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キインッと剣と剣が交わる音がする。結構倒している筈なのに敵が一向に減らない。
「思ったよりも敵が多いぞ!!!!」ベルルトは力の限り叫ぶ。
すると背中にトンっと何かがぶつかった。ロリンシスだ。
「分かってるよ。このままじゃ埒が明かない。それに何人か毒針を仕込んでいるみたい。やっかいだよ」
ロリンシスはめずらしく焦っているようだ。ロイが帰ってくるのを恐れているようだった。確かにロイにこの惨劇を見せる訳にはいかないし、もし見られたら自分たちの素性だってバレてしまうだろう。
なんてったって今自分たちが戦っているのは国の軍なのだから。その時ウィルが遠くの方でうめき声を上げたのが聞こえた。何事かとその場に行こうとするも敵が立ちふさがって思うように身動きが取れない。
もどかしい思いをしながら剣をふるっていると、状況を把握したのであろうキールが敵軍の中を潜り抜けてベルルトの元へ駆けてきた。キールの肩には血が滲んでいた。キールの怪我を見て頭に血が昇りそうになったがなんとかそれを押し留めてキールの話を戦いながら聞く。もちろんキールもだ。
「ウィルくんが!!!!右足に毒針を撃たれました!!!今トーニョさんとロリンシスさんがウィルくんをかばいながら戦っているので多分やられてしまう事はないと思いますが、問題は毒の回り具合です。恐らく大分進行しているはずです!!!!急いで解毒しないとっ!!!!」
そこでキールも顔を顰めた。肩の傷が痛むのだろう。キールの話では戦況は思ったよりこちら側が不利なようだ。結構数は減らしたと思っていたのだが。ベルルトは剣を一振りすると、振りかえってキールに告げた。
「お前はあまり無理をするな!!!お前だって十分辛いはずだ!!!ここは俺が何とかする!!!だから無理をしないでくれ・・・」
そこまで言うとベルルトはキールを抱きしめた。
「頼むから・・・死ぬな」声は震えていた。
その言葉に、キールは目を見開いた。
それだけ言うとベルルトはキールから離れた。そして踵を返し戦陣へ一人突っ込んでいった。
キールは抱きしめられた体を自分で抱きすくめながらボソリと小さくつぶやいた。
「それは・・・こっちのセリフだ・・・。もう守られるだけじゃ嫌なんだ・・・!!」
キールはそう言って立ち上がった。そしてベルルトに背を向け自分も戦陣へと足を踏み入れたのだった。
次々と兵士が飛ばされていく。押し寄せる大群は留まる事を知らない。
「ウィル!!!しっかりしろ!!あと少しだから!!頼むから!!!死ぬな!!!!!」
悲痛な面持ちでそう叫ぶトーニョは今にも倒れそうだ。無理もない先ほどからウィルをずっと守りながら戦っているのだ。ウィルの体は徐々に傾いてきている。毒針に仕込まれていた毒は殺傷能力が強いものだったようだ。このままではマズい。
しかし解毒しようにもトーニョもロリンシスも手が空く暇がないのだ。ベルルトとキールも向こうで戦っているに違いない。トーニョと一緒に戦っているロリンシスも体力的にそろそろ限界らしかった。
心の中で死ぬ覚悟を固め始めていたロリンシスの脳裏に愛しいあの子の姿が浮かんだ。遠い昔、自分が仕えていた儚くも美しかったあの方は自分との約束を覚えていてくれているだろうか。別れ際に生きてまた会おうと、そう誓った。”彼は”。
申し訳ありません、坊ちゃん俺はあなたとの約束を守れそうにない。さようなら、------。
最後に愛しいあの子の名前を紡いだその時後ろにウィル以外の誰かが降り立ったのを感じた・・・・。




