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これで一先ずは完結です。
「まずは・・・王子だという事を黙っててごめんなさい。あと勝手に皆の仕事についてとかも調べてしまってごめんね。あの店が雑貨屋じゃない事はアルベルトから聞いてたんだ。ついこの間だけど」
本当にごめんね、とロイは深々と頭を下げた。しばらくして頭を上げたロイは、自分の事について話し始めた。
「俺ね、兄弟に嫌われてるんだ。一番上の兄には特にね、殺意まで抱かれちゃってて・・・。このままだと本当に殺されちゃうからっていう理由で王宮を出るしかなかったんだ。ここを見つけたのは本当にたまたまだったんだよ。それは信じて」
ロイは懇願するように言った。
そしてロイは一通り話終えるとロイは全員の顔を見た。各自それぞれ驚いてはいたがロイをどうにかしようと思う者は一人もいなかった。
「皆はもう自由なんだから、こんな所に身を潜める必要はないんだからね」そう最後にロイは締めくくった。
「・・・・ああ、ありがとな、ロイ」トーニョはロイをまっすぐに見据えお礼を言った。
緊迫感が残る戦場に穏やかな空気が流れた。キールは先ほどから一言も発する事もなく下を向くロリンシスを見た。ロリンシスの顔から水滴がこぼれた。
キールは驚いて思わず「ロリンシスさん?」と呟いてしまった。
キールの呟きを聞き逃さなかったベルルトがそれに食いつく。
「どうしたんだ?ロリンシス?」ベルルトがロリンシスの顔を覗きこむ。そしてぎょっとした顔でキールを見た。
その様子をずっと見ていたロイが切なげに顔を歪めた。そしてロリンシスに一歩近ずいた。
「ロリンシス・・・あのっ」紡ごうとした言葉はロリンシスによってふさがれてしまった。ロリンシスがロイを強く抱きしめたせいで言葉を紡げないのだ。
周りにいる全員がロリンシスの行動に驚きを隠せないのだ。
「・・・・・っロノイール・・・坊ちゃん・・・」
嗚咽を必死に堪えた声でロリンシスが呟いた。
「会いたかった・・・約束を守ってくれてありがとう」ロイは目を見開いた。その瞳から涙が零れおちる。
目の前で事が起こりすぎて三人は戸惑うばかりだ。
困惑した場の雰囲気に気がついたのか、ロイが慌ててロリンシスの背中を叩く。その目にはもう涙は見られない。
ロリンシスをなんとか放したロイが事情を説明した。
「ロリンシスはね、昔俺の専属執事だったんだよ。俺ずっとロリンシスを名前で呼んでなかったから最初は気付かなかったんだけど、なんとなくね・・・」
そう言ってロイは微笑んだ。話を聞いていたトーニョが納得したように頷いた。
「だから、ロリンシスはアルベルトさんの事を知っていたんだな」
「うん、そうだよ」
「しかしまあ、まさかロリンシスが泣くなんてなぁ・・」ベルルトはややニヤつきながら言った。
「七年ぶりなんだから、勘弁してよ・・」ロリンシスは苦笑した。
「再会できてよかったですね」キールが微笑んだ。その母親の様なまなざしにロイもそっと微笑み返した。
「でも、どうするの?」ロイがはっとしたように呟いた。ロイの言葉に全員が首を傾けた。
「家、もう住めるような状況じゃないけど」ロイに言われて気がついたが、現在の家の状況は酷いものだった。
ドアは粉々になり、ほとんどの窓の窓ガラスも割れてなくなっている。部屋の中も床が抜けたり食器が割れたりしてまるで惨劇だ。
「これはものの見事にやられましたね・・・」キールは思わずと言った様子で苦笑している。
「まずいな・・・」ベルルトも唖然としている。
「今日寝るとこないぞ・・・」トーニョは絶望を隠し切れていない。唯一平和にすよすよ寝ているウィルだけが何も知らないという顔を浮かべている。
どうしよう・・・と焦っている彼らにロイが声を掛けようとしたその時。
「うちに来ていただけばよいではありませんか」全員がその声がした方を振り向いた。
そこにはアルベルトが馬を一騎引き攣れて立っていた。
「先ほどロノイール様も自分でおっしゃてたでしょう」
「え、そうだけど・・・皆の意向もあるでしょ」
「しかし先ほどルミナリエ様とのお約束の際にロノイール様ご自身が見張るという条件も含まれていましたし、それにロノイール様が気にしていらっしゃるそ皆さんのご遺志ですが先ほどから希望に満ちた顔でこちらを見ていらっしゃいますので嫌な気はしていらっしゃらないようです」
ロイが振り返るとそこには今まで見た事ないくらいの満面の笑みでこちらを見るトーニョ達の姿があった。
「皆・・・王宮に来ると大変な目に会うと思うよ?俺の従者になるってことは王宮での立場もそれはもう低く・・・「でも衣食住は困らないだろ?」ロイの言葉を最後まで聞く事なくベルルトが言った。
「それはお約束いたします」答えたのはアルベルトだ。
「だったら俺は異存はねえな」ベルルトは笑顔で頷いた。キールもその隣で目を細めて笑った。
「俺はロイの剣術をもっと見たいから行こうかな」トーニョも頷く。ロリンシスも王宮に戻る意向を示していた。
「異存はないそうです。ロノイール様。馬車用意しておきましたから皆さんには私とともにそれに乗って頂いて、ロノイール様は馬での御帰還になりますがそれでよろしいですか?」
「いや、なら俺が馬に乗るから坊ちゃんは馬車に乗りなよ」
昔の懐かしさから坊ちゃん呼びになっているロリンシスが声を上げた。皆もお前は馬車にしろと声をそろえて抗議している。
「皆、俺が王子って分かってから態度変えすぎ!!前みたいに扱ってくれていいから!!!あとロリンシス坊ちゃんはやめて」
言い合いをしながら馬車へと歩みを進めているロイ達の数歩後ろをアルベルトは歩く。その目は慈愛に満ちていた。
「良かったですね。坊ちゃん」そう呟きながら。
こうして彼らの王宮生活が幕を開けた。
第一章 fin
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