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『気をつけろ。お前に危険が迫っているー・・・・』
父からそんな手紙が来たのはつい三週間ほど前だ。もうそろそろ来るころだろう。
兄達からの刺客があの屋敷に。本来ならもっと早くあの家を出るべきだったのだ。
現にアルベルトにも何度も言われていた事だ。それでもあの家を出なかったのはあの家の雰囲気が心地よかったのと・・・・ロリンシス。彼の存在だ。
でもとうとうそうはいかない。結局彼等を巻き込んでしまう。完全なる自分の失態だ。
そうこう考えを巡らしているうちに目的の場所についたようだ。
ロイが向かっていた場所はなんの変哲もないただのレストランだ。ただここでロイはある人と待ち合わせをしていた。
レストランに入って一番奥の片隅にある一席に向かって歩を進めて行く。
席に着くとすでに待ち合わせていた人物が席に座っていた。ロイは背中あわせになるようにして席に着いた。
「待たせてしまってすみません」
「いや、私が早く来すぎてしまっただけだ。気にしないでくれ」
「王宮から出てくるの大変だったでしょう。申し訳ありません」
あまり申し訳なさそうには聞こえない謝罪を受け取った男が笑った声が聞こえた。
「本当だよ。アルベルトから内密に連絡があった時は驚いたよ」
荷物にまぎれて王宮出るのって結構大変なんだからね、とロイに文句を言っている男の声に怒気は感じられない。
店に入った時に頼んだ紅茶がすっかり冷めてしまっている。案外長い事話しているようだ。
「・・・・ロノイールお前は大変な立場だね」
それは皮肉でもなんでもない心からの言葉だった。
「まあ、仕方ないですよ。妾の子の分際で国王に気に入られてしまっているんだから」
「それは、お前が出来る人間だからだ。父の性格はよく知っているだろう。我ら兄妹の中でお前は人間としても王としても飛びぬけて優れていると思うよ。私は」
「買いかぶりですよ・・俺はそんな・・・」
「ロノイール。」凛とした声がロイの言葉を遮った。
「私の性格もお前はよく知っているだろう?」
そう言って男は初めて振り返った。ロイも吊られて振り返る。
「私は自分で見たものしか信じないし、本当に優れた者にしか優れているとは言わない」
ね?と言って微笑んだ男はロイが大好きだった王宮の中で唯一尊敬していた家族。第二王子でありながらしっかりと自分の考えを持っている人。自分にさまざまな事を教えてくれた兄、イースだ。この人はいつまでたっても変わらない。
しばらく二人で向かい合って話していたがロイの兄である彼の元にランチが運ばれてきた事でまた最初の隊形に戻った。
「兄上ランチ頼んでたんですね」
「うん、お腹がすいていたからね。・・で、」
ランチを食べながらイースが口を開いた。
「本題に入る」
「はい」
「ここに来る途中に何人もの刺客を見た。お前の隠れ家ももうすでに見つかっているだろう。近いうち・・・いや、もしかしたら今夜にでも襲撃される可能性は大いにある。さらにこれは私も最近知ったのだが・・・とても厄介な事に今回は陸軍最高司令長であるルミナリエ隊長が指揮を取るそうだ。ルミナリエは兄上びいきだからな」
「・・・・そうですか」
「あと・・・」
イースは再びロイに向き直った。
「アルベルトから新たな報告だ。ロノイール」
ロイが振り返ると彼の指には小さな紙切れが挟まれていた。
ロイは嫌な予感がしながらもそっとその紙を開いた。
そこに書かれた文字を見た瞬間ロイは店を飛び出した。
「まったく・・・しくじるなよ」
すでに影も形も見えなくなった弟にイースはひとり呟いた。
店を出て帰路を急ぐロイの手にはくしゃくしゃになった紙切れが収まっていた。
そこに書かれていた事それは・・・
『刺客等今夜屋敷を襲撃すべし。』




