表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/167

149.賞金ゲットだ!!

 ドーン!!

 ドーン!!


 ファンファーレと共に、小さな花火が無数に打ち上げられて、カイ君の健闘を讃えているなか。


 観客からの歓声に手を振っていたカイ君が、スタッフさんに誘導されて、三階から階段を降りてくる。


「ヒ~ビキ~! 俺、頑張った~~!!」


 二階に到着した途端、小走りになると、嬉しそうにヒビキに飛びついた。


「うん! すごい格好よかったよ!」


 ぶんぶんとしっぽを振るカイ君を、抱きしめるヒビキ。

 

「ちょっと! カイ! 私が居るんだから、すぐにヒビキに飛びつくのやめなさい。つぶれちゃったらどうすんの」


 カイ君が駆けだしたのを見た途端、いち早く飛びのいて、難を逃れたピーちゃんが、お母さんモードを炸裂させたけど。


 いしししといつもの笑顔を見せて誤魔化すカイ君に、『しかたないなぁ』といった感じの笑顔で見つめたピーちゃんが、思い出したようにお嬢様に振り向くと。


「『そんな賭けしてない』なんて、言わないわよね~?」


 水着のレースのすそを握りしめ、カイ君を睨みながら、怒りに震えているお嬢様に、勝ち誇ったように口を開く。


 ギッとピーちゃんに視線を移したお嬢様は、目に涙を浮かべて、下唇を噛み、小刻みに震えている。


 今にも目から零れ落ちそうな涙を、必死に堪えている様子に……。

 なんだか、小さい子を虐めている気持ちになってしまう。


 さすがに……お灸がきつ過ぎたかな……。

 ピーちゃんに、『これ以上お嬢様を煽らないで……』と伝えようかな、と思った矢先。


 プルプルと震えるお嬢様が、口を開いた。


「賭けは賭けよ。なかったなんて……言わないわ……。でも……覚えてなさいよ!!」


 お嬢様の恨み言に、腕を組んだピーちゃんが追い打ちをかける。


「『付きまとわない』って言ってなかったっけ~?」


 ぐっと詰まったお嬢様が、いっそう強くレースを掴んで叫び返してくる。


「ね……猫をよこせとは言わないって意味よ!」


 あ。全然反省してないな。

 でも、賭けを無かった事にはされないようだ。


 アトラクションの受付でも、”お嬢様特権”を振りかざして、割り込みさせる事もなく、一言の文句も言わず、ちゃんと順番を守っていたし。


 度を越えた我儘は云うけれど、負け博打をひっくり返さず受け止める……本人なりの矜持は持っているようだ。

 

「猫を渡したくなったら、いつでも館へいらっしゃいな!」


 こめかみに、青い癇癪筋を走らせながら捨て台詞を吐くと、後ろで控えていたメイドさん達に顎で指示を出す。

 そのまま、振り向くこと無く、一階へと続く階段へと足早に移動して行った。


「何を仕掛けてくるつもりかしらね~」


 お嬢様達の背中に向かって、あっかんべをしたピーちゃんが呟く。


「街に居られなくしてやるって云ってたよなぁ?」


 しがみついていた手を放し、のそりと降りたカイ君も、うんざりしたように頭を掻いている。


 「まぁ……。とりあえず、様子見しようか」


 苦笑いしながら囁くヒビキに、二人が頷くと。


「お話し中すみません。あの……。あちらへどうぞ……」


 カイ君を誘導してくれていたスタッフさんから、実況席へ行くようにと促された。





””クリア者が出た為、ドキドキ★難攻不落城は、一時間後に再開します””


 流れたアナウンスに、挑戦の順番を待っていた人たちから、


「お手柔らかにな~!」

「あんま、ヤバイのはやめてくれよ~!」


 と、声が上がる。


 ……ん? お手柔らかに? ヤバイの?


 声かけの意味が分からず、四人できょとんとしていると。


「クリアした方が、ステージの難易度を上げる場所や、数を決められるのですよ」


 実況席でアナウンスをしていた男性が、ステージの簡単な配置図を広げながら教えてくれた。


「ちなみに、前回のクリア者が指定したのは、”消える丸太”でした」


 ただでさえ不安定な足場を消させるって、すごい発想だなぁ……。


「ン~~……」


 配置図を見たカイ君が、何か悩んでいるようだ。


「あの丸太全部を、”消える丸太”にしちゃえば~?」


 いたずらっこピーちゃんが、トンでもない事を云いだしている。


 そんな仕掛けに変えちゃったら、この先クリアできる人いなくなるよ?!


「ピーちゃん、さすがにそれは極悪すぎるよ……」


 ドン引きしているヒビキに、「ヒビキ、ちょっと相談~」と云ったカイ君が、なにやら耳打ちした。


「うん。カイがそれでいいなら、いいよ」


 にっこりと笑ったヒビキに、安心したように息を吐いたカイ君が、実況のお兄さんに……。


「難易度、そのまンまにしてて欲しいンだけど、ダメか~?」と、云った。


「可能ですが、その場合……受け取る賞金が、半分の大金貨一枚になりますよ?」

  

 ちらりと見てきたカイ君に、こくりと頷いたヒビキは、「カイの好きなようにしていいよ」と返事をしている。


 今の難易度になってから、二年間も攻略者がでなかったらしいし。

 カイ君も、ヒビキの名付けで身体能力があがっていなければ、おそらく無理だっただろうし。

 それなのに、さらに難易度を上げてしまうのは、さすがに良心が痛むってモノよねぇ……。


「うン。それでいい~」

「それでは、賞金半分の大金貨一枚と、お嬢様との賭け分の、金貨十枚と宝石箱をお受け取り下さい」


「オカン、お待たせ」

 

 ヒビキが、そっと私を抱き上げたのを見たカイ君も、ほくほくした笑顔で景品を受け取る。


「あと、こちらのチケットもお持ちくださいね」

「ン? なンのチケットだ~?」


 両手が塞がっているので、すぐに受け取れないカイ君が尋ねると。


「四階にある、家族風呂のチケットです。難易度を上げない攻略者の方に、お渡ししているんですよ」

「やった~~~!!!」


 実況のお兄さんが差し出したチケットは、ピーちゃんが大喜びで受け取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ