クランキーインスタンスその5
ドーム2:カジノ入り口
ケンは少年と話そう思った。しかし話すネタが思いつかない。そこで名前を聞こうとした。
「名前はなんていうの?」
「知らない。」
「うん…」
「じゃあ好きなことは?」
「知らない。」
「うん…」
「それじゃあ何か…うーん…もしかして君って記憶がないとか?」
「うん。」
「うん…わかった。」
全く掴みどころのない少年にケンは戸惑いを隠せなかった。
その時だった。
ケンは誰かから話しかけられた。
「よぉ〜そこの坊ちゃん。一緒にいる奴、ちょうだい。」
「え…」
「だからちょうだい。さもないと…殺るよ。」
その"誰か"がポケットからとったものは銃ではなく、透明な筒状の"何か"だった。そして"何か"を開けてあるものが出てきた。
グゥルグァルル〜ルルァ〜ル〜
"何か"から獣が出て来た。しかも動物とはとても思えない奇妙なフォルム。ケンが見たことのない"モノ"だった。
"モノ"の大きさは16センチ程度…いや、だんだんと大きくなっている。そして1分経ったころには160センチ程になった。
「逃げるぞ!」
ケンは少年の手を掴み必死になって走った。ケンと少年が逃げているの最中でも"モノ"はケンが一瞬振り返ったときにはゆうに190センチを超えていた。一般人も気づき始めて逃げている。
「スウェールのしすぎだな。まぁとっととやれ!」
"モノ"は"誰か"の声に反応してケンに攻撃した。が、"何か"を開けてから2分が経過し、すでに320センチになった"モノ"は動きが鈍くなりケンの近くのビルめがけて攻撃した。ビルが傾き、崩れようとする中、ケンはなぜか反射的にビルの中に入っていった。
「あれ…?」
ケンも自らの行動に驚いてしまった。しかし"モノ"もビルの中に入り、もう出ることはできなかった。もうここで撃つしかない。
「こっちだ!」
ケンは叫んだ。が、「こっち」に"モノ"が来ても何もできずに逃げた。ケンは銃を持っていなかった。別に警戒しなくてもいいだろうという余裕が命取りとなった。と、少年が
「止まってろ!」
と叫んだ。すると"モノ"が止まった。その隙に今度は少年がケンの手を掴み、ビルから出た。
BOOM! BAM!
ビルが崩壊した直後に、"モノ"が潰れ破裂した。2人とも無事だった。そしてあの男も…
「お〜いケン。どこだ!」
そう、ジェットだ。どうやらバカラは終わったようだ。
「ここです!」
ケンが手を振りながら叫んだ。
「お前大丈夫か…ってこいつ誰だ?」
ジェットは少年を指して言った。
「あ、これは依頼でこの子をドーム1のシュバネ議員にって…」
「おいそれでこいつの名前なんだよ。」
「え…えーっと…それがこの子記憶喪失なんですよこの子。」
「うんじゃわかった。この坊主の名前はラガッツォだ!」
ラガッツォ、イタリア語で意味は「少年」あまりに単純な名前にケンはあきれ、笑った。
「おい笑うなよ。お前だってどうせろくでもない名前付けようと思ってたんだろ。とにかくこれからすぐ行くぜ。」
そのまま宇宙港に行こうとするジェットにケンはラガッツォと共に後ろに続いた。
AD2264.Mar.1