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ハードシップメークス  作者: 小走煌
13 夏の大会、決勝
184/227

暗雲

 四対二。香椎東は二点のビハインドを背負った状態で三回の裏に入った。

「よし、取られたら取り返すってね!」

 直子が勢い良くベンチを飛び出して行く。手にはバットを握っている。この回の先頭打者だ。

「今の回は危なかったわね」

 そんな直子を見送りつつ、捺がヘルメットを被りながら言う。そしてナイスキャッチ、と華凛を称えた。

「ええ。直子先輩の守備範囲があって助かりましたが、捉えられていました」

 華凛も渋い顔を見せた。その顔を見て、慧の中に暗雲が立ち込めた。

 香椎東は折れない、と勝手に思っていた。しかし、当の本人達は正にギリギリのところでプレーしているのだ。

「和白のキーマンは二番の高木かも知れないわね」

 不意に捺がそんなことを言った。華凛も一つ頷く。

「えっ、そうなんですか……?」

 慧は思わず口を挟んでしまった。恐ろしいクリーンアップやあの亜希乃がいる中、二番バッターがキーマンという発言に意外なものを感じたのだ。

「なんて言ったら良いのかしらね、バッティングの質が高いのよ。恐らくどのコースにもキッチリ対応してくるのが彼女の持ち味よ」

 捺はグラウンドを鋭く睨んで言う。華凛がそれに続いた。

「和白のレギュラーで右打者は三人……二番の高木、五番の坂田、そして七番の中村です。右を貫いているこの三人はいずれも優秀な打者のようですが、この中でも高木の対応力は群を抜いていますね」

 慧は驚いた。素人目で見れば、第一打席にホームランという豪快な結果を見せた五番の坂田が優秀な打者、という結論になるのだ。

「とにかく、和白の打線は想像以上に強力ということが分かったわ。私達もキッチリ得点していきましょう」

 そう言って捺はバットを取り出し、戦況を見守る。しかし、そのグラウンドでは直子が倒れワンアウトとなったところであった。

「あちゃ、まあ仕方ないわ。千春に託すしかないわね」

 捺はネクストバッターズサークルに向かった。残った華凛は一つ溜め息をつく。

「本当……この打線の中良く一番なんて打ってるわね、アイツ」

 慧はハッとした。アイツ、とはきっと亜希乃のことだ。華凛は冷静に戦況を分析しながらも、やはり戦友のことは気にかかるのだ。

「でも、私達だってきっと負けてない。この試合、絶対勝ちましょう」

「そ、そうだね……」

 しかし、グラウンドでは和白側にファインプレーが飛び出した。噂の高木がショートの頭を越えそうなライナー性の当たりをジャンプ一番、キャッチして見せたのだ。

 追いかける立場の香椎東はこれでツーアウトとなった。三番の捺が打席に向かった。

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