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塊達は今日も一定方向を向く

読んでくださったアナタに『崇拝』

 ワールドボス『光喰みの魔女』が倒された後のコロセウムに、一つの大きな塊が出現した。


 ダン……ダン……ダン……ダン……ズコンッ!


 一定のリズムで刻まれる音と振動。それらを感知した周囲の雑魚モンスターは怯えて逃げていった。本来であれば見境なく襲ってくる魔物達が、あまりの異様な光景にステータス異常を発生させたのだ。


 ダン……ダン……ダン……ダン……ズゴンッ!


 カラフルな塊は、少しの乱れもなく、もはやマスゲームを思わせる完璧さを持って一定の方向へ進む。

 木々をなぎ倒し、岩を砕き、沼を埋め、果ては山を海を、地平線を真っ平らにしていくその塊を見て、誰かが言った。


 エクストリーム整地、と。





『ザ・フラットガイア専用連絡掲示板』

★ギルマスからのありがたいお言葉★

 我らは神の恩恵を受ける者として、また、整地を愛する者として大地の凹凸を滑らかなものとしなければならない。

 諸君、崇拝せよ。かの神は段差を恐れておられる。

 我は見た!

 かの神が舞のステップ中、僅か3センチの穴に足を取られて気絶するのを!

 たったの3センチぽっちしかない穴だ。いや、あれはもう穴ではなくただの窪みだった!

 だが神は転んだ! そして気絶した!

 やはり凹凸が危険であることは明白だ!

 大地は平面でなくてはならない!

 さぁ諸君『崇拝』しよう!

 そして己の頭で穴を埋めるのだ!

 大穴ならば土をかけよ! 水が溜まっているならば全て取り去ってしまえ!

 山を削れ、海を埋め立てろ、出る杭(、、、)のダンジョンを解体せよ!

 叩頭で世界を救え!!!

(原文ママ)



 M・我ながら頭狂った演説だよね

 S・いや、結構痺れましたぜ

 M・まぁうん言ってる最中は気にしなかったけど

 N・ギルマスかっこよかったですよ。オルフェ様の次に!

 S・うんうん

 N・だぬぇ

 M・おぉ、嬉しいねぇ

  サブマス、コロセウムの状況どう?

 S・概ね順調。

  でも筋肉、最後に余計なことしてくれちゃったな

  ギルマス、宿屋の修繕は?

 N・脳筋地面掘っただけだもんな

 M・まだかかりそうだねー。

  本業大工にここまで手を焼かせるとは

 S・建て直しした方が良いんじゃ

 S・流石ハデス(褒めてない)

 N・脳筋が攻撃する前にボス死んだしぃww

 M・大丈夫大丈夫

 N・どいつもこいつも地形破壊効果、大っすわぁ

 N・オラ気持ち悪くなってきた

 N・離脱許可されてるから休め

 N・そういう時は休むんだ!

 M・視界揺れるからね。ゆっくり休んでね

 N・一旦抜けて休憩するんだお

 S・休むんだー!

 S・離脱許可する

 N・初なんですけど僕も参加いいですか

 N・いいよいいよー!

 N・助かるぜ兄弟

 S・来てくれー!

 N・助っ人か

 S・初めてか。手順は分かってるか?

 N・えっと、凹凸の酷いところで叩頭?

 S・そうそう。初めてなら凸狙いで位置を決めよう

 N・スライディングは禁止な。あれ高等技術だから

 N・結構難しいよね、あれで整地するの

 S・勢い良すぎて微調整効かないからな

 S・コツは大地と頭の距離を把握する事だぜ!

 N・スライディング叩頭の生み親は一味違うな

 N・ありがとうございます

 N・初々しいのぅ

 N・だねー

 N・そのうち『崇拝』する前に神の方向が分かるようになる

 S・あれは何なんだろうな

 M・本当にね。スキルレベルによるのかねぇ

  ま、距離は分からないけどね

 S・ストーカーが増えるわけだ

 N・自警団頑張れ

 N・ストーカーが災害扱いワロス

 S・そういえばそうかw

 M・www

 N・いや災害だしねwwwwww

 N・ハデス(竜巻の名前)

 S・くそww

 S・ほらほらコロセウム組w

 N・陣形崩れてきたwwwwww

 N・タイミング合わせろぉおw

 S・『崇拝』

 S・『崇拝』

 N・『崇拝』

 N・『崇拝』

 N・『崇拝』

 N・『崇拝』

 N・『崇拝』

 N・『崇拝』

 N・『崇拝』

 M・便乗『崇拝』

  あっ

  あああああっ!!

 N・ギルマス神様と鉢合わせしたぁぁ!!www

 N・『崇拝』

 N・ギルマスwww死んwwwだwww

 N・wwwwww

 S・まじでwww

 N・くっそwwwくっそwww

 S・おいw

 N・腹が死ぬわ!!!

 


 宿屋から出た瞬間に『崇拝』されたので反射的に殺してしまったが、どうも宿屋専属の大工だったらしい。

 そも宿屋の一階を滅茶滅茶に壊したのはハデスで……つまり私ことオルフェウスの所為だ。出会い頭に殺してしまうなど、彼に申し訳ないことをしてしまった。


 彼のギルドメンバーが集団行動している最中らしいので、詳細な場所を聞いた上でバフをかけに行こうと思う。

 まだ狩りをしていると良いのだが。



 ファンタジーア古薔薇新聞・号外

『コロセウムの悲劇』


 その日、コロセウムの地面を頭で整地していた整地厨達が何者かに惨殺されるという凄惨な事件が発生した。武器の獲物は全て大型の鈍器とみられ、凄まじい火力で頭部を綺麗に粉砕されていたという。

 被害者全員が攻撃される前後に、その場を移動した形跡がほぼないことから、状態異常による拘束の使用も考えられる。


 整地厨の人数からして複数犯によるPKの犯行と見られたが、犯人は未だに特定されていない。

 それもこれも、当事者達が事件の犯人を決して語らなかったためだ。

 それどころか、何故か全員嬉しそうに、

「決して我らは口止めされているのではない」

 と話したという。

 これにより事件の危険性は薄いと判断され、この地区のPKK自衛団による調査は打ち切りとなった。

 事件の真相は闇の中だ。

真実はいつも一つ!

読了ありがとうございます。

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