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05

ロイとロリンシスはロイの部屋となる場所に向かって黙々と歩いていた。

 

すると、ロリンシスが徐に口を開いた。


「あんなに皆殺伐としててごめんね。皆其れなりに理由があるんだ。怖い思いさせてたでしょ」


気遣わしげにロイを見るロリンシスの視線を受けながら、ロイは苦笑した。


「いえ、大丈夫です。驚いただけですよ。気にしないでください」


ロイが曖昧にへらっと笑うとロリンシスは切なげでどこか哀しそうな顔をしてロイを見つめた。


「・・・・どうかしましたか」


ロリンシスははっと我に返ったようだった。どこか気まずげに視線を彷徨わせている。


「・・・・なんか似てたんだよね」


ロリンシスはゆっくりと喋り出した。


「ロイの今の顔がさ、俺が昔仕えていた人がよくしていた顔に似てたんだ」


「・・・・そうなんですか・・・・」ロイは再び胸に何かがつっかかった気がした。


「変な話したね。ごめんごめん。丁度着いたから。ココがロイの部屋だよ」


ロリンシスは先ほどとは打って変わりからっとした笑顔になった。


ロイは思考を中断し、ロリンシスに続いて部屋に足を踏み入れた。


ロリンシスによれば、ロイの部屋は日向がよく当たる南の部屋なのだそうだ。一番奥の部屋だが日当たりがいいのだとロリンシスが言っていた。皆の昼寝スポットだったらしい。少し申し訳なくなった。


ちなみに隣がロリンシス、向いがキールなのだそうだ。トーニョやウィル達でなくて良かったと少しホッとしてしまった。


「さ、説明はこんくらいにして、部屋の整理しちゃおう。結構散らかってるから。俺も手伝うよ」


「あ、ありがとうございます・・・」


その後ロイは自分の片づけ能力の無さに愕然とするのだった。



そして時を同じくして、ロイとロリンシスが居なくなった部屋では引き続き話の続きが行われていた。


「なぁんか怪しくねえ?」ベルルトがキールが持ってきた軽食をかじりながら呟いた。


「まあ、確かにあまり明確な情報は知れませんでしたね」


キールも神妙に頷く。何だかんだ言ってロイを一番鋭く観察していたのはキールだ。柔和な雰囲気を出して相手を油断させるのがキールの特技だ。


「何かなよなよと頼りないしな。喧嘩も弱そうだ」


トーニョも頷く。


「そもそもなんであいつはベランダに登れたんだ」


ウィルの問いかけに全員が押し黙った。


「それは・・・本人に聞くしかねえんじゃねえか」


「普通に考えてこの家を囲む柵を利用したものと思われますが、そう考えるとロイの身体能力はかなりありますよ」


キールの言っている事はもっともだ。再び沈黙が訪れる。その時静寂に包みこまれた部屋に突如としてドスンっという大きな音が響き渡った。


「っ何の音だ!!!今の音ロリンシスの部屋の方だぞ・・・っ」


空間に一気に緊張が走る。


「ロイかっ!?ロリンシスの事だから万が一なんて事はないはずだが・・・・」


「とりあえず、この話はまた後にしましょう!!!」


そういってキールは剣を持って部屋を飛び出した。ベルルト達も後を追う。


部屋の前までたどり着くとトーニョが勢いよくドアを開け放った。そしてそのまま固まる。後ろに控えていたベルルト達が訝しんで中を覗くとそこにはある意味惨状な景色が広がっていた。


椅子は倒れ、ベットの上には衣類が散乱している。ランプも倒れてしまっている。ほこりなど舞い放題だ。これならばまだ以前の方が綺麗だった。しかし何より問題なのは、カーペットに絡まりながら倒れているロイとロリンシスだ。ロリンシスに関してはロイの下敷きになっている。


すると二人がこちらの存在に気がついたらしく、苦笑いをこぼした。


「・・・・・っあ・・・どうも・・お騒がせしました・・・・」とロイが苦しそうにうめき声を上げた。


「・・・・・ごめん皆・・・・」とロイの下でロリンシスが消え入りそうな声を上げた。


目の前の惨状を固まったままのトーニョ達の中ではっと我に返ったキールは真っ青になりながら部屋の中へ足を踏み入れた。


「な・・・何してるんですか!!!!だ、大丈夫ですか!?まったく、何をやったんです!!!」


「いや・・・ロイがあまりにも・・・片付けが下手で・・・こんな事に・・・」


「・・・いやいや、ロリンシスさんだって下手だったじゃないですか・・・」


二人で罪の押し付け合いをしながらキールに起こしてもらい、事情を説明するロリンシスの傍らでロイが懸命に謝っている。


「・・・・・・なんだこれ・・・」トーニョが思わずといった様子で口を開いた。


「・・・・・・・・ヘンな奴・・」ウィルも口を半開きにしながら呟いた。


ベルルトは一つ欠伸をするとそっとばれないように自室へと戻っていった。


結局ロイの部屋の片づけは明け方まで掛かったのだった。

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