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綺羅星は見えるか  作者: イヲ
第一章:隷従
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 ずっと、待っていた。

 それでも、目ざめなければいいとも思っていた。

 目ざめずに、ずっと冷たく、深い土のしたで眠っていられたら。


 だが、少女はつぶやく。


「しかし、それこそがわれらが宿命。われらの母上が、そう仰っていたではないか」


 少女の白い髪の毛が風にのったようにふわり、とゆらめく。


「そうだな。……そうだった」

「忘れてはならぬ」

 

 鐘の音が聞こえる。

 目ざめよという声が聞こえる。


「時がきた」


 少女のちいさな声に、青年はまぶたを開けた。

 重たい絹の白袴(しらきはかま)を持ち上げ、顔をあげる。


 こごえるような長い時間。一体、どのくらい眠っていたのだろう。



 水面から地上を見上げるような感覚。

 それをずっとずっと見てきた。

 つめたい時間のなかで、ずっと地上を見てきた。


「時がきたのだ。われらの力を必要とする人間がいる」

「………」

「どうしたというのだ。そんな浮かぬ顔をして」

「……俺たちは、いったいいつ、解放されるのだろうか」


 少女とおなじ真っ白な髪の毛の青年は水浅葱の目を伏せる。


「……さあな。それは分からぬ。われらが存在し続けるかぎりだろう」

「そうか……」



 国は(ほとおり)。時代は(ぬりこ)

 天皇がおり、華族と平民が暮らし、戦はなく、外の国と貿易をし、栄えつつあるこの星国(ほとおりのくに)

 人々は明るい未来を信じ、そして暮らしていた。

 だが、光がある場所には影もある。その影に暮らすのは、人ならざるもの。人の世では(あやかし)とよばれるものたちだ。

 彼らの存在はすでに、おとぎ話だけのものだった。

 


「さあ、手を伸ばせ。われらの力が必要とする人間のもとへ行こう」


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