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ハードシップメークス  作者: 小走煌
12 夏の大会
109/227

香椎東対久留米国際5

 ボールは、慧のグラブに収まらなかった。

 正確にはグラブの中央に収まっていないだけで、土手には当たっていた。ボールで言えばたかだか一個分ずれた程度。

 だから許して欲しいと慧は懇願したが、そういう場合ではないことは痛いほど理解していた。今、そのたかだかが致命傷なのだ。

 土手に当たったことによる痛みよりも、打球を弾いてしまったという事実が慧を急かす。芝生に転がったボールを拾い上げ、弱い肩をフル稼働して中継へ送球する。

 しかし、その時慧の視界にはホームインする二塁ランナーの姿が映った。自分のミスで一点が二点になった。

 逃げたい。消えたい。

 自分のしたことがミスだと分かった途端、マイナスの思考が慧の頭の中を埋め尽くそうとした。この場からいなくなりたい気持ちが急激に高まった。

「ケイちゃーん、どんまーい!」

 次の瞬間、慧の耳に聞こえたのは直子の声だった。

「今のは難しい打球だった。仕方ないわ」

 中継のボールを受けた捺も声を掛けてくれた。それに呼応するように、色んなポジションから次々に色んな声がする。

 慧は震えた。どうしてこんなに優しいのか。直子は必死に投げた結果ミスで点を奪われているのに。捺は自分があげた打点を帳消しにされているのに。周りのみんなもどうして。センターまで届く声に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 ――ダメだ。

 下を向きそうになる心を強引に上向ける。ミスをした分を取り返さなければ居心地が悪い。慧は頭を下げ、グラブを一度ポンと叩いた。

 挽回するならやはりバッティングだろうか。全然自信はないけどやるしかない。次の回で打席は回ってくるだろうか。そんなことを考えていたら、もう直子が投球を開始していた。

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