表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者は魔王を倒したい  作者: 時島さちこ
2/14

魔王と勇者

続編です。



俺が初めて勇者を見たのは、まだ8歳の頃だった。



「魔王陛下っ!これを見てください!今期の勇者はなんと女です!」


「女...?」



側近のルイノルドが、鼻息荒く俺に迫ってきた。その手には、魔界アイテム「なんでもみえーる」がある。

一見水晶玉にも見える「なんでもみえーる」に、1人の小さな女の子が映されていた。



「これが勇者なのか....?」


「そうですよ陛下っ!見るからに非力な娘です!陛下の元まで来れるかどうかも怪しいものですな!」


「...ふむ」



女の子は小さいながらも家の手伝いをしており、衣服は薄汚れていた。どこかの田舎なのか、周囲の風景から長閑な雰囲気を感じ取る。



「ただの田舎むすめじゃないか」


「しかし陛下!侮りすぎてはいけませんぞ!腐っても勇者。運命の日には、少しは骨のある者になっているはずです!」


「そういうものなのか?」


「そういうものです。しかし、どうせ魔王陛下には負ける運命でしょうがね!」



ルイノルドは機嫌よく自慢の金色の尻尾を左右にふる。


運命の日か.....。

それは、昔々の大昔に、勇者と魔王の間で取り決められた約束の日。

お互いに16を超すまで、相手を殺してはいけない。

そのため、今期は魔王が勇者よりも2つ年が上であるので、勇者が16になるまで魔王側は勇者の存在を把握できたとしても、手を出すことはできないのだ。


いったいどうしてこのような約束が取り決められたのか、その理由は文献にも載っていない。

しかし、この約束を違えようとすれば、たちまち己の心の臓は停止し、死ぬことが不幸にも証明されているため、破ることはできない。


勇者と戦いを始める日まで、あと10年。

それまで、あの女はどのように生きていくのだろうか。


なんとなく、本当に気まぐれのような気持ちで、魔王は勇者の生活を「なんでもみえーる」で覗くようになる。



「また転んだぞ?ルイノルド!この女は本当に勇者の素質があるのか?」


「陛下、勇者とは身体面も大切ですが、その心が最も重要視されています。ですので、この娘の素質は私には計りかねます」


「人間とは不思議な考えをもつものだ。魔界では力がすべてであるのに」


「陛下、人間のことなど理解しようとしても無駄ですよ。あいつらと我らは決して相容れぬ存在です」


「....そうだな」



映し出された女の子は立ち上がると、ぐっと泣きそうなのを耐え、バケツを持って再び歩きだした。


「前に転んだときは、大泣きしていたのに....」


「陛下?どうされました?」


「いや、なんでもない」


くすりと魔王は笑みをこぼす。

この女の成長を見るのはなんとも面白い。


早く16になれ。そして、俺に会いに来い。

その日まで、お前の成長を見続けよう。


魔王の名は、ディアロ・バルモンド。


闇を映す髪と目をもち、後に歴代最強と讃えられる強さを秘める。


そんな魔王が勇者に倒される日がいつ来るのかは、まだ誰にもわからない。




ブックマークありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ