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真実と真意

「彼には会えなかったわ。そして、これからも会えないわ。二度と。」

僕は言葉を捜していた。

「短冊のねがいごとが叶うなら。“もう一度会いたい”って。書くわ。」


駅まで歩く。

月明かりが2人を照らす。


「あのう。」

「なに?」

「ひょっとして、夏祭りであった小さな子って?」

「そう、たけし。皆と会ったのが、大学1年のときじゃあない。その時は、毅があのときの彼ってわからなかったわ。お兄ちゃんとは苗字も違うし、夏祭りで会ったといってもほんの僅かだったし。毅は色が黒くて体が大きいじゃない。お兄ちゃんを探していたときに毅がお兄ちゃんの弟だってわかったの。毅はお兄ちゃんの実の弟。おじさんが実の父親で、お兄ちゃんは姉さん夫婦に預けられていたの。」

少し、頭が混乱してきた。

「毅はカンナのこと?」

「わかっていると思う。”カンナ”って名前、そんな多くないもの。夏祭りのとき、お兄ちゃんは”カンナちゃん”って呼んでいたし。」

そういえば、毅が子供のころの話をしたのを聞いたことはない。

単に毅が口数が少ないヤツだと思っていた。

「弟だってわかったからかもしれないけど、似てるの、お兄ちゃんと毅。目が特に。だって実の兄弟なんだから、当然といえば当然ね。」

僕は、カンナの横顔をみた。

カンナは真っ直ぐ前をみて、話を続けた。

「毅はお兄ちゃんの分まで生きようとしているんだと思う。背負ってるのよ。」

「カンナ。」

「正直、毅のことを好きなのかはよくわかんないの。真実を知って、変に意識しちゃっているようなところがあるわ。毅にお兄ちゃんのカゲをみているのかもしれない。もしかすると、お兄ちゃんのカゲなんかじゃなくて、美化した自分の記憶に恋してるだけかも。」


「あ~あ、私、光のこと好きになればよかったなあ。」

駅の明かりが遠くに見えてきた。

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