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07

それから全員が微妙な空気のまま室内に戻っていく中、ロイだけは一通り庭を見て回りたいと外に残った。



そして、トーニョ達はリビングに集まり、検証の事について話し合った。


「・・・・・どう思う」最初に口を開いたのは検証の時最もロイの近くにいた、トーニョだった。


「・・・そうですね。ただ身体能力が優れているという事以外特に情報は得られませんでしたね。検証では、の話ですが」


キールの少し濁した言葉遣いにウィルがピクリと片眉をあげた。


「・・・何か、見つけたのか?」ベルルトがキールに尋ねると、キールは一つ頷いて全員の顔を見た。


「トーニョさんはお気付きでしょうが、トーニョさんがロイさんに掴み掛ったときの表情の変化が気になりまして・・・・」


キールの一言にトーニョの表情が険しくなった。


「俺はあの時一瞬、ほんの一瞬だけ悔しいがあのロイって男が怖くなった」


トーニョの言葉に全員が驚いた。トーニョと言う男は常に凛としていて何者にも怯まない精神の強い男だ。そんなトーニョがロイを怖いと言った。


「俺がロイの事を恐ろしいと思ったのは表情じゃない、あいつの目だ」


トーニョが苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。


「・・・・目、とは一体どういう・・・」キールが尋ねた。


「あの時、俺が掴みかかった時ロイは静かにそして真っ直ぐ俺を見ていた。自分で言うのもなんだがあの時の俺は殺気立っていたはずだ。なのにあいつ怯む事なく、俺を静かに見ていた。俺はその時ロイにすべてを見透かされてる気がしてならなくて、怖くなったんだ」


トーニョの話を黙って聞いていたベルルトがそこでああ、と思い出したように声を上げた。


「今思い出したんだけどよ、ロイがこの家に忍び込んで捕まった時俺あいつの顎掴み上げただろ、その時も目を反らす事なく俺の事じっと見てたんだよなあ・・・」


そういえば、そうだった。その目を見てベルルトはロイの事を面白い奴と認識したのではなかったか。


「・・・・あいつが何者だったとしても」静かな室内に小さくそれでもはっきりと声が響いた。全員が声のする方へ顔を向けた。


全員の視線の先にはウィルと、ロリンシスが肩を並べて立っていた。ロリンシスは続きを促す様にウィルを見た。その視線を受けて、ウィルが再び口を開いた。


「・・・・あいつが何者だったとしても、何かを隠してる、いや抱えているのは間違いないと思う」


「・・・・俺もそう思うよ。ああいう目をする子を俺はよく知ってる」ロリンシスが何かを思い出す様に目を細めた。


そんなロリンシスの様子を見てベルルトがふっと目を伏せた。ロリンシスが言うああいう目をする子、というのはきっと以前彼がベルルトだけに話してくれた秘密の話。その中に出てきた彼の事なのだろうとベルルトは思った。


ウィルとロリンシスの意味深な物言いにキールが何か口を開こうとしたその時ロイの帰宅を知らせるベルの音が玄関で鳴り響いた。


ロイが帰ってきてしまったのでそこで話は打ち切りとなってしまった。


ロイが控えめにリビングのドアを開ける。


「・・・ただいま戻りました。ざっと庭周りを見て回りましたが、この庭は珍しい植物が多いですね。薬草なんかもありましたから、薬も作れますね」


楽しげに話すロイにキールが穏やかな表情を見せる。そして不意にロイに歩み寄った。


「ロイさんは、植物について詳しいのですか?」キールの問いかけに、ロイは一瞬目を瞬かせた後、嬉しそうに顔を綻ばせた。


「幼いころにね、植物についての本をたくさん読んだりしていたりしたから、少しなら薬学の知識もあるです」


そう穏やかに話すロイに全員が釘付けになる。今まで警戒していたせいかロイの顔を真剣に見ていなかったが、こうしてじっくり見るとロイは中々整った顔立ちをしている。笑うとさらにそれが引き立つのでとても儚げに見えるのだ。


トーニョ達も中々綺麗な顔立ちをしていて、それを仕事に使ったりしているが、ロイのはまた少し違った美しさがある。触れてはいけない。そんな気にさせられるのだ。


キールははっと意識を元に戻す。相槌を打たねば変に思われてしまう。


「あ、そ、そうなんですか・・・。では、薬も作れたりするんですか?」


「うーん、簡単な傷薬程度なら作れるかもしれないけどそれ以外は分かりません」


ロイは申し訳なさそう頭をかいた。


「・・・・じゃあ、傷薬とか作れんなら作っといてくれよ。俺よく怪我するから」


ベルルトが耳をほじくりながらめんどくさそうに言った。


「ちょっと、ベル・・・・図々しいですよ・・・」キールが窘める様に言った。


「いえ、構いませんよ。俺は・・・」


「ほら、そいつもそう言ってる事だし、庭の手入れだけじゃ暇だって」


「・・・やってもらおう。忙しい方がいろんな所探られなくて済むだろうし」トーニョも刺々しさはあるものの了承した。


「じゃあ、お願いできますか?」キールが申し訳なさそうにロイを見た。


「はい、住まわせて頂く限りは出来る限りの事はさせて頂くつもりですから」


「じゃあ、決まりだね。よろしくロイ」ロリンシスがふわりと笑った。


そうして、ロイの居候生活が始まった。




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