表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/29

5章

 ……まさかこんなに早く王の手がかりがみつかるとは。


 心配そうに彼女と薫はこちらを見てきた。


「颯人君、大丈夫?具合が悪いなら休んでいていいよ」

「神崎君!そんなに辛いですか。辛いならベットに……」


 俺は二人を心配させるほど王のことを考え込んでいたみたいだ。

この王のことについて二人に相談するべきかもしれない。しかし二人を巻き込んで万が一怪我や大変なことになったらと思うと相談するべきではない。

 俺は二人に考えていることが悟られないよう、作り笑いで返す。


「別に具合は悪くないよ。……大丈夫だから気にしないで」


 少し冷めた態度になってしまう。

 せっかく心配してくれた二人に申し訳ない気持ちで胸が痛い。このまま医務室にいすわっていたら気まずい雰囲気になりそうなので俺は椅子から立ち上がり少し伸びをする。


「んー!とりあえず医務室から出ますか」


 薫は頷いたが、彼女は了承してくれなかった。


「わ、わたし、自己紹介したいです!!いいですか?」


 彼女から発せられた言葉に俺は気づかされた。

 ……俺はまだ彼女の名前を聞いていなかった。なんてひどい男なんだ、俺ってやつは。

 何故出会ったころに聞いていなかったんだと後悔した。


「わたしの名前は、邪宵朱梨(やよい あかり)。ここ、エスト学園の高等部の16歳です。ちなみに、神崎君とは別のクラスだけど学年は一緒だから気軽に会えるね」

「改めて、神崎颯人だ。よろしく」


 薫も自分自身について語りだした。

 少し顔が赤らめていて、恥ずかしいらしい。


「私は夜白薫といいます。今後もよろしく、朱梨さん!!」


 自己紹介が各自終わり俺たちは医務室を出た。


◇◇◇


 現在時刻、朝5時45分。俺たちは朝早いエスト学園の廊下を並んで歩く。

 とりあえず、自分が何組やどういう人柄だったのかを邪宵にいろいろと聞いた。そして今が帰り道である。

 どこに向かっているのか、俺はわからない。なんとなくついていく。


「そういえば、王ってどういう人物なの?ぜひ、教えてください!」


 両手を合わせ、邪宵に頭を下げる。


「わかったから、顔あげてください。王は、わたしたちの生徒会長。勉強は常にトップ、スポーツは何をやらせても完璧、つまり才色兼備なんです。そのうえイケメンで密かにファンクラブがあるんですから」

「へ、へぇー……。すごいな、いまどきの生徒会長は……」


 正直驚いた。生徒の代表者、生徒会長がまさか王だったなんて意外だ。俺はもっとこう……悪魔てきな感じだと思っていた。

 淡々と邪宵は生徒会長について語っていく。


「生徒会長の聖霊はとても強いんですよ!ジン・コンバットでいろんな生徒からの攻撃を圧倒的な強さで打ち消した聖霊なんですから。そしてやっぱり、一番は生徒会長と聖霊の異能です!」


 ……邪宵。妙に輝いているなぁ。


「二人の息がぴったりなんです。生徒会長さんの体術もかなり接近戦で強いんですけど、挑む生徒はそれを恐れていつも遠距離から攻撃してくるんですよね……」


 チラと隣で歩いている薫に目をやる。俺はいつも通りの薫の姿を見て、安心感を抱いた。

 きっと聖霊について受け入れてくれたのだろう……。

 こちらの視線に薫が気付き、微笑みかけてくる。


「どうしたの、颯人君」

「い、いや。なんでもないよ薫。こう思ってたんだよ、いつみても薫は可愛いなぁって」

「えっ……」


 薫の顔が真っ赤に染まっていく。

 無理もない。真正面から「可愛い」なんて言われたら誰だって照れる。……実際薫は本当に可愛いが。


「神崎君と薫さん……。目の前でイチャつかないでくださいよ。見てる方が恥ずかしいです」


 両の頬をプクーと膨らませながら邪宵はこちらを睨み付ける。

 やっぱり邪宵は子供だなぁ。……そういうところが魅力なんだがな。

 俺は右手をそっと邪宵の真っ赤な髪の上に乗せ、撫でる。


「邪宵は子供だな。だけどそこが可愛いなぁ」

「か、かん、かんざ、神崎君!わたし惚れてしまいそうです」


 撫で終えると物欲しげな顔で薫は俺を見据えてきた。その瞳を見ていると何故か無性に薫を可愛がりたくなってしまう。

 ものすごく可愛がりたかったが、今俺たちはどこに向かっているのか邪宵に聞く。


「俺たちってどこに向かってんだ」

「それは、なんと……」


 次の瞬間、邪宵の表情は一変した。廊下の奥を指差し驚いている。

 その指の先を目で追っていくと一人の男子生徒が歩いていた。

 後ろ姿だけでその人が誰だか俺は悟った。


「お、王……」


 あいつはこのエスト学園の生徒会長ーー王だ。何故気づいたのかわからないが、とにかくあいつは間違いなく王本人なんだ。

 後ろの声に気づいたのか王はこちらに振り向き、笑みを浮かべる。

 王を見た瞬間俺の中で一種の違和感が生まれた。

 なんだこの違和感は……。

 王は歩みを俺たちの方に変え、歩き始める。

 近づけば近づくほど王の姿がはっきりと見えていく。窓から差し込む光によって王の金の髪が眩しく光っている。まさに王の姿だ。

 俺たちの目の前に来ると、王は話し出した。


「皆さん、おはようございます。オレは桜花駿(おうか しゅん)という者です。……って君、もしかして神崎か?」


 王は何故か俺を知っているみたいだ。まぁ、俺も王の姿を何故か知っているしな。


「神崎颯人だ。よろしくな王」


 俺に続いて薫と朱梨も自己紹介をした。


「私は夜白薫です」

「あ、あの、わ、わたしは邪宵朱梨で、です。……わたし駿先輩の大ファンなんです握手してください!!」


 どうやら朱梨は王の大ファンだったみたいだ。

 王は笑みを朱梨に向け、握手をした。


「あ、ありがとうございます!!」


 朱梨はものすごく喜び、俺と薫を残し一人ダッシュで廊下を走っていってしまった。

 突如王が自分の後ろに声をかける。


「ほら、自己紹介したらどうだ?エスパーダ」


 すると、一人の女性が王の背後から姿を表した。その瞬間、俺は驚愕した。

 ……なんなんだ、あの人は。

 薫と同じく足がない。つまりあの人も聖霊なんだ。

 だけど、あの聖霊は薫と対照的だった。透き通るような白い髪。見るもの全てを凍らせるような冷たい瞳。本当に人の聖霊なのかと疑いたくなるほど全てが冷めていた。


「エスパーダです。キング、これでいいですか?」


 声もとても冷たい。そしてエスパーダはまた、王の背後へと消えていく。

 それを見た王は苦笑して俺たちに声をかける。


「すまんな、エスパーダはもとから無愛想なやつなんだ。じゃ、オレは行くからお互いジン・コンバット頑張ろうぜ」


 王は俺の隣を通りすぎていく。

 その時俺の耳に届くか届かないぐらいの声量で


「神への道が欲しければ、オレを倒せ」


と耳打ちをしてきた。

 とっさに振り返るが、そこに王の姿はなかった。

 王の最後の言葉で俺はある思いを抱く。


「薫っ!!絶対ジン・コンバット、優勝しような」

「うんっ!!」



 ……王のもとへ絶対辿り着いてやる!!



こんにちは、境界線上の日々です。

本当は昨日投稿したかったのですが寝落ちで投稿できませんでした。

次回から、ジン・コンバット編を開始します。ですが、来週は定期考査があるので更新できるかわかりません。すみません。

なるべく早く更新したいと考えています。

読んでいただきありがとうごさいます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ