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3章

 無の空間。そこに次なる世界を目指す少年。《神崎颯人》がいた。

 俺は生き返る条件として《神を殺す》とミラ・デスイと約束をした。ミラの考えていることは正直わからないが、俺は全力で神を殺してみせる。そうすれば俺の求めている真実がわかるような気がしたから・・・・・・。

 あの後、俺が消えたあの世界はいったいどうなったのだろう。そもそも薫はどうしているのか、など不思議な疑問が脳裏に浮かぶ。


「だめだ!だめだ!だめだ!考えている暇があったら向こうの世界でやるべきことを考えるんだ!」


 その疑問の真実を今から見つけにいくんだから。今からは過去を振り返らないようにしよう。

 両の頬を二回パンパンッと叩き、気持ちを切り替える。

 その時、颯人の視界は眩しい光で満たされていった。


◇◇◇◇


 俺は無事生き返ることに成功した。目の前には住宅が見える。空は月の光で光輝いている。そして周りには子供たちがよく遊ぶ、ブランコや滑り台がある。つまり颯人が今いる場所は公園だ。

 何故公園なのかは知らないが、とりあえずミラさんがいった通り、手にかかえている資料に目を通す。


「あった。これだ!」


 一通り中を調べ、地図を手に取り地面の上に広げてみる。ミラがいっていた記されているところを探す。


 見つけた!


 記されていた場所はこの公園のすぐ近くにあった。そう、近くに墓地が・・・・・・。

 颯人は目的の墓地へ向かうべく公園から出る。出てまっすぐ行き、近くにある曲がり角を右折すれば、向かって左側に墓地があるはず。颯人は地図にかかれていた通りの道筋を歩いていった。夜の道は妙に暗く、少しだけ不気味だった。

 あっという間に墓地に到着。

 近くでみてみると、ミラさんはどうして墓地に記しをつけたのだろう?

 颯人は勇気を振り絞り墓地の中へ足を踏み入れた。


「この中に、ミラさんがいっていた理由があるはず」


 少々怖さはあるがそれでも一歩一歩墓地の中を進んでいく。

 急に、颯人は足を止めた。奥に人影が見えたからだ。


「こんな遅くに誰だ。怪しいやつめ」


 などと言うが、颯人も十分怪しいと思われる。

 目を凝らしてその人物を見据える。すると、さっきまでの反応は驚愕へと変化した。


「・・・・・・な、なんで君が!!」


 人物のもとまで全力で駆けていく。後ろに到着し、人物に向かって叫んだ。


「薫っ!!」


 あの綺麗な黒髪は薫しかいない。俺は確信していた。

 そして、人物は颯人に振り返る。


「颯人君!!」


 腰まで伸ばした黒い髪。それは月の光を浴び、光を放っている。闇をと思わせそうな瞳。その全てが《夜白薫》であった。服は制服をきていたが、以前となにも変わっていない。

 しかし、今の薫の表情はいつも見せてくれる笑顔ではなかった。不安と悲しみが合わさりあったような表情だった。


「薫!なんで君がここにいるんだ・・・・・・」


 颯人は薫に近づく。近づくにつれ薫は颯人との距離を取る。


「お願い・・・・・・来ないで!!」


 薫は今にも泣き出しそうなほど目に涙をためている。それでも薫は颯人に告げる。


「私は颯人君を殺してしまった。あれほど近くにいた大切な人を私は――――側にいる資格なんてないの!だから私の側に来ないで!」

「そんなこと言うな!!」


 颯人は声を大にして叫んだ。


「側にいるのに資格なんて必要ない!側にいたいからいるんだ!それを俺に教えてくれたのは・・・・・・薫だろ」


 薫の頬には一滴、一滴と涙が伝う。そして颯人は薫にそっと手を差し伸べる。


「これからもずっと、いっしょにいよう。薫」


 薫も手を伸ばし、二人の手が重なる。・・・・・・はずだった。

 しかし、現実は違った。二人の手は重ならず、薫の手が颯人の手をすり抜けた。もう一度やるが重ならなかった。もう一度、もう一度と諦めずやるが、結果は同じ。

 不安が募っていく一方だ。

 おかしいと感じた颯人は首をかしげる。そして薫を見据えると、なにかがないことに気づいた。


「薫、ひとついっておく。薫の足がな、な、ないんだ!」


 足が消えている。薫も言われて気づいたのか自分の足を見てかなり驚いていた。


「は、颯人君!どうしよう」


 俺たちはその謎について考えるが、なにも答えが出てこない。

 と、その時だ。颯人の脳に訴えるなにかが聞こえてくる。


――・・・・・・様。・・・・・・ますか?


 神経を集中させる。徐々に訴える声がなんだかわかってきた。


――颯人様。聞こえていますか?

「ミラさん!?」


 声の主はミラだ。いろいろ聞きたいことはあったが、今は薫についてなにか知っていることはないか聞いてみる。


「ミラさん。《夜白薫》についてなにか知っていませんか?」

――《夜白薫》ですか・・・・・・


 んーー、とミラの考える声が脳に響く。

 待つこと一分。


――わかりませんでした。

「そうですか・・・・・・」

――けど、もしですよ。もし、世界での不具合が生じた時、人は聖霊になり得ることがあるんですよ。もし、ですからね。では頑張ってください。


(じゃあ、薫に触れられないのは聖霊になったからなのか!?)


 俺は悩んだ。薫にどう説明すればいいのか、今後どうやって薫と歩けるかなど。たくさん悩んだ。

 悩んだ末、出た結果が。


「薫。俺と《契約》してくれ!!」

「契約?」

「いいにくいんだけど。今の薫はこの世界に存在している《聖霊》なんだ。」

「・・・・・・うん」

「そして人と聖霊が契約することで、きっと、薫と手を繋げるようになるはずだし、ずっと側に入れる。だから、俺と契約してくれ、

薫!!」


 薫は深く頷く。

 早速颯人はミラやキラが用意してくれた資料に目を通す。


「あった!」


 契約の方法が書いてある資料を見つけた。

 まず、対象となる聖霊に向かって契約術語を唱える。


「神より出でてし聖なる霊!!そのすべてを己にあるべき人のために!!すべてを捧げろ!!」


 唱え、なにか武器を想像する。


(・・・・・・なにを使おう?)


 颯人はあのとき、薫が使っていた刀が脳裏に浮かぶ。


(しまった!)


 想像した武器が決定してしまった。 後悔しつつも、資料に書いてあることを読む。


[契約完了です。契約の証しに聖霊と人間どちらも、体に同じ紋様が浮かびます]


(・・・・・・何かしたに書いてあるぞ)


[※少し痛みが生じます]


 瞬間、全身に激痛が流れ出す。


「ぐぅ・・・・・・。か、薫!!大丈夫か!」


 薫も颯人と同じく、激痛があるみたいだ。そして辛かったのか、薫がその場で気絶をしてしまった。

 俺も、かなり意識が遠のいてきた。


「もう、ダメか・・・・・・」


 薄れていく意識の中、薫の手に精一杯手を伸ばす。

 そして、薫の温もりが手のひらに伝わってくる。


(薫、これからずっと一緒だな)


 颯人の意識は眠りについた。

 薫と手を重ね合わせながら。



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