黒青の双穿刃という機体(side 敵本部:研究部)
また来たの? あなた本当に物好きよね。私が休みが終わった直後に来ては話を聞くなんて。
私はそこに人が居る様な、感覚があり。心の中で話しかけては特に返事も返ってこない。
不思議な感覚だ。
「また、何考えてるんですか?」
「今……いえ、何でもないわ」
私はそう言って、回転椅子に座って足を組む。メガネを正すと、改めて今回の機体について資料を見た。
戦況の多くをその機体に投下している筈なのに、尽く全滅……そして肝心の敵の機体は無傷。
あり得るだろうか? 1分1秒ですら、戦場は危ないというのに……1つも傷がついていない。
私達研究者が、一番目を背けたくなる機体。
青黒の機体で、半身共に不釣り合いの……黒青の双穿刃、それは何と言って良い分からない。変な例えならば……異質だ。
乗っているのは2人だと言われている。言われてると言ったのは、この機体に出会って生き残った者が1人だけだからだ。
サアランド、反旗を起こしたらしいが元々彼はこっちに居ても退屈しているようだった。
どんなに話しかけても、返ってくる言葉は「俺は1人で十分だ」とかしか言わない。
彼が元々あっち側だろう。
それは予感していたし、だからといって止めようとも思わなかった。
……話が逸れたわ。
「一番の特徴といっては、あの2つに別れる所ですよね!」
私が考えている間にも、彼女がキラキラした様子で資料を見ている。
この機体は、2つに別れる……これこそどういう原理で動いているんだという物だ。燃料であっても、2つ積んでしまっては機体が重くなる。そもそも、別れた後片足なのに傾けては高速に動く。
ワイヤーで互いを繋ぎ引き寄せては、飛ばす。
ワイヤーと言っても、他の亡霊の様な作りでなく……飛ばしてその場で硬直させては、硬い棒の様に繋いだ片方の機体を投げることも可能。
ただ一言、意味がわからない。それは研究者にとって一番ダメな発言であることも分かる。だが、現実問題分かる訳がない。
繋げるにしても、互いの意思が繋がっていないと不可能と言える。何をして何を成すのか、それは双子以上の、全てに置いて繋がっているのではないか。
「私達2人が乗れば行けるんでしょうか?」
「無理でしょうね、飛ばしたとしても動きがついていけないし。話合いをしなければならないもの」
不可能だと、言うしかない。
次は機体程の大きさのブレードと……銃、なのだろうか?
射出杭の様な原理で飛ばしているようだが、構えている様子を見てもどう放っているのか分からない。
ブレードは苦も無く機体を両断する切れ味、しかもそれを軽々と片方の機体だけで動かす。
もう、本当よくわからないわ!
それだけしか言うようも無いし、原理を調べようにもデータが無い。
「ブレードって、軽いんでしょうか」
「軽いんでしょうね、ただどういう素材なのかも不明ね」
そして、一番悩ませたのが……リミッター解除。
ダブル……それを意味するのは、機体が2つになるという事なのではないか?
それじゃあ、どうやってその体を出すというのか? そういう方法なんて考えたことも無いし、実践しようとも思わない。
いや、もう考えるのはよそう……何か言いたげに見てくるけど、私は理解不能を……解析出来るほど天才ではないのよ。
私は静かに溜息をついた。




