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勇者は魔王を倒したい  作者: 時島さちこ
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シルフィアとディアロ 2

「あなたに掴まればいいの?」


「そうだ」


シルフィアは、疑問に思いつつもディアロの袖を掴む。


「そんなんじゃ落ちてしまうぞ」


「ん?落ちる?」


どういうこと?

シルフィアは首を傾げて自分よりも少し身長の高いディアロをみつめると-----


「えぇっ!?」


突然ディアロは袖に掴まったシルフィアの腕を引っ張り、倒れこむシルフィアの腰を腕で抱え込んだ。


お、お姫さま抱っこぉ!?というシルフィアの心の叫びを無視し、


「飛ぶぞ」


ディアロは地面を蹴り、上空へと飛びあがる。


「....っ!?」


いったいどうすればこの高さを上がれるのよっ!?


一気に穴から出たかと思えば、緩やかに地上へと降りたつ。


「ほら、出れたぞ」


「.......」


「おい?どうしたシルフィア?」


反応のないシルフィアをディアロが揺すると、シルフィアはハッと意識を取り戻す。


「ごめんなさい。びっくりしすぎて...」


「ふむ。怪我はないか?」


「落ちたときに足を捻ったけど、歩けないほどじゃないから大丈夫よ」


「そうか。なら良かった」


お面で顔は見れないが、声音から安心したように感じられた。


「なんだかよくわからないけれど、とにかく助かったわ。ありがとう」


「気にするな。シルフィアは貧弱だからな」


「あら?これでも村の子供たちの中では今のところ負けしらずよ?」


「それはそれで女の子としてどうだろうか....」


お面の下では、きっと眉をひそめているであろうディアロを見て、私は笑ってしまった。

ディアロは、「おてんば娘め」と小声で言い、肩をすくめたのだった。



「おーい!シルフィア!大丈夫かー!?」


「あ、パパ!」


遠くからパパや村の大人たちがみえ、私は腕をあげ無事を知らせる。


「そうだ!ディアロ、これから私のお誕生日パーティーをするの!お礼にご飯でも食べていって!」


「ありがたい誘いだが、俺はもう行かなければいけない」


「え、そうなの?」


「ああ、すまないな」


ディアロは申し訳なさそうだった。もしかしたら、何か急ぐ用事があったのに私が引きとめてしまっていたのかも知れない。


「もう会えないかしら?」


「...いや、また近くによるかもしれない」


「本当!?じゃあ、その時はぜったいに私のところに寄ってね!待ってるから!」


「ああ、わかった」


仮面でわからないが、ディアロが笑った気がした。

ディアロはごそごそとポケットから何かをとりだす。


「シルフィア、誕生日おめでとう」


スッと出された手のひらにはエメラルドグリーンの宝石がついたネックレスだった。


「ええっ、こんな高そうなの受け取れないわよ!」


「受け取ってくれないのであれば捨てることになるが?」


「うう、そんなもったいないことはできないわよ。...わかった、受け取るわ」


そっとネックレスを受け取り、失くさないようにさっそく首につけた。


「どう?似合うかしら?」


「ああ、ばっちりだ」


ガシガシとディアロに頭を雑に撫でられるが、まったく嫌な気にはならなかった。


「じゃあ、そろそろ行かなければ」


「素敵なプレゼントをありがとう。ディアロ、また会いましょう」


ディアロは振り返らず、手だけを降って去って行った。


「シルフィア、怪我はないか?」


ちょうど、ディアロが立ち去ると同時に、パパや村の人が到着した。


「大丈夫よ。足を軽く捻っただけだから」


「おお、良かった。心配したんだぞ。ところでさっきの少年はどこに?」


「え?」


ディアロが去って行った方向をみても、もうディアロの姿は見えなかった。

そんなにすぐ見えなくなるはずはないのに...。


「...わからないわ。わたし彼に助けてもらったの」


「そうだったのか。一言お礼を言いたかったのだがな」


残念がるパパの声を耳に、じっとディアロが去って行った方向を見つめる。





彼がいったい何者であるのか、彼女はまだ知らない。






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