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『ロイは俺の大切な人に何か似てる』
『え?そうなんだ?どんな人?』
『うーん、儚くて消えちゃいそうな人、かな』
『えー、俺そんな危うい存在の人に似てるの?』
『いやいや、喋り方とか雰囲気がだよー』
『ふふ、何それ。分かんないよ』
ああ、これは二人で紅茶を飲んだ日の会話だ。どうして今そんな事を思い出すのか。走馬灯?いや、俺まだ死んでない。ならばなぜ・・・
「お前!!!何者だ!!!」
トーニョの言葉に一気に現実に引き戻された。そうだ先ほどウィルとは別の気配を後ろから感じたのだ。トーニョは戦いながら後ろを向き質問を投げかけている。実に器用だ。
ロリンシスも後ろを振り返る。そこにはウィルを支えるようにしてしゃがみこんでこちらを見上げる何者かが居た。手には小鬢を持っている。こちらからでは光の加減で相手を確認する事が出来ない。
すると今まで黙っていた何者かが驚いたような声で声を発した。
「おや・・・懐かしい。こんな所で会うとは・・・・名前が違っていたから気付かなかった・・・」
あちらからはこちらが見えるらしい。しかし一体これはどういうことか。声音からして男だろう。男の言葉からしてこの男はどちらかの知り合いという事のなる。トーニョとロリンシスはお互い顔を見合わせた。お互い表情に戸惑いが浮かんでいる。
そこにタイミングが良く月明かりが雲の間から顔を覗かせた。これのおかげでお互いの顔がよく見えるようになった。男の顔を見た瞬間ロリンシスの表情が驚愕に変わった。
隣でカラランっと剣が落ちる音が聞こえてトーニョは訝しみながら隣を見た。
対して見られた側のロリンシスは口をパクパクと何回か動かすもそれは全部言葉にはならない。突然の変わり様にトーニョは驚いた。ロリンシスがこんな風に取り乱した様は出会ってから一度も見ていないからだ。
「・・・ど、うし、て、あなたが、こんなっ」
やっと言葉になった気持ちをとぎれとぎれに話す。彼は。この白髪の老人は。
「どうしてあなたがここにいるんです!!アルベルト執事長!!!!」叫んだ言葉は悲鳴にも近かった。
ロリンシスがこんなになるのを見た事がないトーニョは驚愕を隠せない。驚いているトーニョの耳に敵である兵士の声が届いた。
「・・・・えっ、アルベルト様?」
どういうことかと、トーニョは耳を疑った。今この男は自分とロリンシスの目の前に居る男に対してアルベルト様といった。という事はアルベルトという人間は城の人間なのか?だったら何故ロリンシスが知っているのだ。
今自分の目の前では何かとんでもない事が起こっているのではないかとトーニョが思い始めた時、戦場を決裂くような凛とした声がこの場を駆け抜けた。
「全員静まれええええええええええい!!!!!!!!!!」
その場にいた者全員が一斉に戦うのをやめ、声のした方へ視線を投げかけた。
声の主は丁度ロイの部屋のベランダの手すりの部分に立っていた。顔はフードを被っているため良く見えない。皆の視線が集まった所で再度声の主は声を発した。
「アルベルト!!!解毒は!!!」
アルベルトと呼ばれた老人は済ませております、と一礼をした。
解毒を済ませたというウィルの顔をトーニョとロリンシスは急いで伺った。すると確かに解毒は済ませてあるのだろう。今はアルベルトの腕の中で安らかな寝息を立てていた。その様子に二人はホッと息を吐いた。
「そうか、よかった」声の主も何故かホッとしたような声を発した気がした。その様子に二人は違和感を覚える。
「そして、問題は次からだ。ルミナリエ、ルミナリエはどこだ!!!!!!」
先ほどとは打って変わった声の主に思わず二人は上を見上げた。
「貴様あ!!誰に向かって口をきいている!!!恥を知れ!!!!!!」
そう言いながら大股で前に前進してきたこの男こそきっと声の主がいうルミナリエなのだろう。ルミナリエの言葉に続くように他の兵士たちも同様に野次を飛ばし始めた。
「それは、こちらのセリフでございます、ルミナリエ陸軍最高司祭!!!!」叫んだのは声の主ではなくアルベルトだった。
「最高司祭・・・?」トーニョが今にも消え入りそうな声でそう呟いた。
アルベルトはウィルをトーニョに渡し、前へ一歩出た。
「あ、あなたはっアルベルト様っ!!!ということはあのお方は!!!!」
ルミナリエの表情が見る見るうちに青ざめて行く。その一連の流れをロリンシス達はただただ見守っているしかない。
「ルミナリエ。君はいつからそんなに偉くなったのかな」そう言いながら声の主はそっとフードを取った。そしてロリンシス達は明らかになった声の主の顔を見て驚愕する。
後ろの方でルミナリエの「ああ・・やはりあなたは・・・」という声が聞こえた。
そして右耳に光る黒いカフスを見た瞬間兵士たちの顔が全員青ざめた。
「全員敬礼!!!!!」
「はっ!!!」
ルミナリエの掛け声とともに全員がベランダに足を揃えて敬礼をした。ロリンシス、トーニョ、ウィル、そしていつの間にか近くに来ていたベルルト、キール以外の全員が。
「非礼をお許しください!!!!ロノイール王子!!!!!!」
ロノイール王子と呼ばれた彼は自分たちからはロイ、ロイくんと呼ばれて親しまれていた、彼そのものだった。




