表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/167

15.『世界樹のしずく』の効果

※あと少しだけお腐れ表現が続きます。苦手な方はご注意ください

「ピーちゃん! 『世界樹のしずく』ってどのぐらい飲ませればいい?」

「ティースプーンに半分ぐらい!」


 ヒビキが、ぜぃぜぃと荒い息を吐く馬に近寄りながら、右手で空間に円を描き、『世界樹のしずく』が入った小瓶を取り出した。

 素早く小瓶の蓋を開けると、半分腐り落ちている馬の口に、ためらう事なく手を差し入れ小瓶を傾けてしずくをたらす。


 すぐに、馬の体がほんのりと金色に輝き始めた。


 荒かった息は穏やかになってゆき、斑に腐っていた体表は、まるで時間が逆戻りしているかのように、モリモリと筋肉が生まれ、正常な皮膚が生えてゆく。

 

 金色の光が消えた後には、神々しいオーラに包まれた白馬がいた。


「王様! おうさまぁぁぁぁ!!よかったぁぁぁぁ!」


 白馬の顔面……目と目のちょうど中間あたりに張り付いたピーちゃんが、縋り付いて泣いている。


「ギリギリ……ト言ッタトコロカ。人ノ子ヨ。感謝スル」

「いえ。俺は何も。神様から貰ったものを御裾分けしただけですし。それより、ギリギリとは?」


「『世界樹のしずく』ヲ飲ムノガ、アト数時間遅ケレバ、我ハ全身ガ腐リ落チテイタ」

「……間に合ってよかったです」


 一気に緊張がほぐれたのか、ふぅ、と息を吐きながらその場に座り込むヒビキ。

 王様の顔面に、涙と鼻水をしこたま塗りたくっていたピーちゃんが、慌てたようにヒビキの元へ飛んできた。


「無茶させてごめんね。覚えたばかりの結界を張ったまま全力疾走させちゃったから、相当キツイでしょ?」

「大丈夫だよ。ただ……ちょっと……今は立てそうにないかな」


 スルリとヒビキの肩から降りた私が、恐る恐る白馬に近付くと、「チッ」と舌打ちされた。


 え? 今舌打ちしたよね。なんで私嫌われてるの?


 しょんぼり引き返し、ヒビキの膝の上で丸まって箱すわりする。

 私の背中をもふりながら、ヒビキがぼそりと呟いた。


「お腹すいた……」


 そういえば、夕食の支度をしている最中に、この世界に飛ばされたのだ。

 そりゃお腹も空いているだろう。


 白馬が大きく息を吸い込み、ふぅーっと吐き出すと。

 あたりに散らばっていた吐しゃ物の残骸が、みるみる水気を失ってゆき、サラサラと空中に舞い上がると、一瞬だけ虹色に輝いて消えた。


「人ノ子ヨ。我ノ背ニ乗ルガヨイ」


 白馬な王様が四肢を折ってしゃがみ込む。

 よほど疲れているのだろう。 四つんばいでよたよたと移動したヒビキが、ひどく緩慢な動作で王様の背に跨ろうとして、すぐそばに落ちている角に気が付いた。


「あ……。王様の角……」


 『世界樹のしずく』で腐った体は元通りになったが、落ちた角だけは失われたままだった。


「ヲヲ、忘レル所デアッタ。心配ナイ。角ハマタイズレ生エテクル。落チタ角ハ、礼ノ代ワリニ受ケ取ッテ欲シイ」

「ありがとう」


 落ちている角を拾い上げ、右手をくるりと回して出した空間収納に入れている。


「オカン、おいで」


 私を左肩の定位置に乗せると、のろのろと王様の背に跨った。


 角……また生えてくるって事は、やっぱり王様ってユニコーンなのかな。

 

 背に乗せたヒビキの負担にならないように、ゆっくりと立ち上がった王様が歩き始める。

 ピーちゃんは、王様の頭の上に胡坐をかいて、手綱よろしくタテガミを掴んでいた。


 ……どっかで見た光景だな。


 軽くデジャブを感じていると、「コレ。引ッ張ルデナイ。地味ニ痛イ」と、これまたどこかで聞いたセリフを言われていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なぜに嫌われてんの!?(゜Д゜;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ