抱えるようにして取っていく。

 なるほど。大皿のキノコは小さい子達の為のものだったのかーと、得心が行った。


 銀色の枝に腰かけて、小さなお口で妖精キノコを頬張る小さな子たち。

 ……か、か、かわええ!

 ポケットに入れて、連れて歩きたい! ……ポケットないけど。


「カれ~うま~!」

「グラタん、うマ~!」

「フライどぽてトーンさいこ~」


 ……ん? 小さい子達が口ぐちに騒ぐ、『思い浮かべた食べ物の味』に、ビックリする。

 こっちの世界にも、カレーとかグラタンとかあるの?!


 100歳を超えた”ちょっとだけお姉さん”な妖精が、外の世界へ遊びに行った時に、お土産として持って帰ってきてくれるので、味を知っているらしいが。

 ……突っ込みどころが多すぎて、理解が追いつかない。


「100歳にならないと、結界の外の世界に出かけられないのよ~」


 ピーちゃんが補足説明をしてくれた。……が、ん?ちょっと待って。それってつまり。


「ピーちゃんって、100歳なの?!」

 ヒビキが尋ねる。だよね、そーなるよね?

 ちっ、ちっ、ちっ、と人差し指を軽く振ったピーちゃんが、「102歳よっ」と胸をはって云う。

 

「えええぇぇぇえ!」

 口に入れようとしていた妖精キノコを、落っことしそうになりながら、ヒビキが大声をあげた。


 王様を追い出した翌年から、魔素が結界を超えてくるようになり。

 侵入した分の魔素を、無理に体に取り込んで浄化を始めた女王様の体は、どんどんと弱っていく。

 左手の指先から斑に腐り始めたのを見て、すぐにでも外へ何かアイテムはないかと、探しに行きたかったらしいのだけど。

 100歳になる前の成熟していない体で、結界の外に出ると、たちまち崩れ落ちてしまうという。

 

 王様と二人で浄化を行っていられたら、相乗効果?が生まれるらしく、女王様一人で行うソレの、三倍の浄化効果を出せるらしい。

 王様が、最初の3年で帰ってきてくれていれば、女王様の左手もあそこまで腐らなかったし、なにより結界の外で死にかける事もなかったのだ。


 そりゃ、ピーちゃんも、女王様も怒り心頭になるよね。


「そろそろ()()頃かしらとは思っていたのだけれどね。あと3年程度なら大丈夫だと思ったのよ」


 この世界は大体450年~500年周期で、魔素が濃くなる時期が来る。

 そして、魔素が濃くなる毎に『勇者』が現れて、苦難の旅の果て屠竜(とりょう)し、大気の状態を、魔素が濃くなる前に戻してくれるという。


「竜を倒しただけで、なぜ魔素濃度が戻るのですか?」

 

 おおぅ。さすが()()()()のヒビキ。

 色んなファンタジーもののゲームや読み物を共有してきたけれど、”面白ければ良い派”の私とは対照的に、”矛盾点が気になる派”かつ”隠し設定も調べたい派”のヒビキが、即座に大気の矛盾点を突く。

 危ない。『竜を倒したら、大気が治るんだー。さすが勇者!』としか思ってなかったよ。


「竜王が、世界樹をブレスで焼いたのは知っているかしら?」

「ピーちゃんが、教えてくれました」

「そう……。世界樹を焼いた竜王はね、失われてから知ったのよ。”世界樹がこの世のすべての魔素を浄化してくれていた事”を。後悔からか、懺悔からか、改心したのかは判らないけれどね。その後の竜王は、己が身を賭して”世界の三分の二の魔素”を浄化するようになったの。その膨大な魔力を使って、ね」

「え。でも、そんな事をしたら、竜王は……腐る……」


 よく気付きました、と、小さく頷いた女王様が続ける。


「竜王が”大気の浄化”をしている間、残りの三分の一程度の魔素量なら、魔力の強い生き物が”無意識に行う浄化”で、なんとかバランスを取れるのだけどね。」


 ここまでネタバラシをされたら、鈍い私でもさすがに判ってきた。


「つまり、竜王が腐り朽ち果てる事なく”三分の二の浄化”をできる周期が、450年~500年程度って事ですね? でも、それなら屠竜(とりょう)しただけで、大気が戻るのはなぜですか?」


「竜王はね、消滅しないの。新たな竜王となって復活して、また”三分の二の浄化”を始めるわ。竜王は生前の記憶を受け継ぐから、新な命となっても”世界樹の代わりに浄化する”己の使命を全うするの」


「……永遠に?」

「……そうね。きっと、永遠に」


 勇者が竜王を屠竜(とりょう)した後、体内に蓄積されて濃縮された魔素と、その場に腐り落ちていた竜王の肉を浄化する為に、”世界樹のしずく”を振りかける必要がある。


 450年以上の長きに渡って、竜王の巨躯を使って濃縮し、凝縮し、醸され続けた魔素の毒は、小瓶程度の『世界樹のしずく』では、妖精の王様の時のような効果はもたらされない。

 ……屠竜(とりょう)するしか、ない、のだそうだ。

 

 だから、神様より『職業:勇者』を与えられた者は、もれなく『世界樹のしずく』を持っているらしい。

 神様のけちくされ……。 竜王助けるぐらいの量を、ばばーんと勇者に持たせてあげたらいいのに!


「だから、てっきりヒビキが『勇者』だと勘違いしてしまったの。ごめんなさいね、ヒビキ」


 いきなりのダークな展開に、心がついて行かないのだろう。首を横に振るヒビキの手が、少し震えている。


「ちなみに、”カレー”とか”グラタン”とか”フライドポテト”は、前回の勇者様が作ってくれたのよ! あとね、すーっごくタマにだけど、『勇者』以外にも、神様に気に入られた子供が『世界樹のしずく』を貰ってる事もあるんだからね。むしろワタシが探していたのは、勇者以外で『世界樹のしずく』を持っている人だったんだからね!」


 ”じめっとした空気撲滅隊長”のピーちゃんが、努めて明るく話してくれる。


 竜王が世界樹を破壊してから、すでに3人の勇者が現れていて、中でも3番目に現れた『勇者』は、色んな”新しいモノ”を生み出した事から、一番人気が高いらしい。

 特に、ここから北東に位置する『賭博の街』では、神様と同等に親しまれているそうな。


 たぶん、いや間違いなく、その『3番目の勇者』は地球から来ていると思う。

 500年近く前の人だから、会える事は無いだろうけど、他にどんなモノをもたらしたのか興味はある。ただ、『賭博』は、まだまだヒビキには早い。


 ……できるだけその街には行きたくないなぁと思う母ちゃんであった。





 

 

 

 

誤字報告、ありがとうございます!!

投稿して頂いた方のお名前がでて来ないので、個別に御礼申し上げに行く事ができなくてすみません。

あんなに見直ししてた筈なのに、結構な数あって……、

私の脳みそは、やはり信用できないと思いました。

投稿、ありがとうございました

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