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7章

 ジン・コンバット開始から20分経過。

 俺と薫はもう項垂れていた。ビルとビルの間に引かれた道路。その上で俺らは並んでカメの歩く速さで歩いていく。

「誰もいねぇー……」

「……うん、いないね」

 最初、勢いよく駆けたが、他の選手の人全員といまだに接触していない。

 試合が終わるまで選手と会わない可能性の方が大きく感じられた。

 丁度、歩いている道路が十字路に差し掛かった。俺たちは真っ直ぐ進むつもりなので方向を変えずに歩こうとしたが……。

「ーーあっ」

 バッタリ会ってしまった。初めての選手に……。

 その選手は俺たちからみて右の道から歩いてきたみたいだ

 ーーそんなことを考えている場合ではない!もうすでに試合は始まっているんだ。

 俺はすぐに彼女の名を叫んだ。

「薫ッ!」

 それを聞いた薫は静かに頷く。

 直後、薫の身体は一筋の光となる。光は真っ直ぐ俺の手に収まり、本来の姿を露にした。

 俺が握っているのは、死んだあの日に使われた刀。禍々しい刀。その刀身は黒で染め上げられている。

 刀を両手で構え、戦闘態勢にはいる。

「最初の相手がお前だったとは……。王ッ!」

 俺が偶然に出会ったのは王ーー桜花駿だった。王はエスパーダの異能を発動していない。

 ーー先手必勝!

 武器を持ってもいない、戦闘態勢にもなっていない王に向かって、俺は地面を蹴った。王の懐に潜り込み、刀を強く握りしめ左から右へ一閃。

 しかし、王は後ろへ軽くステップして俺の一撃を安易にかわしていた。

 王はこちらを見て、笑顔を浮かばせ口を開く。

「おいおい、オレ一言も話してないのにいきなり来るなんて、酷いだろ。なぁ、神崎」

 すると、王の背後から突然エスパーダが姿を現した。

「キング、ジン・コンバットはすでに始まっています。なので先程の発言はどうかと思いました」

「……ぐっ!いつもエスパーダの言葉は胸に突き刺さるぜ……」

 エスパーダは王に冷徹な言葉を浴びせる。

 その光景を俺は無言で眺めていた。王とエスパーダの会話中にいくらでも隙はあり、刀で斬り倒すこともできたはずだ。

 ーーだけど、そんなことをしたらいくらなんでも酷い……。

 王はエスパーダから俺に振り向き、両手を上に挙げてきた。

「言っておく、オレは神崎とは戦わない。むしろ戦うなら決勝でだ!」

 そして王は一息。

「だから、このジン・コンバットで一緒に勝ち残らないか?」

 エスパーダが王の発言に付け足す。

「ーーつまり共闘戦線です」

 俺は一瞬刀の薫に目をおとした。薫は刀の姿でも、なにかを見たり、話したりすることができる。そう、俺は薫に共闘戦線の決断に助けを求めたのだ。

「薫、どうしたらいいと思う?」

『颯人君が決めるべきだよ。私はその結果が悪くても大丈夫だから、気にしなくていいよ』

「……そうだな。俺は決めたよ」

 刀を手から離す。地面に落下する刀は急に輝きだす。その輝きは分裂をし初めて、ついには人の形となった。そして人の形は夜白薫の姿に戻る。

 王に向かって、叫んだ。

「俺は王と組む!!」

 この共闘が後に大きな事件を引き起こすことは、王でさえも知らなかった。



 王とともに俺たちは先程の十字路を真っ直ぐ進んだ。横一列に右から俺、薫、エスパーダ、王、と並んで歩く。

 俺は今一番気になっていることを王に聞いてみることにした。

「王は、その、『神』という存在についてどう考えてる?俺は実際に神はいると思ってる」

「神はいるんじゃないかなぁ……。案外身近にーー」

 話すのを止めたと思ったら、王は右にいるエスパーダを抱きしめ、左へ跳躍。すかさず王は叫んだ。

「ーー伏せろッ!!」

 薫の腕を掴む。薫を引き寄せ俺は前方に倒れ込む。その瞬間にズガガッと無数の弓矢が先程の自分達の場所に降り注いだ。しかし弓は上から場所を変えて、再び飛んでくる。

「神崎!夜白と走れッ!!」

 王が言い終えるまえに俺と薫は走り出した。走りながら俺はどうすればいいか考えていた。

 ーー弓矢を放っている奴はどこにいるかわからない。ならば、いまはこうするしか……。

 考えを実行するべく俺は足を止めずに名を叫ぶ。

「薫ッ!」

 薫は一筋の光となり、俺の手に刀の姿として収まる。俺は刀を握るなり走るのを停止した。

 そんなことをしても俺の頭上からは無数の弓矢が止まる気配を微塵もみせない。

 その時、一本の弓矢がいままでの弓矢より速くかつ俺を狙って空から降ってきた。

 俺はそっと刀を上段に構え、時を待つ。五数える時間がたった。

「くらえぇ!!」

 刀の柄を音高く握りしめ、いっきに振り下ろす。風切り音が耳に届く。

 刀は弓矢を真正面から捉える。摩擦が起き、弓矢は先端から刀によって半分に斬られた。

 カラン、カラン。弓矢が落ちた音を合図に俺は力一杯地面を蹴る。向かう先はビルの入り口。両手で握ってた刀を右手に握り直す。

「うらぁぁぁあああ!」

 走る勢いを利用し、そして俺は左足を軸にし右足で踏み込む。ボールを投げるように、右腕を振りかぶり刀をビルに向かって投げる。ビルの入り口に一直線で飛んでいく。刀はビルの入り口に当たる。

 次の瞬間、刀はビルを撃ち破った。ビルの破砕音が響き渡る。

 俺は刀によって出来た、穴目掛けて駆ける。途中、腕などに数本弓矢が刺さるが、気にせず走り続けた。

 穴の下に転がっている刀を拾い、俺は穴に駆け込む。当たり前だが弓矢は中までは攻めてこないみたいだ。

 弓矢が攻めてこないことを確認し、俺は力なく床にへたりこんだ。

「はぁ、疲れたー……」

 急に安全になり、俺は安堵の息をもらす。

『お疲れ、颯人君』

 手に持っている刀ーー薫はそう告げる。

 俺はジン・コンバットの大変さを改めて知った。

 ーーそれにしても王とエスパーダはどこにいったんだろう?

 そう思った頃には弓矢の雨は止んでいた。


◇◇◇


 どこかのビルの屋上。王は一人の男性の胸ぐらを乱暴に掴んでいた。その光景をエスパーダは見守っていた。

「吐け!お前はあいつの仲間かどうかを!!」

 いつもの王の表情では想像がつかないぐらい、王は怒りを露にしていた。

「吐けっていってんだろ!!」

 しかし、男性は無表情を変えずどこか上の空を見ている。

 拳を固く握りしめ、怒りを抑え込む。

「……お前には用はない。だから負けだ」

 男性の左人差し指に嵌まっている指輪を乱暴に奪う。一切抵抗してこなかった。

 すると男性はジン・コンバットの戦闘場所から消滅する。そう先程まで颯人と薫を苦しめていた弓矢使いが。

「……こいつも、違ったか」

 王はエスパーダと共に上空の青空を見上げた。



ジン・コンバット残り4人



夏休みが待ち遠しい境界線上の日々です。

いやー夏ですね。

夏といったら、海だー!と一度でも言ってみたいものです。

そうだ、皆さん夏バテには要注意を。

読んでいただきありがとうございます。

次回も頑張ります。


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