告白
「そろそろ、帰ろうか。」
「たしか、前に話したよね。隣のお兄ちゃんこと。短冊に“お兄ちゃんのお嫁さんになりたい”って書いた話。」
カンナはブランコに座ったまま、話を続ける。
「お兄ちゃんのおじさんがこの街に住んでいて。毎年、この夏祭りにいってたの。その話を聞いて、”どうしても行きたいって”駄々こねたら、一度だけ、連れてきてくれた。連れてきてくれたというより付いていった。あとからすごく怒られたけど。」
「その時、いくつ?」
「小学校1年。」
「それは、親は怒るでしょよ。」
「怒っていたのは、お兄ちゃんのママで。起こられていたのはうちのママ。当日だったけど、私はママにはきちんと話をしてから出かけたの。お兄ちゃんのおじさんが駅まで迎えにきてくれるって説明をして。そのときは、なんでうちのママが怒られるのかはわかんなかった。」
「この街の夏祭り。大きなお祭りだったんだ。あの頃の私にとって。そこで、”お兄ちゃん”と呼ぶ小さな子がいてね。小さくて青白くて少し病的な感じの子。」
カンナは話を続ける。
「お兄ちゃんは、その年の冬に引越していったから。この街の夏祭りにくることはもうなかったわ。」
「そのあと、お兄ちゃんとは?」
「ううん、引越しをしてから、会ったことはないわ。」
「会いたいとは思わないの?」
「大学2年の夏、思いたって、彼を探したの。」
ようやく、カンナはブランコから立ち上がった。