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ハードシップメークス  作者: 小走煌
13 夏の大会、決勝
189/227

恐怖の怪腕

 香椎東の面々は次々にベンチを飛び出し守備に就く。

 その波からは少し遅れて慧もライトへ向かった。走りながら、直前の捺の言葉を思い出す。

「彼女の武器は大柄な長身から放たれるスピードボール。厄介なのは、単に速いだけでなく荒れてるってとこ」

 捺の言葉に直子が同調する。

「荒れ方がまた厄介なんだよね。ただコントロールが悪いわけじゃなくて適度にストライクは入るっつーか」

「そう。そこなのよ」

 捺は全員を見回して言った。

「鍛治舎玲央はとんでもない球だったけど、コントロールも一級品だった。だから踏み込むことに怖さはなかったわ。けどこの村田は別ね。適度に荒れてるってことは、狙い球がとっても絞りにくい。それにいつ危険球が来てもおかしくない。踏み込んだところにあのスピードボールが来たら、避けられない」

 慧は思わず一人一人の顔をチラリと見る。全員が青ざめていた。

「ついたあだ名は『恐怖の怪腕』――単純にさあ攻略、ってわけにはいかなさそうね」

 ベンチは静まり返った。誰もが有効策を必死に考えているようだった。捺が続ける。

「しかも左ってのがまた厄介ね。幸いウチには左バッターは私と慧だけだからまだダメージは少ないけど」

「え、えっ……?」

 慧は捺の言わんとすることが理解出来なかった。すがるように視線を向けると、捺はそれに気づいてくれたようだった。

「左バッターは、左ピッチャーの球が見づらくてちょっと難しいのよ。左の絶対数が少ないからそもそもあまり対戦しないっていうのもあるけど……実際に打席に立ってみたら分かるはずよ」

「わ、わかりました……」

 慧は俯いてしまった。ただでさえスピードボールは苦手なのに、危険球の恐怖とも戦わなければならない。それなのに、左投手の難しさというのも感じなければならないのか。

「でもよお、右だからって簡単じゃねえぜ」

 捺の言葉に清が割って入った。

「さっき食らった最後のボール、ありゃクロスファイヤーだ。左ピッチャーは右バッターが攻略するべきとは確かに思うけどよ、あのクラスのボールをポンポン投げられちゃ正直厳しいと思うがな」

 清の独白に、ベンチは更なる静寂に包まれた。

「……ま、俯いてても仕方ないわ。攻略方法はちょっと考えます。とりあえず皆、守備就きましょ」

 捺の言葉に不意を突かれたか、皆焦って準備をしそれぞれのポジションへ向かった。

 そして今、四回表が始まる。和白の攻撃は六番バッターからだった。

「攻略って、どうするんだろう……」

 慧は構えながら考えた。しかし素人の頭では良い案は出て来ない。

「うーん……」

 一人で唸っていると、鈍い打球音が鳴った。

「あ、やば……!」

 慧は身体が緊張するのが分かった。打球はフラフラとライトに向かって来ていた。

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