始まりの戦場事(いくさばごと)
「倒しても倒してもキリが無さすぎ!」
そんな愚痴ともいえる言葉を発している主といえば、体とほぼ同じぐらいの長さの長剣を、まるでそこらの木の枝を振り回すかの如く片手で振り回しながら、鎧甲冑に身をまとった兵士といえる人たちの武器を破壊してから、大空へと吹き飛ばしていた。
「そりゃ、一応ここは戦場だからね、相手も下手に死なない様に必死だし・・・」
そういう自分はというと、愚痴をこぼしながらも好き勝手に大剣をぶん回している風にしか見えない存在と、自分自身へと迫りくる飛び道具と攻撃系の魔術を、つぶさに魔術障壁を作り上げては防いでいた。
そんなこちらの影の労力を行いながらも、まるで関係ないかのように武器を壊しては吹っ飛ばしている人物へと言葉を返しながらも、そんな行動を行っている人物に対して"相変わらず理不尽すぎる"と感心を通り越して呆れてしまっていた。
なにしろ、吹っ飛ばす相手の武器を、正確に武器としての機能を失わせてながら行っているのだから。
ただ、先ほどから、その大きな長剣を片手で振り回して相手の武器を壊しながらフッ飛ばしを行っている人物の発している言葉には、だんだんと苛立ちともいえる感情が見え始めていた。
見え始めるというか、"だだ漏れ"といった方が正しいのかもしれないが・・・
そろそろ精神的な爆発が起きる前に、落ち着かせるようと"手を打たないと不味いかなぁ"と思っていた矢先
「もう、めんどくさい!!思いっきり行く!!」
「えっ?ちょっとまって!!‥‥‥って、もう、いないし!!」
こちらが"その行動"を止めようと、大きく愚痴とも呼べる言葉を叫び出した先へと振り返ってみたが、その叫んだ相手はといえば、とうにその場から消え失せており、その消え去った先がどこなのかと視線を巡らせ・・・探してみる必要がなかった。
移動した方向が、はっきりと解るのがせめてもの救いかもしれない。
なにしろ、その進行方向と思われる上空に、一人ずつ飛ばされたいたモノが、二人ずつ、三人ずつと徐々にその数が増えていき‥‥‥
そうして、ついには赤い布を巻いた兵士たちも上空に吹き飛ばされている恰好となっていた‥‥‥って、
「あれだけ、赤い布を巻いた兵士は、味方と言っておいたのに‥‥‥」
一応、混戦となる事が予想されていたために味方陣営としての目印として、赤い布をその腕に巻かせていたのだが、その味方の目印がついている兵士も含め"そんなことは知らない"とでもいうぐらいに、敵味方関係なく空に飛びはじめていたりする‥‥‥
「この後始末って、誰がするんだろう……」
こちらに飛んでくる矢弾を防ぎながら、そう本音がついうっかいと口から漏れ出てしまうほどに、こんどは宙に舞い始めている人たちの中に"ひときわ豪勢な鎧甲冑を着込んだ存在"が空に飛び上がったりし、さらにいうなれば、その空に舞っている数が増えてくるにしたがって、赤い布を巻いている人たちと、そうでない人たちが均等に混ざりだしているのが散見し始めると、もう、その後始末の行方を想像したくないと思えてくる。
「うん、その後始末役、自分じゃない事を祈るよ……」
希望的な、または願望ともいえる言葉が自然と口からこぼれだし、さらにはお腹の中央あたりからキリキリとした痛みを感じながら、あの竜巻災害ともいえる存在の巻き添えにならない様、その災害が吹き荒れている方向とはまったくの反対となる、味方陣地の方へとその身を隠すように移動していった。




